第11回 IUPAC農薬化学国際会議 (11th IUPAC International Congress of Pesticide Chemistry) が、2006年8月6日から11日まで、神戸国際会議場およびポートピアホテルで開催されました。
この会議は、国際応用純正化学連合(IUPAC)と日本農薬学会が主催し、神戸市、中内財団、(独)農業環境技術研究所、日本植物防疫協会、報農会などの協賛、日本学術会議、日本応用動物昆虫学会、日本植物病理学会、日本雑草学会、植物化学調節学会、日本農芸化学会、環境科学会、日本環境化学会、日本食品衛生学会などの後援によって行われました。
アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、スイス、ベルギー、ハンガリー、日本、中国、韓国、インド、タイ、ベトナム、スリランカ、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、ナイジェリア、エジプト、南アフリカ、ブラジル、チリなど世界各国から1200名以上の参加がありました。
以下に、この会議の概要を報告します。
基調講演として、アメリカの J. C. Collins 氏が 「Challenges and opportunities in crop production over the next decade」 (仮訳:「次の10年の作物生産における課題と好機」) と題し、近年の分子生物学、有機合成化学、製剤技術の発達に基づく新規農薬や利用技術の開発の現状と今後の可能性について言及しました。
特別講演が4日間1題ずつ行われ、日本から東京大学の K. Mori 氏が日本における農薬開発の成果を紹介するとともにそのグループによる生理活性物質の研究の概要を報告しました。その後は、FAOの S. Pandey 氏が世界的な観点から飢餓、栄養不良、食料問題について、中国の Y. Z. Yang 氏が中国における農薬管理の現状について、そして、アメリカの K. D. Racke 氏が貿易に係わる食品の農薬残留関連の問題について報告を行いました。
会議は、農薬の開発、作用機作、代謝、環境影響評価、食品の安全性など広範なテーマにつて、20のセッションに分かれて行われました。環境関係のセッションでは環境化学物質や農薬の残留分析、農薬の環境動態・生態影響、環境リスク評価・リスクコミュニケーション、POPs (残留性有機汚染物質) のモニタリング・修復等に関する報告があり、活発な討論が行われました。さらに、本年5月からの残留農薬のポジティブリスト制度の導入により、低濃度域の残留分析においても高い分析精度が必須となったため、日本人向けに残留農薬分析の特別セミナーが行われ、信頼性の高い分析値を得るために必要な知見の提供や情報交換が行われました。
ポスターが577題発表され、その割合は、農薬合成・生物活性関係が30%、作用機作・抵抗性・代謝・製剤関係が29%、残留分析・環境関係が38%でした。
農業環境技術研究所からは、研究所の紹介展示を行うとともに、セッション講演で4題、特別セミナーで1題、ポスターで10題の研究成果を発表しました。なお、当研究所の有機化学物質研究領域の高木和広 主任研究員が A. Iwasaki、K. Satsuma、M. Masuda らとともに発表した 「Aerobic mineralization of hexachlorobenzene by Nocardioides sp. PD653」 は、ポスター部門で Silver prize (銀賞)を受賞しました。
次回のこの会議は、2010年にオーストラリアのメルボルンで開催されます。