独立行政法人農業環境技術研究所 平成18年度計画

第1 業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき措置

1.評価・点検の実施と反映

(1) 研究の推進方策・計画、進捗状況及び成果を的確に把握するとともに、それらを評価するため、全小課題を対象に研究所内部で検討を行う。このため、「設計検討会」、「成績検討会」及び「課題評価会議」(仮称)を開催する。「課題評価会議」においては、外部評価委員の意見をもとに、年度計画の達成状況を点検し、次年度計画の展開に向けた評価を実施する。これらの会議を踏まえて、論文等の研究成果発表を積極的に行うよう指導していく。また、課題評価結果を運営費交付金による資源配分に反映させる。さらに、研究所の業務運営、研究推進方策、研究資源配分及び研究計画・成果について評価・点検を受けるため、外部専門家・有識者で構成される「評議会」を4月に開催する。また、その結果をウェブサイト等で公開する。

(2) 小課題の評価・点検については、「課題の達成度」、「知的財産権の数」及び「論文の数」等の具体的な定量的指標を設定して取り組む。また、研究予算や研究エフォート等の研究資源の投入に対する特許の出願や原著論文の数等の成果について分析を行う。さらに、普及に移しうる成果については、フォローアップ調査を実施するとともに、アンケート等方法の改善について検討する。

(3) 「成績検討会」、「課題評価会議」、「評議会」及び「独立行政法人評価委員会」の評価結果については、基本的考え方や方法等を明確にした上で、研究所の運営改善、調査・研究の効率化・重点化及び研究資源の配分等に反映させる。

(4) 研究職員等の研究の活性化及び資質向上を図るため、「業績評価規程」及び「業績評価審査実施要領」を改正し、新たな評価システムのもとで研究管理職員と研究職員の業績評価を行う。また、既に研究管理職員に実施している研究業績評価結果の処遇への反映については、新たな研究業績評価システムを確立した上で、研究職員への適用を検討する。一般職員等の評価については、人事評価に係る検討課題を実証的に確認し、今後の作業の参考資料を得るとともに、職員の人事評価に対する意識啓発を図り、新たな人事評価制度に対する認識を高めるため、試行の実施について検討する。

2.研究資源の効率的利用及び充実・高度化

(1)研究資金

(1) 運営費交付金のうち一般研究費の配分において、小課題担当者へのヒアリングの評価結果等に基づく小課題への重点配分を行う。また、運営費交付金推進費の法人プロジェクト経費等については、申請課題の評価結果に基づく採否や経費の増減を行い、効率的・効果的な研究の推進を図る。

(2) 農林水産省、環境省及び文部科学省等の政策上の重要課題として受託するプロジェクト研究や調査等については研究所のミッションに基づいて重点的に実施する。

(3) 外部資金獲得の一環として、科学技術振興調整費等の競争的資金やその他の公募型研究資金に積極的に応募する。その際、所内の「公募型プロジェクト等検討委員会」において、申請書の内容を審査し、適切な応募を図る。

(2)研究施設・設備

高額機器や施設の使用に当たって、技術講習や共同研究等の制度で外部の研究者が利用可能な機器については、ウェブサイト等を介して広く公開し、有効利用を図る。また、高額機器の購入については、中期計画における必要性等を考慮して、「機械整備委員会」で計画的な導入を図る。さらに、新たな組織体制に合わせた施設・設備等の利用の見直しを行う。

(3)組織

中期計画における研究課題の着実な達成のため、部・グループ・ユニット制を廃止し、「研究領域」及び「研究センター」を研究基本組織として配置するとともに、小課題の進行管理を推進するための「リサーチプロジェクト」を設ける。また、研究所の活動を効率的に運営するため、新たに研究全体を掌握する「研究統括主幹」を設けるとともに、複数の「研究コーディネータ」を置き、重要研究課題の推進、国際交流、連携促進及び広報等の業務を推進する。

(4)職員の資質向上と人材育成

(1) 人材育成プログラムを策定し、研究者及び研究支援者のライフステージに沿った人材育成や職場環境のあり方を職員に提示する。

(2) 運営費交付金における研究推進費「外国出張対応経費」や「法人プロジェクト経費」等については、応募に対して「研究推進費審査委員会」で審査を行うことにより競争的環境を醸成する。また、「法人プロジェクト経費」等については「リサーチプロジェクト」や「研究領域」との連携による協調的環境の下での推進を図る。また、農林水産省、農林水産省所管の独立行政法人、地方公共団体及び大学とは制度を整備した上で人事交流を図る。

