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情報:農業と環境 No.118 (2010年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所「環境報告書2009」を公表

農業環境技術研究所は、昨年(2009年)11月、「環境報告書2009」 を公表しました。農環研の5冊目の報告書となるこの冊子では、2008年度の実績を中心に、研究所における環境負荷低減の取り組みや、農業環境の安全性と持続性を確保するための研究活動などを報告しています。

今回の報告書では、長期にわたる農地土壌の環境の変化を調べている 「27年間不耕起畑ほ場」 を、とくに紹介しています。

報告書の冒頭の理事長の「ごあいさつ」と報告書の目次を、以下にご紹介します。

農業環境技術研究所 環境報告書2009 「ごあいさつ」

ごあいさつ

独立行政法人 農業環境技術研究所 理事長 佐藤洋平

私たちの暮らしは、地上の自然あるいはバイオシステムによって蓄えられた太陽エネルギーを少しずつ取り出し使うことによって成り立っています。しかし、産業革命以降の工業化の進展によってその取り出し方が大きくなったことから、近年、いろいろな局面において 「持続性」 が問われるようになりました。

私たちの社会は持続的であろうかという問い掛けに対して、マックス・プランク物理学研究所所長 (当時) Dr. H.P. デュールは、私たち先進工業化諸国の人々が地球の資源を消耗させている状況を、「エネルギー召使い」 (energy slaves) という概念を考案し、描出しています。1人力 (manpower) は1馬力 (horsepower) の4分の1に相当するとして、西欧社会が消費しているエネルギーを人力に換算すると、世界の人口60億の人々の暮らしは、1,300億人の 「召使い」 がエネルギーのために飛び回っていることによって支えられている。しかしこの値は、バイオシステムを損傷しない水準である900億人の 「エネルギー召使い」 の使用を遙かに超えている、と警鐘を鳴らしています。バイオシステムの許容量 (carrying capacity) であるこの水準は、1人当り15人の 「エネルギー召使い」 の使用に相当しますが、使用の現状は国によって大きく異なっています。たとえば、米国では110人、ヨーロッパ、日本では60人、バングラデシュでは1人の 「エネルギー召使い」 です。私たちは今の使用水準の4分の1に縮減しなければならないこの計算結果は、バイオシステムが許容することのできる持続的な社会を築く上で私たちの暮らし方に一つの示唆を与えています。

農業環境技術研究所では、環境負荷軽減のための取り組み項目と数値目標、研究所が取り組む事項、職員が取り組む事項などを定めた 「環境マスタープラン」 を策定し公表するとともに、この目標達成に向けた取り組みを行っています。さらに、業務遂行において依拠すべき基本理念を定め、そのもとに、環境研究の推進、法令遵守、技術移転、広報および情報の公開、協力・連携・国際貢献を行動指針とする行動憲章、ならびに、環境への意識向上、環境への配慮、活動の公開、社会との共生を環境行動指針とする環境憲章を定め内外に公表して明らかにし、業務の効率的かつ効果的推進と併せて、コンプライアンスの重視と環境に配慮した行動を常に心がけています。このことは、「環境」 を冠する研究所であること、食の安全・安心を支える研究所であることから、業務に関わる法令順守はもとより環境への配慮、安全性の確保を徹底することが重要であるという認識に依拠しています。

本報告書は、2008年度の1年間における私たち研究所における環境配慮の取り組みについて報告するとともに、併せて、研究活動および研究成果の一端、さらには地域および社会に対する貢献を記載するなど農業環境技術研究所の業務を紹介しています。ちなみに、この年度には、IPCCのノーベル平和賞受賞への貢献により感謝状が授与され、また、平成20年度文部科学大臣表彰科学技術賞 (理解増進部門) を受賞するなど、専門研究分野を活かした社会貢献が第三者の評価において高く評価されました。文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞した 「土壌モノリスを活用した土の理解増進」 は、土壌モノリス(土壌断面標本)の作成法の開発、その後30年に渡る国内外の関係者への普及や指導活動が高く評価されたものです。私たちは、基本理念に掲げる自然、社会、人間の調和と共存を目指す高い水準の研究を推進し、世界の食料問題と環境問題の克服に貢献するという農業環境技術研究の究極の目標に向けて邁進する所存です。

本報告書がみなさんに有用な情報を提供し役立つことを願うとともに、本報告書をご一読いただき、私たちの活動についてみなさんから忌憚のないご意見、ご提言などをいただくことができますれば幸いに存じます。

環境報告書2009 目次

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