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農業と環境 No.138 (2011年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第1回微生物国際学会年次大会(7〜8月 中国(北京))参加報告

2011年7月30日から8月1日まで、第1回微生物国際学会年次大会 ( BIT’s 1st Annual World Congress of Microbes-2011, WCM2011 ) が中国の北京で開催されました。 会場である中国北京国際会議場は、北京空港から約20km。タクシーで走る間も、高層ビル群や空港と市内を結ぶ高速鉄道など中国の著しい発展の様子を見ることができました。オリンピック公園が会場すぐ近くにあり、鳥の巣と呼ばれた北京オリンピックのメインスタジアム、北京国家体育場(写真1、写真2)を、会議室前の廊下の窓から見ることができました。

日中の北京国家体育場(写真)

写真1 会場から見た北京国家体育場

中国では最近さまざまな分野の国際学会が積極的に開催されています。本大会はその一環で、微生物にかかわる7つの大会が開催される合同の大会でした。開催地である中国、またアメリカ合衆国、日本からの参加者が他の国より多かったものの、ヨーロッパ20か国、アジア14か国、アフリカ3か国、北米2か国、南米4か国、オセアニア2か国と非常に多様な地域、計45か国から、304名の研究者が参加しました。

私は7つの大会の中の、第1回国際菌学シンポジウム(1st Annual International Symposium of Mycology, ISM2011)に、おもに参加しました。このシンポジウムは菌類の病原性から環境中の生態、バイオ産業分野での利用に関することまで、13のセッションで構成されていました。その中のセッション “Fungal Distribution and Diversity(糸状菌の分布と多様性)” において、 “Molecular analyses of fungal community in Japanese agricultural soils(分子生態的手法を用いた日本の農耕地土壌における糸状菌群集構造の解析)” というタイトルで研究成果を発表しました。糸状菌は土壌環境中の物質循環に深く関与することが知られていますが、その生態の解明はあまり進んでいません。一方で土壌から直接 DNA を抽出して微生物を解析する分子生態的手法が近年発展してきました。そこで、この手法の糸状菌群集への適用のため、さまざまな実験条件の検討および確立を行い、農耕地土壌における糸状菌群集の解析に有用であることを示しました。

現在この分野では、用いられる解析手法が大きく転換する状況にあります。これまでは電気泳動的な手法が主でしたが、新たな手法として DNA チップや次世代シークエンサーが登場し、より詳細で大規模な解析が可能になりつつあります。セッションの中では、新たな手法として糸状菌の機能をターゲットにした DNA チップの報告や次世代シークエンサーの解析についての議論がありました。分子生態的な解析は細菌を対象としたものがほとんどで、糸状菌の解析例は少なく、貴重な意見交換の場となりました。今後はこういった手法が、生態的な視点からの糸状菌-植物間相互作用の研究や糸状菌の物質循環における機能、とくに温室効果ガス発生における役割の解析などの研究に活用されることが期待されます。

小規模なセッションであったことが幸いし、セッション後の会場でも発表内容に関心を持ってくれた数名の研究者から質問を受け、発表の質疑では話せなかった点について意見交換することができました。さらに、セッションの発表メンバーでコーヒーブレイクの間、交流の時間をとることができました。メンバーの数人とは学会後もメールで連絡を取り、研究についてのディスカッションを続けています。

今回の大会には、科学技術振興機構(JST)の女性研究者支援モデル育成事業 「双方向キャリア形成プログラム農環研モデル」 の支援を受けて参加させていただきました。研究面でも得ることの多い学会でしたが、研究情報以外にも私にとって印象に残ることが二つありました。

夜の北京国家体育場(写真)

写真2 会場から見た夜の北京国家体育場

一つ目は、初めての国際学会での口頭発表であったと言うことです。セミナーなどで英語の研修を受けることはこれまでにありましたが、実際に外国人研究者を前に英語を話す機会を得られたことは、私にとって非常によい経験になりました。二つ目は、お子さんを持ってご活躍中の少し先輩の女性研究者にお会いできたことです。国際学会の参加には大変苦労されているけれども、工夫して参加しておられること、また、後に続く後輩の女性研究者に対して気遣っておられることなど、食事をしながら伺うことができました。

ほとんどの研究者が、会場に隣接するホテルに宿泊しており、同じレストランで食事をとりました。そこで、相席した各国の研究者と研究内容について議論したり、歓談したりと楽しい時間を過ごすことができました(写真2)。

2泊3日の弾丸ツアーでしたが、考えていた以上に収穫の多い学会でした。今回得られた経験や知識を一つ一つ今後に生かして行けたらと考えています。

(生物生態機能研究領域 星野(高田)裕子)

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