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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

研究プロジェクト 「野菜等におけるPOPsのリスク低減技術の開発」 の開始

残留性有機汚染物質 (POPs、Persistent Organic Pollutants) による農産物汚染の防止・低減をめざすプロジェクト研究「野菜等におけるPOPsのリスク低減技術の開発」が、平成20年度から開始されます。

プロジェクトの背景

POPsは、環境中での残留性が高く、ヒトの健康に悪影響を及ぼす危険性がある化学物質です。POPsの廃絶、削減等を国際的に協調して行うため、2001年5月に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択されています。また、現在、POPsとして新たに指定すべき物質について国際的な検討が行われています。

POPsに指定された物質や今後指定される可能性のある物質には、過去に農薬として使われていたものが多く含まれています。わが国で過去に農薬として使われていたドリン類やヘプタクロル類が、POPsに指定されていますが、これらが土壌中に長期に残留し、キュウリやカボチャから残留基準値を上回る濃度で検出された事例が報告されています。

POPsについての研究は、これまで農林水産省委託研究 「農林水産業における内分泌かく乱物質の動態解明と作用機構に関する研究 (平成11〜14年度)」 や 「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発 (平成15〜19年度、略称 「有害化学物質」)」 で進められてきましたが、フードチェーンの中の汚染対策技術の観点からは、まだ実用化の段階まで進めることができていませんでした。そこで、農林水産省委託研究 「生産・流通・加工工程における体系的な危害要因の特性解明とリスク低減技術の開発」の中で、「野菜等におけるPOPsのリスク低減技術の開発」の課題で研究を進めることになりました。

プロジェクトの内容

この研究では、わが国でPOPsの残留が問題となっているウリ科野菜を中心に、土壌中に残留するPOPsによる農産物の汚染防止や低減をめざして、POPsによる農耕地土壌の汚染度の推定、汚染土壌の修復(汚染の除去)、作物による吸収の抑制などの実用的技術を開発して、『実施規範(マニュアル)』に反映させて、農産物の安全性確保の推進に貢献したいと考えています。

プロジェクトの期間は、平成20〜24年度の5年間で、本研究分野で多くの研究実績を持つ農業環境技術研究所を中核研究機関、大学、都道府県農業試験研究機関などを共同研究機関として、以下の研究課題に取り組みます。詳細については、農林水産技術会議Webサイト をご参照ください。

研究課題

1 フードチェーンにおけるPOPsの曝露に関する評価技術の開発

(1) 土壌特性に基づくPOPsの作物汚染リスク予測技術の開発

(2) POPsの作物体への吸収・移行特性の解明

(3) POPsの食品における動態の解明

2 POPsのリスク管理技術の開発

(1) POPsの汚染除去技術の開発

(2) POPsの吸収抑制技術の開発

3 POPsのリスク評価・管理のための共通基盤技術の開発

(1) POPsの効果的サンプリング法の開発

(2) POPsの簡易検出法の開発

(3) POPsのリスク管理技術の評価手法の開発

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