遺伝子組換え生物を産業に利用するためには、遺伝子組換え技術の可能性を追究するだけでなく、最新の科学的知見に基づいて環境や人の健康に与える影響を十分に調査すること、安全性に関する消費者の関心に応える研究成果を発信することなどが重要です。
一方、わが国は、「カルタヘナ議定書」(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書)に対応する国内法として、「カルタヘナ法」(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)を平成15年6月に制定し、翌年の平成16年2月に施行しました。
この法律では、遺伝子組換え生物の生物多様性への影響を評価することが義務付けられています。また、近年、遺伝子組換え農作物などへの消費者の関心が高まっており、安全性の確保に関する研究や情報提供により、国民の理解を得ることがいっそう重要となっています。
このため、農林水産省農林水産技術会議事務局が農業環境技術研究所をはじめとする多数の研究機関、大学、民間研究所などに委託して、研究プロジェクト「遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合研究」が実施されました。
この研究プロジェクトの平成16年度と17年度の研究結果が、本年3月に「研究成果447」として公表されましたので、研究課題や担当機関などをご紹介します。
研究期間・予算区分
平成16年度〜平成17年度
農林水産技術会議バイオテクノロジー先端技術開発研究
研究担当機関
独立行政法人:
農業・生物系特定産業技術研究機構 (中央農業総合研究センター、作物研究所、野菜茶業研究所、畜産草地研究所、北海道農業研究センター、東北農業研究センター、近畿中国四国農業研究センター、九州沖縄農業研究センター)、農業環境技術研究所、農業生物資源研究所、食品総合研究所、森林総合研究所、林木育種センター、農林水産消費技術センター、種苗管理センター、水産総合研究センター
大学:
北海道大学、信州大学、北陸先端科学技術大学院大学、筑波大学、近畿大学
民間:
(株)三菱化学安全科学研究所、(有)日本きのこセンター菌じん研究所、(財)食品環境検査協会、(財)日本食品分析センター、(株)ファスマック
主任研究者
主任受託者:
農業環境技術研究所 理事長
陽 捷行 (平成16年度)
佐藤洋平 (平成17年度)
主任主査:
農業環境技術研究所 生物環境安全部長
岡 三徳
推進リーダー:
農業環境技術研究所 微生物・小動物研究グループ長
塩見敏樹
副推進リーダー:
農業環境技術研究所 植生研究グループ長
小川恭男
チームリーダー:
(農業環境技術研究所ほか のべ18名)
研究課題と担当機関
1 組換え生物についての科学的知見の蓄積
(1) 今後実用化が見込まれる組換え生物の生物多様性影響評価手法の開発
(1) 組換え植物の生物多様性影響評価手法の開発に関する研究
ア 組換え牧草の生物多様性影響評価手法の開発に関する研究 (北農研、畜草研、東北研)
イ 新規組換え植物が生物多様性に及ぼす影響の評価に関する研究 (農環研、野茶研)
(2) 森林組換え生物の生物多様性影響評価手法の開発に関する研究 (森総研、林木育、信州大、日本きのこセンター)
(3) 組換え動物の生物多様性影響評価手法の開発に関する研究 (養殖研、生物研)
(4) 組換え微生物の生物多様性影響評価手法の開発に関する研究
環境微生物 (農環研)
食品微生物 (食総研)
(2) 国民が安心して組換え生物を利用していくための取組
(1) 組換え農作物の栽培に関しての指摘事項を解明するための研究
ア 組換え農作物の長期栽培による生物相への影響モニタリング (農環研、畜草研、中農研、近農研)
イ 組換え農作物の花粉飛散と交雑に関する調査 (東北研、九州研、農環研、種苗管)
ウ 組換え農作物の花粉飛散防止措置の効果に関する調査 (農環研、中農研、種苗管)
エ イネの交雑検定法に関する研究 (作物研)
(2) 組換え生物の挙動等に関するモニタリング手法の高度化 (農環研、北農研、北海道大)
(3) 組換え遺伝子検出技術等の高度化 (食総研、食品環境検査協会、日本食品分析セ、ファスマック、北陸先端大、消費技術セ、近畿大)
2 組換え生物についてのリスク・ベネフィット比較管理手法の開発 (農環研)
3 遺伝子拡散防止等安全確保技術の開発 (野茶研)
4 社会動向の把握とコミュニケーション (三菱化学安全科学研、筑波大)