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情報:農業と環境 No.98 (2008年6月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

「欧州地球科学連合 (EGU) 2008年大会」(2008年4月、オーストリア(ウィーン))参加報告

平成19年度に終了した農林水産省委託プロジェクト 「地球規模水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価と対策シナリオの策定」 の成果を海外に公表することを目的として、2008年4月13日から18日にオーストリアのウィーンで開催された欧州地球科学連合2008年大会 (The General Assembly 2008 of European Geosciences Union) に参加しました。

欧州地球科学連合は、地球科学に関係する欧州の学会が組織する連合体で、毎年4月にヨーロッパ主要都市で年次大会を開催しています。2000年代に入ってから開催都市が固定化される方向で進んでおり、2000〜2004年にはフランスのニースで、2005年からウィーンで開催され、次回 (2009年) もウィーンでの開催が予定されています。

今回の参加者は約8,300人、セッション数は500以上あり、欧州はもちろん、米国、中国、日本からも多くの研究者が参加しました。また、大学院生など若手研究者の発表も多く、活気にあふれた議論が各セッションで展開されました。

報告者は、「モンスーンアジアにおける大気・地表面・人間活動の相互作用 (BG2.7 Land-atmosphere interactions and human activity in Monsoon Asia) 」のポスターセッションで、「タイ東北部における水循環変動と食料生産に必要な水需要への影響の評価 (Evaluation of the Relationship between the Variability in the Water Cycle and the Demand for Water for Food Production in the Northeastern Region of Thailand)」 というタイトルで発表しました。発表の内容は、タイ東北部において、降水量の変動がイネ生産地域の水循環に及ぼす影響、そしてこれがイネ栽培の分布と期間、生産性に及ぼす影響を明らかにする評価法を提示したというものです。発表では、中国やタイの研究者と評価手法の基礎データの取得とその精度、クロップカレンダー(農事暦、作物栽培暦)の調査方法、評価法で用いられている水収支モデルとコメ収量予測手法などについて議論し、品種や作期、気象に関係する情報の収集、研究連携や協力可能な現地研究者など、今後の研究推進に役立つ、新たな情報を得ることができました。

このセッションのコンビナー (開催責任者) は中国科学院大気物理学研究所の Fu Chougbin 教授、副コンビナーはオランダワーゲニンゲン大学環境研究センターの Pavel Kabat 教授であり、iLEAPS (統合陸域生態系−大気プロセス研究、Integrated Land Ecosystem-Atmosphere Processes Study) が後援していました。オーラルセッション6件中の5件と、ポスターセッション8件中5件が、中国国内の気候変動と土地利用変化による水文(すいもん)、植生・生態への影響に関する発表でした。IPCCの第4次評価報告書第2作業部会報告書(影響・適応・ぜい弱性)のアジアに関する章(第10章)での中国に関する記述が多いことからもわかるように、中国国内での気候変動や環境変化について世界の関心が高い中で、中国の研究者がこのようなセッションを企画したことに、Pavel Kabat 教授が副コンビナーとして好意的なコメントをしていました。そして、EGUなどの国際学会でセッションを独自に立上げてモンスーンアジア研究を積極的に推進しようという中国の姿勢を感じました。

現在、日本でも総合科学技術会議科学技術外交の強化に向けた検討を行っており、農林水産技術会議も「国際研究戦略」を策定して、農林水産分野の国際研究で重点的に取り組むべき研究課題と方策を提示しています。このような中で、農業環境技術研究所は、モンスーンアジアの農業環境が直面している問題点を解決するための国際共同研究を進めるコンソーシアムとして、MARCO を創設しました。MARCO の活動は、現在、年に数回の国際シンポジウム開催と、数名程度の研究者受け入れなどですが、アジア各国と協力してモンスーンアジアに共通の環境問題を解決するためには、MARCO のもとで農環研がリーダーシップをとって国際共同研究を推進するだけでなく、国際学会セッションのオーガナイズや国際誌での特集号編集を通して、その成果を広くアピールすることが必要と考えられます。

(連携推進室長 鳥谷 均

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