(3) 若手研究職員の育成プログラムを明確にし、これに基づいて、計画的な人材育成を図る。また、博士号の取得を奨励し、研究管理職員がそのために適切な指導を行う。また、国際研究集会及び国際機関への派遣、日本学術振興会やOECD(経済協力開発機構)等の研究者交流制度への積極的な応募及び研究推進費の留学対応経費の活用等により、若手研究者の国際経験の蓄積を図る。

(4) 多様なニーズに対応した研究推進及び研究経営の能力の高い研究管理職を養成するため、研究管理職の育成プログラムを策定するとともに、研究マネージメント等の研修に参加させる。

(5) 一般職員及び技術専門職員が高度な専門技術・知識を要する業務を行うために必要な資格や能力を獲得するため、簿記検定や衛生管理者資格取得等の研修及び「車両系建設機械運転技能講習」等の各種作業従事者教育に積極的に参加させ、資格取得を支援する。

3.研究支援部門の効率化及び充実・高度化

(1) 「業務効率化対策委員会」を設置し、総務部門の業務内容の見直しを行い、効率的な実施体制を確保するとともに、効率の良い会計システムへの更新、事務処理の迅速化、簡素化、文書資料の電子媒体化による情報の伝達、共有等を進め管理事務業務の効率化を図る。

(2) 技術専門職の業務については、組換え作物の栽培試験、ビオトープ管理及び環境資源試料の採取等高度な専門技術・知識を要する分野に重点化するとともに、研究領域に対応したグループ制により業務の効率化、充実・強化を図る。

(3) 研究本館・実験棟の施設・設備の運転保守管理、アイソトープ施設等の保守管理業務等については、効率化の観点から引き続き業務を外部委託する。また、精密機器類の保守管理ついては、「業務効率化対策委員会」での検討に基づき、利用実態を明らかにして、今後の利用計画を作成し外部委託の見直しを行う。

(4) 「業務効率化対策委員会」において、常勤職員が担うべき業務、契約職員が担う方が効率的な業務及びアウトソーシングすべき業務を整理して具体的計画を策定し、その計画に沿った研究支援部門の要員の合理化に努める。

(5) 農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN)等のインターネットサービスシステムを活用して農業環境研究情報の収集・提供業務の効率化、充実・強化を図るとともに、イントラネット環境において導入したグループウェアを活用して研究所の運営・管理業務の効率化を図る。

4.産学官連携、協力の促進・強化

(1) 農林水産省所管の独立行政法人とは、「農林水産省所管の農林水産業に関する試験研究を主たる業務とする独立行政法人間で実施する研究協力に関する協約書」に基づき、研究者の交流を含めた円滑な研究協力を推進する。また、大学や民間等との共同研究を積極的に進めるとともに、技術講習や依頼研究員制度を活用した公立試験研究機関等の研究者との交流を図る。

(2) 年度末に農業環境技術研究所推進会議を開催し、農林水産省所管の独立行政法人、行政部局、公立試験研究機関及びNPO等の参加を求め、情報の交換を図るとともに、連携・協力を積極的に行う。また、農業・林業・水産業の環境に関する研究所(農業環境技術研究所・森林総合研究所・水産総合研究センター)の間で設立した「三所連絡会」を開催し、相互に情報を交換・共有した上で農・林・水の分野で一体的な環境研究の推進を図る。さらに、農林水産省、環境省、文部科学省及び経済産業省等の環境関係の研究機関で結成している「環境研究機関連絡会」を開催して、相互の連携・協力を推進する。

(3) 東京大学大学院との連携講座及び筑波大学等との連携大学院についての協力協定に基づき教授等を選任するとともに大学院生を受け入れて、教育・研究交流を発展させる。また、平成15年度に教育・研究に関する協定書を結んだ東京農業大学及び鯉渕学園に客員教員や客員研究員を派遣するとともに、大学院生や学生を受け入れ、連携を強化する。

(4) 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構が行う多様な専門知識を融合した総合的な研究に必要に応じて協力する。また、独立行政法人国際農林水産業研究センターが実施する国際共同研究「中国食料の生産と市場の変動に対応する安定供給システムの研究」等に協力する。

