当研究所の職員である井上 聡氏が、北海道旭川市大雪クリスタルホールで開催された2005年度日本雪氷学会全国大会(9月27日〜30日)において、平田賞を受賞しました。
平田賞は、雪氷学の研究に顕著な成果をあげ、今後の発展の奨励にふさわしい正会員に与えられる賞で、日本雪氷学会の初代会長である平田徳太郎氏にちなんで名付けられたものです。同大会2日目に表彰式が行われました。研究業績の概要は以下の通りです。
「地球温暖化時における日本国内の降積雪変動予測」
井上 聡(地球環境部 気象研究グループ 主任研究官)
研究の概要
氏は、月降水量と月平均気温を用いて、降雨と降雪を分離し、さらに、雪の堆積環境を考慮して、統計的に冬季最大積雪深を推定する手法を開発した。そして、温暖化シナリオに基づいて、将来の日本国内の降積雪の変動予測とその影響評価を行った。
温暖化時には、北海道と本州山岳地帯の最大積雪深が減少すること、東北地方の降雪深と最大積雪深が減少し、乾き雪から湿り雪に変わること、北陸地方以南の日本海側平野部では、気温上昇により降雪しなくなり、積雪も生じないことが予測された。
このような降積雪の変動は、河川の水資源に大きな影響を与えるが、河川流量の変化予測から、日本海側の河川では春の流出ピークがなくなること、北海道では流出ピーク時期が早まることが示された。また、温暖化時の降積雪の減少により、植生帯の分布が変わること、スギ花粉の飛散開始時期が早まることが推定された。
これらの成果は、地球環境問題の最大関心事である温暖化の水資源および農業への影響を解明・評価する上で大いに寄与するものとして期待される。