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情報:農業と環境 No.106 (2009年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所年報 第25号 (平成19年度) が刊行された

平成19年度(2007年度)の農業環境技術研究所年報が、この1月に刊行されました。農業環境技術研究所が発足した昭和58年度(1983年度)から数えて25冊めの年度報告です。

平成16年度(第22号)以降の内容(PDFファイル)が、農業環境技術研究所Webサイト 内の 刊行物農業環境技術研究所年報 でダウンロードできますので、ご利用ください。

以下に、農業環境技術研究所年報 第25号の冒頭に収録された「はしがき」と目次を紹介します。

はしがき

絶えざる挑戦と革新

トウモロコシ、小麦など穀物および大豆の国際価格が、ここ数年、急激な値上がりを示しています。異常気象による不作に加え、新興国の経済発展による需要の拡大、バイオエネルギー生産のための需要の増大、さらには、穀物市場への投機的資金の参入などがこの原因として挙げられています。これは、20世紀終わり頃から加速的に進んだ経済における地球化の一例です。他方、ブラジルでのトウモロコシや大豆の生産拡大に誘発されたアマゾンにおける熱帯雨林の農地開発が生物多様性の喪失をもたらしているように、経済の地球化は環境問題の地球化を派生しています。貿易に伴う外来生物の侵入もこの例です。

穀物貿易にみる経済の地球化は、腐敗しやすいものを自然な状態で長い距離を運搬することを可能とする輸送技術の革新に支えられています。20世紀を通じたこのような革新された技術の地球化は、オゾンホールや地球温暖化に代表されるように、環境問題の地球化を併発してきました。環境問題の地球化に対しては、思考の地球化が必要であり、その必要性はいろいろな局面で高まっています。農業部門においてもそれは例外ではありません。地球の温暖化が確実に進んでいるとすれば、農作物など農業生態系に与える影響はどうなるのであろうか。温暖化の原因が人間活動による温室効果ガスの排出であるならば、農業生産活動による温室効果ガスの排出はどうなのであろうか。

周知のように私たちの研究所は、農業生産の対象となる生物の生育環境の保全および改善に関する基礎的な研究を行うことを目的としています。

農業は、種の選別、病害虫の防除、除草など、たくさんの動植物種の制御 (生物制御) と、耕耘、灌漑など、生態系の物的要素の改変 (物理制御) と、施肥による肥沃度の制御 (化学制御) とからなる 「生態系制御」 を本質としています。食料生産の最大化を目標とする多投入多産出の近代農業のもとでの 「生態系制御」 は、その過程で生態系に大きな負荷を与えてきました。植物の成長を促し豊かな実りを得るための大量の肥料投入や農薬散布が河川や地下水の水質を悪化させるのは、そうした負荷の一例です。

現代の農業環境研究は、しかし、上に管見した環境問題の地球化によって、「生態系制御」 に内包される環境問題のみならず、地球化する環境問題へと、そのスコープを拡大させてきました。

第 II 中期目標期間における私たちの研究計画は、農業環境をめぐるリスクを解明し評価するとともに、それらリスクを制御し管理する技術の開発に重点を置いた3本の柱から構成されています。具体的には、以下の3つです。

これらはいずれも、農業が「無分別な自然の搾取」と「無責任な生産」に組みすることのないように、「生態系制御」に内包される農業環境リスクを解明し解決策を探るとともに、健全な地球システムの持続性を脅かさないための知の創造に向けた挑戦です。 本年報は平成19年度の一年間に行いました私たち研究所の業務報告です。研究活動の成果のみならず、評価・点検、広報、連携、研究支援など研究所の業務全般にわたり報告しています。

なお、気候変動に関する政府間パネル (IPCC) のノーベル平和賞受賞に関して、ラジェンドラ K. パチャウリ IPCC議長より、その受賞への貢献を認定する賞状が私たち研究所の元・現所員3名に授与されたことをここに報告いたします。

私たちは、基本理念に掲げる、自然、社会、人間の調和と共存を目指す高い水準の研究を推進し、世界の食料問題と環境問題の克服に貢献するという農業環境技術研究所の究極の目標に向けて邁進しています。この年報が、みなさんに有用な情報を提供し役立つことを望んでいます。

平成20年12月
独立行政法人 農業環境技術研究所 理事長
佐藤 洋平

目次

はしがき

基本理念

 I.主な研究トピック

1.コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアル

2.低濃度エタノールを用いた新規土壌消毒法の開発

3.ゼロエミッションを目指したもみ殻ガス化残渣の有効利用

4.スズメノナスビを台木としてナス果実中カドミウム濃度を低減

5.土壌DNAによる土壌生物相解析マニュアルの作成

6.イネなどの葉の表面から生分解性プラスチック分解菌を発見

7.水稲の温暖化影響評価のための「モデル結合型作物気象データベース」

8.温室効果ガス3成分自動同時分析システムの開発

9.広域的な栽培暦情報を集積・共有するためのWebデータベース

10.谷津田が植物の多様性を高めるしくみを解明−水田周辺の草刈りがさまざまな植物を保全−

11.地球温暖化が水稲栽培におよぼす影響を研究する−2007年夏の記録的猛暑での水稲不稔率の考察から−

II. 研究実施の概要

A 農業環境のリスクの評価及び管理技術の開発

B 自然循環機能の発揮に向けた農業生態系の構造・機能の解明と管理技術の開発

C 農業生態系の機能の解明を支える基盤的研究

III. 平成19年度研究課題

1. 受託事業一覧

2. 法人プロジェクト研究課題一覧

IV. 研究成果の発表と広報

1. 研究成果

(1) 研究成果情報

(2) 査読論文一覧

2.広報

(1) 農業環境技術研究所が開催した研究会・シンポジウム

(2) 刊行物一覧

(3) 情報:農業と環境 (No.84〜95)

(4) マスコミへの情報提供と報道

3. 一般向け行事及び来訪者

(1) 一般向け行事

(2) その他の見学者・来訪者

 V.研究・技術協力

1. 共同研究

(1) 国内

(2) 国外

2. 行政等からの要請による委員会等への専門家の派遣一覧

3. 海外機関との連携

4. 受入研究員等一覧

5. 大学との連携

6. 依頼同定、分析および技術相談

VI. 総務

1. 機構

2. 人事

(1) 役職員数

(2) 人材育成に係る研修

(3) 受賞・表彰

(4) 叙勲

3. 会計

(1) 財務諸表

(2) 決算報告書

(3) 予算、収支計画及び資金計画

(4) 特許等一覧表

4. 図書

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