5.海外機関及び国際機関等との連携の促進・強化

(1) アジアにおける国際研究コンソーシアムの構築を図るため、科学技術振興調整費「アジア科学技術協力の戦略的推進・機動的国際交流」に応募し、財政的な基盤の充実を図る。また、現在の日本、韓国、中国の三国間のコンソーシアムに加えて、タイやベトナム等を対象として、国際シンポジウムを開催する。

(2) 共同研究覚書(MOU)を締結したボン大学、韓国農村振興庁農業科学技術院、中国科学院南京土壌研究所及びラオス国立農業研究センターとのこれまでの研究協力を発展、継続させる。韓国農村振興庁農業科学技術院とは「農業生態系における水質保全とその環境影響評価に関する国際共同研究」を継続する。また、ワーヘニンゲン大学等欧米の関係研究機関との共同研究の企画や情報交換を図る。

(3) 日本学術振興会やOECDの研究者の派遣制度及び運営費交付金の研究推進費の留学対応経費等による若手研究者の海外交流制度を活用するとともに、国際会議の企画・立案等の経験により、国際的に活躍する人材を養成する。また、日本学術振興会の「外国人招へい研究者制度」や受託プロジェクト研究費の外国人招へい経費等を活用して、国際的な人的交流を促進する。

第2 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置

1.試験及び研究並びに調査

A 農業環境のリスクの評価及び管理技術の開発

1)農業生態系における有害化学物質のリスク管理技術の開発

(1)農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発

(1) 有害化学物質による環境リスク評価手法については、農薬等を対象として、水田〜流域における濃度予測モデルの検証、地球規模での挙動を説明するマルチメディアモデルのフレーム作成、土壌中での消長に影響を及ぼす環境要因の解明を行うとともに、種々の化合物に対する水生昆虫等の感受性データを集積する。リスク低減技術については、分解菌資材の改良により土壌中トリアジン系除草剤等の分解能を向上させるとともに、高吸収性植物による土壌中ドリン類の浄化能をポットレベルで検証する。

(2) 重金属による作物汚染リスク評価手法の開発では、作物中のカドミウム濃度を迅速測定するためのイムノクロマト法等の検討、有機ヒ素汚染土壌の培養試験による土壌中の動態解明及びウランの土壌から植物への移行係数算出等を行う。リスク低減技術については、汚染土壌修復技術として、化学洗浄法とファイトレメディエーションによる土壌中のカドミウム濃度低減効果の現地検証等を行う。低吸収品種利用技術の開発では、ナスのカドミウム低吸収台木品種選抜及び水稲のカドミウム吸収関連遺伝子座の特定に向けた系統解析等を行う。

2)農業生態系における外来生物及び遺伝子組換え生物のリスク管理技術の開発

(1)外来生物及び遺伝子組換え生物の生態系影響評価とリスク管理技術の開発

(1) 外来植物の侵入によって種組成が変化しやすい植物群落タイプを推定するとともに、アレチウリ等の侵略的な外来植物と在来種との競合関係を明らかにする。また、外来植物による有害物質産生性を評価し、植物生育を阻害する他感物質の活性を定量的に把握する。さらに、チュウゴクオナガコバチ等外来昆虫の識別を行うため、DNAマーカーの開発を行うとともに、外来昆虫の拡散速度予測式を開発する。

(2) 遺伝子組換え生物の生物多様性影響に関する研究では、除草剤グリホサート耐性組換えダイズとツルマメとを一定距離ごとに栽培し自然交雑率を調査する。鹿島港周辺のナタネ個体群について除草剤に対する耐性ごとに個体群の発生消長とそれに影響を及ぼす要因を解明する。共存に関する研究では、イネ等について交雑予測手法の高度化とモデリングを行い、自動花粉計測機と既存の花粉採集器間で花粉飛散量を比較する。また、トウモロコシ等の花粉飛散と交雑を制御・抑制するために、散水、防風植生及び防風ネット等の対策技術の効果を明らかにする。

B 自然循環機能の発揮に向けた農業生態系の構造・機能の解明と管理技術の開発

1)農業生態系の構造・機能の解明と評価

(1)農業生態系を構成する生物群集の動態と生物多様性の解明

(1) 農業活動が水田の生物多様性に及ぼす影響を評価するために、水田から流出する除草剤が絶滅危惧種である水生植物の乾物・種子生産に及ぼす影響を明らかにする。また、溜め池の環境・空間配置とトンボの生息との関係を、多変量解析手法及び池環境・池間距離によってトンボの生息確率を表すメタ個体群モデルを用いて解析する。さらに、生物多様性保全のための調査・情報システムの汎用的利用方法を構築するとともに、景観構造と生物相の分布との関係をモデル化する。

