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情報:農業と環境 No.109 (2009年5月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農林水産技術会議事務局 「研究成果」 シリーズの紹介(13): 「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」

化学物質の中には、ダイオキシン類、カドミウムのように環境中に長期間残存し、食物等を通じて人の体内に蓄積されるため、そのリスク管理が必要なものが存在します。安全性に対する意識・関心が高まる中、カドミウムについては、食品中の残留に関する国際基準の強化の動きが活発化しています。わが国においても食品衛生法に基づく残留基準が強化・制定された場合、コメを始めとして農産物の生産における安全性確保の取組みが強く求められることになります。また、残留性の高い農薬等の化学物質の汚染から人の健康及び環境を保護することを目的とした「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(POPs条約)が2004年5月に発効し、残留性の高い有機汚染物質の動態を十分に把握することが国際的に求められています。

この研究プロジェクトでは、カドミウム、ダイオキシン類、ドリン系農薬などの有害化学物質のリスク管理の研究を通して、農林水産生態系の保全と農畜水産物の安全性の確保に資するため、農林水産生態系における有害化学物質の動態の解明、有害化学物質の生物・生態系のリスク評価法の開発、並びに有害化学物質の分解・無毒化技術および農作物可食部への移行抑制等の実証研究を通じたリスク低減技術の開発を行いました。

平成15年度(2003年度)から平成19年度(2007年度)までの5年間にわたり、農業環境技術研究所が中心となって実施した研究の成果が、2009年3月に研究成果471 「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」 として公開されましたので、研究課題と担当機関などをご紹介します。

研究期間・予算区分

2003年度〜2007年度
農林水産省農林水産技術会議 環境研究

研究担当機関 (再委託先を含む)

独立行政法人:
農業環境技術研究所、農業・食品産業技術総合研究機構 (中央農業総合研究センター、作物研究所、野菜茶業研究所、畜産草地研究所、動物衛生研究所、東北農業研究センター、九州沖縄農業研究センター)、農業生物資源研究所、森林総合研究所、水産総合研究センター (中央水産研究所、瀬戸内海区水産研究所)、産業技術総合研究所、理化学研究所

大学:
東北大学、東京大学、長岡技術科学大学、岐阜大学、名古屋大学、大阪大学、神戸大学、島根大学、広島大学、九州大学、秋田県立大学、静岡県立大学、神戸女学院大学、福岡工業大学

都道府県:
北海道立中央農業試験場、北海道立上川農業試験場天北支場、北海道立道南農業試験場、岩手県農業研究センター、秋田県農林水産技術センター、山形県農業総合研究センター、栃木県農業試験場、群馬県農業技術センター、埼玉県農林総合研究センター、東京都農林総合研究センター、長野県農業総合試験場、新潟県農業総合研究所、富山県農業技術センター、福井県農業試験場、岐阜県農業技術センター、愛知県農業総合試験場、兵庫県農林水産技術総合センター、鳥取県農業試験場、高知県農業技術センター、福岡県農業総合試験場、熊本県農業研究センター

民間:
財団法人化学物質評価研究機構、株式会社エスコ、株式会社小泉(株式会社植物工学研究所)、株式会社太平洋セメント、出光興産株式会社、大塚化学株式会社

主任研究者

主査:

農業環境技術研究所 理事長
陽 捷行 (2003〜2004年度)
佐藤洋平 (2005〜2007年度)

推進リーダー:

農業環境技術研究所 化学環境部 部長
今井秀夫 (2003年度)
齋藤雅典 (2004〜2005年度)

農業環境技術研究所 研究コーディネータ
齋藤雅典 (2006〜2007年度)

カドミウムチーム(主要作物のカドミウム吸収・蓄積を抑制するための総合管理技術の開発)

チームリーダー:

農業環境技術研究所 化学環境部 重金属研究グループ グループ長
小野信一 (2003〜2005年度)

農業環境技術研究所 土壌環境研究領域 領域長
小野信一 (2006〜2007年度)

有機化学物質チーム(有機化学物質の総合管理技術の開発)

チームリーダー:

農業環境技術研究所 化学環境部 有機化学物質研究グループ グループ長
長谷部 亮(2003〜2004年度)
與語靖洋(2005年度)

農業環境技術研究所 有機化学物質研究領域 領域長
與語靖洋 (2006〜2007年度)

研究課題

1 主要作物のカドミウム吸収・蓄積を制御するための総合管理技術の開発

(1) 農耕地土壌におけるファイトレメディエーション技術の開発

1) 植物による土壌修復から処理までの効率的システム技術の開発

2) カドミウム吸収を最大化するための土壌・水管理・資材及び作付け体系の開発

3) イネのカドミウム蓄積能の改良及びカドミウム高吸収イネの選定と検定法の開発

4) 化学洗浄法による汚染土壌の迅速修復技術の開発

5) 地域に適合したイネ・ムギ・ダイズのカドミウム低吸収品種の開発

6) 地域に適合した野菜のカドミウム低吸収品種の開発

7) 作物・土壌タイプ別の汚染土壌修復目標値の策定とその検証手法の開発

(2) 総合的営農技術体系の確立

1) 有機性廃棄物利用に伴うカドミウム負荷のリスク評価とその軽減対策技術の確立

2) イネ・ダイズ・ムギに対する主要土壌汚染修復レベルに応じた営農技術体系の確立

3) イネ・ダイズにおける子実中カドミウム濃度の収穫前迅速予測技術の確立

2 有機化学物質の総合管理技術の開発

(1) 有機化学物質のリスク評価法の開発

1) 農薬の環境中での動態及び濃度予測手法の開発

2) ノニルフェノールの土壌、農作物における動態と水系流出機構の解明

3) 閉鎖性水域における有機スズ化合物の動態解明と動態モデルの開発

4) 資源循環型酪農における内分泌かく乱物質動態の実態解明

5) 残留性有機化学物質の挙動に関するマルチメディアモデルの開発

6) 水生生物に対する農薬等化学物質の影響評価法の開発

7) 魚類の生殖内分泌系に及ぼす有機スズ化合物の影響評価法の開発

8) 二枚貝神経節の遺伝子発現に基づく有機スズ化合物の影響評価手法の開発

9) 魚類の生体防御、薬物代謝系に及ぼす有機スズ化合物の影響評価法の開発

10)飼料および動物体内における内分泌かく乱物質の影響評価法の開発

(2) 有機化学物質のリスク低減方法の開発

1) 植物を利用した有害化学物質の分解除去技術の開発

2) 微生物を利用した有害化学物質の分解除去技術の開発

3) ドリン系農薬汚染土壌の総合管理技術の開発

4) ダイオキシン類の拡散防止技術の開発

5) 木質材料の燃焼におけるダイオキシン類生成防止技術の開発

6) 牛およびその生産物におけるダイオキシン類の低減化技術の開発

7) 有害化学物質の分解・無毒化技術の開発

8) 化学物質汚染土壌の対策技術に対するリスク経済評価手法の開発

なお、この報告書のPDFファイルは、農林水産技術会議事務局筑波事務所 AGROPEDIAAgriKnowledge (アグリナレッジ)で、ダウンロード・閲覧することができます。

研究成果 471 農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2039014654.pdf

(PDFファイル、18.4MB)

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