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情報:農業と環境 No.64 (2005.8)
独立行政法人農業環境技術研究所

資料の紹介: 日本の地球化学図 −元素の分布から何が分かるか?−、産業技術総合研究所地質調査総合センター(2004)

地表の鉱床を探査する目的で、イギリス、北アイルランド、西ドイツ、アラスカなど世界各地における重金属の異常凝集帯が地球化学図として取りまとめられている。一方、有害物質による土壌汚染や地下水汚染を正確に評価する上で、自然起源の元素のバックグランド値を把握しておくことが重要であり、今回、産業技術総合研究所地質総合センターによって、日本全土における有害元素など約50元素の分布実態が「日本の地球化学図」としてまとめられた。

試料は、採取密度10×10kmあたり1試料を目標に採取された総数3,024個で、河川の本支流の合流付近における支流の河床の堆積物である。この堆積物を自然乾燥後、粒度80メッシュ(180μm)以下を分離し、硝酸、過塩素酸、フッ化水素酸を加えて加熱分解した。主成分元素(対象元素:Al, Ba, Ca, Fe, K, Mg, Mn, Na, P, Sr, Ti, V)はICP発光分析法、微量成分元素 (対象元素:Be, Bi, Cd, Ce, Co, Cr, Cs, Cu, Dy, Er, Eu, Ga, Gd, Hf, Ho, La, Li, Lu, Mo, Nb, Nd, Ni, Pb, Pr, Rb, Sb, Sc, Sm, Sn, Ta, Tb, Th, Tl, Tm, U, Y, Yb, Zn, Zr)はICP質量分析法、水銀(Hg)と砒素(As)は原子吸光分析法により測定された。

各種元素の濃度値が、試料採取地点の地形を考慮した50mメッシュ標高データをもとに、地理情報システムを用いて地球化学図として表示された。さらに、元素の濃度分布について、地質、土壌、地形、温泉、気候、土地利用、人口など各種要因との関連が解析され、全体の元素分布は地質の影響を、局所的な高濃度異常値を示す元素分布は鉱床の影響をもっとも大きく受けることなどが明らかにされた。なお、試料採取地点が流域であることから、極端に高濃度のデータがあると流域全体に強調されて表示される、大都市内部では周辺地域からの外挿によることがある、また、一部の元素では加熱分解が十分でなく実際より低い濃度値を示したり、試料の不均質により再現性が低い場合があることも、本地球化学図の利用にあたっての注意点として指摘されている。

「日本の地球化学図」は環境省の環境保全研究委託費によって実施された成果であり、さらに、全国の地球化学図、地方の地球化学図、試料の詳細情報などが、Web上で公開されている(https://gbank.gsj.jp/geochemmap/ (最新のページに変更しました。2013年12月))。

目次

本文

1.まえがき

2.国内外の地球化学図

3.試料

3.1 試料の種類

3.2 試料採取位置

3.3 試料採取方法および試料処理

4.分析法

4.1 主成分および微量成分元素の分析

4.2 形態的分別法

5.流域解析

6.作図法

7.全国の地球化学図

8.0.1N塩酸抽出成分の全国地球化学図

9.地域別の地球化学図

10.全国の元素濃度データ

10.1 平均値

10.2 地域別の元素濃度

10.3 各種要因との関係

10.4 因子解析

10.5 元素濃度データの相関

11.データの公表

12.まとめ

13.参考文献

14.地球化学図を用いるにあたっての注意

付図

1.日本の地球化学図

2.酸抽出の地球化学図

3.地域の地球化学図

3.1 北海道の地球化学図

3.2 東北地方の地球化学図

3.3 北陸地方の地球化学図

3.4 関東地方の地球化学図

3.5 東海地方の地球化学図

3.6 近畿地方の地球化学図

3.7 中国地方の地球化学図

3.8 四国地方の地球化学図

3.9 九州地方の地球化学図

4.地域別の元素濃度

5.因子分析

6.元素間の関係

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