(2) 土壌線虫や微生物の多様性を調査する手法等を開発するために、線虫DNA抽出法を確立するとともに土壌微生物DNA抽出法を標準化する。また、土壌線虫では線虫の検出に適したプライマーの設計及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)条件等を解明するとともに、土壌微生物ではPCRプライマーの選定、PCRの諸条件及び変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)の条件の最適化を図る。さらに、発病抑止土壌と発病助長土壌等におけるFusarium属菌の胞子発芽パターンを明らかにする。

(2)農業生態系機能の発現に関与する情報化学物質の解明

バラ科植物が持つケイ皮酸誘導体の植物生育阻害活性と含有量を考慮した全活性を定量的に把握する。また、昆虫のモニタリング精度に関与する性フェロモン組成の解析のため、フキノメイガ等を採集し、性フェロモンの集団内の個体変異とその遺伝率等の推定による遺伝的なポテンシャルの解析・評価を行う。さらに、Burkholderia属細菌由来のクロロカテコール分解能等の機能の発現を解析するための実験系を構築する。

2)農業生態系の変動メカニズムの解明と対策技術の開発

(1)地球環境変動が農業生態系に及ぼす影響予測と生産に対するリスク評価

圃場スケールの水田生態系応答モデル及び地域スケールのコメ生産モデルについて、それぞれが取り扱う環境要因、プロセス及び出力項目を選定し、モデルの基本構造を決定する。また、圃場スケールのモデル開発に用いる温暖化や高二酸化炭素環境を実現する開放系温暖化システムを確立する。さらに、地域スケールモデルの開発・検証用データベースを構築するため、気象、水文、土壌、作物及び土地利用データを収集・整備する。

(2)農業活動等が物質循環に及ぼす影響の解明

(1) 温室効果ガス発生抑制技術の効果を定量的に評価するため、わが国の4地点での田畑輪換試験と中国における施肥・有機物管理試験を行うとともに、わが国の農耕地からの亜酸化窒素排出係数データベースを整備・解析する。また、圃場試験データを用いてDNDCモデルの検証を進め、わが国とアジア地域における水田での適用が可能となるようにモデルを改良する。

(2) 土壌データベースを整備し、土壌型、土地利用及び農地管理の違いによる土壌炭素の変動及び室内温度制御試験に基づく土壌有機物分解の温度特性を明らかにする。また、農業起源の窒素の生態系への影響評価のため、アンモニア発生・沈着に関するデータを収集・整理し、非農耕地土壌からの亜酸化窒素発生等の測定を実施する。さらに、東アジアの土地利用や気象等のデータを整備し、食料生産、消費に伴う窒素収支モデルを改良するとともに、炭素・窒素統合モデルの構造を提示する。

(3) 茶園―水田土地利用連鎖のある小集水域において下層土の脱窒能の空間的分布を調査し、浅層地下水中で脱窒が生じるための土壌・地形的条件を明らかにする。また、下層土に亀裂の発達した転換畑から暗渠流出する懸濁物質の組成とリンの化学形態から懸濁態リンの起源を解明する。さらに、栄養塩類による水質汚染リスクを流域レベルで評価するため、懸濁物質及びリンの表面流出サブモデルの検証と改良を行う。

C 農業生態系の機能の解明を支える基盤的研究

1)農業に関わる環境の長期モニタリング

(1)農業環境の長期モニタリングと簡易・高精度測定手法の開発

(1) 温暖化に特に敏感に反応すると考えられるチベット高原に設定した植生限界付近から草原生態系までの10地点で、気象モニタリングを継続し、観測データを蓄積する。また、これまでのモニタリングで得られた気象・フラックスデータの再解析と結果のとりまとめを行い、データベースを更新する。さらに、二毛作田(岡山)の新規観測点を含めて、今後5年間のフラックスモニタリング体制を整備し、観測を行う。

(2) 全国の水田13地点及び畑7地点の放射能基準圃場の作物及び土壌の137Cs等のモニタリングを行う。また、作物・土壌中の有機ヒ素化合物について抽出法・分離法等を検討し、既知化合物の定量法を確立する。

