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情報:農業と環境 No.87 (2007.7)
独立行政法人農業環境技術研究所

サマー・サイエンス・キャンプ2007 の開催

サイエンス・キャンプ は、独立行政法人科学技術振興機構(JST) が、大学、公的研究機関、民間企業の研究所と協力して実施する、高校生・高等専門学校生のための「先進的科学技術体験合宿プログラム」です。

研究の現場を知り、日頃経験したことのない最先端の研究装置で身の回りのことを調べてみることなどにより、参加者が日常生活の中にある「不思議」を発見し、科学技術をより身近なものと感じられるようになることをねらいとしています。

農業環境技術研究所は、農業生産環境の安全性を確保するために、有害化学物質や外来生物等のリスク評価・管理、農業生態系の構造と生物多様性、温暖化等の環境変動の解明などに向け、農業と環境に関わる基礎的な調査および研究を行っています。

今回のキャンプでは、8月1日から3日まで2泊3日の日程で、A:「農耕地から発生する温室効果ガスを観測する」、B:「農村地帯の小河川の流量・水質を調べ、農村環境の変化を考えよう」、C:「リモートセンシング技術を使ってイネの姿や健康状態をとらえてみよう」の3コースを設け、各コース4名、計12名の参加者に、研究者がどのようにして農業環境の問題に取り組んでいるかを体験してもらいます。

各プログラムの内容

A: 「農耕地から発生する温室効果ガスを観測する」 コース

田んぼや畑は食料を生産する大切な場ですが、こうした農耕地が地球温暖化にも関係しています。それは、農耕地の土壌から二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素といった温室効果ガスが発生しているからです。どれも、その大気中濃度はppmレベル(体積比で百万分の1)か、それ以下というわずかなものですが、地球の気候変動に大きな影響を与えています。水田土壌から主として発生するメタンや畑土壌から主として発生する亜酸化窒素を、どのような装置で計測するのか、また、温室効果をもたらす物質とはどのようなものなのかを学習してもらう予定です。

B: 「農村地帯の小河川の流量・水質を調べ、農村環境の変化を考えよう」 コース

農業環境の変化を調べるためには土壌、生物、土地利用などさまざまな調査方法があります。このコースでは河川の水量・水質の調査を行うことにより、農村を取りまく水環境の変化の実態に迫ります。まず、筑波山東麓の石岡市八郷地区の小河川で、実際の流量測定と水のサンプリングを行い、研究室で水の分析(懸濁物質、窒素、リンの各濃度)を行って、過去の調査データと比較します。そして、最近10年前後の傾向を読み取り、環境省が示している水質基準とも比較します。水質の変化を通して、農村集水域の環境とその変化について学習します。

C: 「リモートセンシング技術を使ってイネの姿や健康状態をとらえてみよう」 コース

人工衛星を使って宇宙から撮影された画像は、私たちの身近な地域の土・水・生き物のあり様をとらえています。また、農業分野では国内外の農作物の栽培状況や品質、そして災害による被害程度などを迅速かつ正確に知るために活用されています。このコースでは、植物や農作物の情報を調べるリモートセンシングの原理を地上実験で学びます。人工衛星に載せられている装置と同じように光の波長ごとの強さを測ることのできるスペクトロメータという機械を使って、研究所内の水田のイネから反射されている光を測定します。そして、同時にイネの葉の茂り具合や緑色の濃さなどのデータなども計り、リモートセンシングでイネの生育の良し悪しや、栄養状態を診断してみます。

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