2)環境資源の収集・保存・情報化と活用

(1)農業環境資源インベントリーの構築と活用手法の開発

(1) 農業生態系の時空間的動態を定量評価する上で必要な時系列衛星データ等の収集・整備及びGISへの統合並びに農業的土地利用等の広域把握に好適なアルゴリズムやデータ利用法の比較分析を行う。精密測定が可能なスケールで超高分解能・広波長帯域データ等による葉群構造や生産性の評価法の検証と高精度化を図る。また、野生哺乳動物等の生息域変動に関するデータの収集及びGISデータベース化した地図・生育域情報に基づく既存の空間構造指標の比較検証を行う。

(2) 栄養塩類、土壌侵食及び農薬に関わる農業環境リスク指標については、それぞれ関係する要因項目とパラメータを決定し、指標を提示する。また、これらの指標に関連する基盤的GISデータを効率的に整備・収集する手法を開発する。さらに、生物多様性に関わる指標策定のために定量的評価の方法について比較検討するとともに、生態システムモデルのプロトタイプを開発する。

(3) GISを共通プラットホームとして、土壌や昆虫等個別データベースを連携させ、新たな情報を登録・収集するシステムを作成する。また、非農耕地土壌調査や深層土壌調査のデータを収集する。さらに、植物由来微生物の難分解性物質分解能等を微生物データベースに、チョウ類とオサムシ類を標本データベースに、カメムシ目を三橋ノートデータベースに追加するとともに、養分収支算定用データベースを作成する。なお、昆虫及び微生物について、農業生物資源ジーンバンク事業連絡協議会が策定する平成18年度事業計画に従って、収集・保存・評価・登録を行う。

2.研究成果の公表、普及の促進

(1)国民との双方向コミュニケーションの確保

(1) これまで広報を担当していた情報資料課を広報情報室に改組し、広報担当研究コーディネータを設ける等、研究所の広報活動への取り組みを強化する。また、研究所の研究計画、活動及び研究成果等の広報については、対象を生産者、消費者、学生・生徒、マスコミ、民間企業・公共団体及び海外等明確に区分した上で、広報戦略を策定する。

(2) 国民の関心の高い農業環境のリスク評価・管理については、一般公開における展示や説明、「遺伝子組換え作物圃場試験一般説明会」の開催、「研究成果発表会2006」における討論及びウェブサイトを活用した情報の公開等、双方向のコミュニケーションによる情報の共有化を図る。

(2)成果の利活用の促進

(1) 研究成果の中で普及に移しうる成果を農業環境技術研究所推進会議等における外部評価委員の評価に基づいて年度内に6件以上を選定する。

(2) 普及に移しうる成果については、利用状況アンケート等フォローアップの方法を検討する。

(3) 「農業環境研究成果情報」については第10集(平成5年度)以前のものは画像ファイルで、第11集以降はHTMLまたはPDFファイル形式でウェブサイトに掲載し、外部からの利便性の向上を図る。また、昆虫や微生物等のインベントリー情報をウェブサイトに公開し、一般への情報提供に努める。さらに、年度内に6件以上のプレスリリースを行う。

(4) 他の独立行政法人や公立試験研究機関との共同研究により、技術の現場への迅速な普及を図るとともに、特許の許諾や実用化を前提とした民間等との共同研究を推進する。

(3)成果の公表と広報

(1) 研究開発の成果を科学的・技術的知見として広く社会に周知公表し、学界等に大きな波及効果を及ぼすことを目的として成果を発信する。論文については、水準の向上を図りつつ、年度内に162報以上の査読論文を公表する。また、引用度の高い英文誌への掲載を目標として年度内に全発表論文のインパクトファクター(IF)総合計値100を目指す。

(2) 「農業環境研究成果情報」、「年報」、「報告」、「資料」及び「環境報告書」については、ファイル形式でウェブサイトに公開する。その他の報告書については、目次や概要をウェブサイトに掲載する。また、「NIAES国際シンポジウム・農業環境シンポジウム(同時開催)」、「研究成果発表会2006」、「有機化学物質研究会」、「農薬環境動態研究会」、「土・水研究会」及び「気象環境研究会」等を開催する。さらに、農林水産技術会議事務局等が開催する講演会や「アグリビジネス創出フェア」等の展示会に積極的に参加する。

(3) 研究成果については、主要なものを適宜プレスリリースするとともに、ウェブサイトや「つくばリサーチギャラリー」、「農業環境インベントリー展示館」を活用し公開に努める。また、「農環研ニュース」の発行や「情報:農業と環境」のウェブサイトへの掲載等、研究活動の積極的な広報を行う。

(4) 「NIAES国際シンポジウム」や「データベース構築のための国際ワークショップ」等を開催するとともに、ウェブサイト英語版の充実や国際機関等のウェブサイトへの相互リンクにより、国際的な情報発信機能を強化する。

(4)知的財産権等の取得と利活用の促進

(1) 知的財産の発掘・権利化を促進するため、研究コーディネータ等を知的財産権を獲得するための指導者とするとともに、研究成果の権利化、ライセンス先のマーケティング及び契約締結等の技術移転業務についてはAFFTISアイピー等外部TLOを活用する。また、一定期間実施許諾や問い合わせのない特許については更新の見直し等を行い、知的財産の適正な管理を行う。さらに、知的財産の取扱いの方針を定めた知的財産ポリシーの策定を行う。

(2) 知的財産権の確保により研究成果の円滑な移転を推進するため、実施許諾等の活用の可能性等の特許調査を十分実施した上で、年度内に5件以上の国内特許を出願し、権利化に努める。また、AFFTISアイピー等TLOを活用して特許の実施許諾の拡大に努める。

3.専門分野を活かしたその他の社会貢献

(1)分析、鑑定

行政、各種団体及び大学等の依頼に応じ、高度な専門的知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な化学物質の分析や昆虫や微生物等の同定・分類等の鑑定を実施する。この際、必要に応じて所要の対価を徴収する。

(2)講習、研修等の開催

(1) 国や団体等が主催する研修へ研究職員を講師として派遣するとともに、研究所で化学物質の分析法や農業環境の情報管理手法等に関する研修会を年度内に2件以上開催し、40人以上の受講者を目標とする。

(2) 技術講習制度による国、大学及び民間等からの研修生、依頼研究員制度による公立試験研究機関の研究員、海外からの短期及び長期JICA研修生を受け入れることによって、研究成果の普及を図る。

(3)行政との連携

消費・安全局及び農村振興局等行政部局との情報交換会を行うとともに、農業環境技術研究所推進会議においても行政部局との連携・協力について意見交換を行う。また、有機ヒ素やPOPs(残留性有機汚染物質)等緊急対応が求められている問題については、行政部局との連携を緊密にしていく。さらに、行政等からの要請による委員会(国の要請、公共団体等の受託による。)への参加件数(委員会数)について年度内に100件以上を目指す。

(4)国際機関、学会等への協力

農業環境研究に関係する国際機関、国際学会及び国内の学会の役員や委員に職員を積極的に派遣し、その運営に協力する。また、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IGBP(地球圏・生物圏国際協同研究計画)及びOECD等の国際機関が開催する専門家会議に要請に基づいて積極的に職員を派遣する。

第3 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1.予算

平成18年度予算

(単位:百万円)

区分 金額
収入
  • 運営費交付金
  • 施設整備費補助金
  • 受託収入
  • 諸収入
    • その他の収入
  •  
 
  • 3,280
  • 153
  • 931
  •  
  • 4,367
支出
  • 業務経費
  • 施設整備費
  • 受託経費
    • 試験研究費
    • 管理諸費
  • 一般管理費
  • 人件費
  •  
 
  • 886
  • 153
  • 931
    • 838
    • 93
  • 392
  • 2,005
  •  
  • 4,367

[注記]

施設整備費補助金については、平成18年度に繰越となった平成17年度補正予算による施設整備費補助金予算及び平成18年度施設整備費補助金予算を計上した。

2.収支計画

平成18年度収支計画

(単位:百万円)

区分 金額
費用の部
  • 経常費用
    • 人件費
    • 業務経費
    • 受託経費
    • 一般管理費
    • 減価償却費
  • 財務費用
  • 臨時損失
4,309
  • 4,308
    • 2,005
    • 810
    • 867
    • 364
    • 262
収益の部
  • 運営費交付金収益
  • 諸収入
  • 受託収入
  • 資産見返負債戻入
  • 臨時利益
  •  
純損失
目的積立金取崩額
総損失
4,293
  • 3,204
  • 931
  • 155
  •  
  • 16

  • 16

3.資金計画

平成18年度資金計画

(単位:百万円)

区分 金額
資金支出
  • 業務活動による支出
  • 投資活動による支出
  • 財務活動による支出
  • 次年度への繰越金
4,367
  • 4,047
  • 293
  • 27
資金収入
  • 業務活動による収入
    • 運営費交付金による収入
    • 受託収入
    • その他の収入
  • 投資活動による収入
    • 施設整備費補助金による収入
    • その他の収入
  • 財務諸活動による収入
    • その他の収入
  • 前中期期間からの繰越金
4,367
  • 4,214
    • 3,280
    • 931
  • 153
    • 153

第4 その他農林水産省令で定める業務運営に関する事項等

1.施設及び設備に関する計画

実験棟へ冷房を供給している第1機械棟内の吸収式冷凍機は、老朽化により機能が低下し業務に支障をきたしているため、改修を行う。

2.人事に関する計画

(1)人員計画

(1) 方針

効率的・効果的な業務の推進が図られるように以下のように組織体制を見直す。研究管理部門については、新たに研究全体を掌握する「研究統括主幹」を設けるとともに、複数の「研究コーディネータ」を置き、重要研究課題の推進、国際交流、連携促進及び広報等の業務を推進する。また、それぞれの研究分野ごとに研究管理を行う「研究領域長・センター長」を設け、着実な研究の推進を図る。企画部門では、科・課を廃止して室を置き、広報関係の強化を行う。また、総務部門でも、室・グループ制に移行して柔軟な業務分担による効率化を図るとともに、「監査室」を設け、年々重要化するコンプライアンス等の課題に対応する。

(2) 人員に係る指標

平成18年度の常勤職員数は、中期目標期間の期初を上回らないものとする。

(2)人材の確保

(1) 研究所の中期計画達成に向けた研究を推進するに当たり、必要な人材を確保するため採用計画を策定し、それに基づき研究職員の採用は公募によることとし、任期制を積極的に活用する。また、特別の知識、能力や技術を必要とするポストにあっては公募による選考採用とする。

(2) 女性研究者の採用に関しては、応募者に占める女性割合と、採用者に占める女性割合とでかい離が生じないよう努める。

(3) 研究担当幹部職員の採用については、広く有能な人材を求めるため、公募制を導入する。

(4) 次世代育成支援行動計画に基づき、制度改正の検討を含め、安心して仕事と子育ての両立ができる職場環境の整備を図る。

3.情報の公開と保護

(1) 情報公開を的確に行うため、情報公開窓口を通して情報の開示請求があったものについては、「法人文書開示決定等審査委員会」の審議を経て適正かつ迅速な対応を行う。

(2) 個人情報の保護については、関係法令及び研究所が定めた個人情報保護に関する諸規程に基づき適正な取扱いをする。また、個人情報の取扱いについて基本的な考え方をプライバシーポリシー(仮称)として、新たに設置するコンプライアンス委員会において策定し、研究所内外に周知を図る。

4.環境対策・安全管理の推進

(1) 環境配慮及び安全管理の基本的考え方を明確にした「環境憲章」を公表し、職員の意識向上を図るとともに、「環境憲章」の理念や行動指針に基づいた研究所の事業活動に係る環境配慮などの状況を環境報告書で公表する。また、「環境保全推進委員会」(仮称)等の提言に基づいて、施設整備等については、高効率型の設備機器の導入を図るなど、省エネルギー対策を推進するとともに、管理運営に伴うエネルギー使用量の把握、解析を行い、エネルギー使用量等の内容を職員に周知し、一層の節減を図る。さらに、廃棄物の抑制と物品等のリユース及びリサイクルに努めると同時に、化学物質の保管の状況等を把握して安全管理の徹底に取り組む。

(2) 放射性同位元素については、取扱者を対象に「放射線障害防止のための教育・訓練」を実施するとともに、放射線取扱主任者は放射線安全管理講習会等を受講し、適正な管理に努める。また、遺伝子組換え生物等の使用については、関連法令の遵守を定めた研究所諸規程に従うとともに、「遺伝子組換え生物等の第二種使用等に関する実験安全委員会」等で審査・承認されたものに限り実施させる。また、法令の遵守を促すために職員への適切な情報提供を行う。

(3) 「安全衛生委員会」による職場巡視の点検結果や管理状況の報告に基づき、対策を講じる必要がある場合は、施設や設備の整備も含め適切な対応を図る。また、職員等に対してPRTR事業者研修会や消防訓練等の安全管理に必要な教育・訓練等を行うことにより、事故や災害への未然防止に役立てる。