地球の土壌資源を保障するための新たな国際協力の枠組みである 地球土壌パートナーシップ(GSP)*1 では、総会(GSP Plenary Assembly)を最高決定会議と位置づけていますが、その第1回が、2013年6月11〜12日にローマの国連食糧農業機関(FAO)本部で開催されました。
GSP総会のようす
わが国からは、農環研の大倉主任研究員が出席しました。会議では、まず、議長(ドミニカ共和国)と副議長(タイ)を選出し、昨年の立ち上げ会合から準備されてきたGSPの活動に関する議題が検討されました。主な議題とその検討結果は以下の通りです。なお、GSPについては、「農業と環境」で紹介した過去の記事(154号、 148号、 147号)をご参照ください。
(1)土壌に関する政府間技術パネル(ITPS)委員の承認
ITPSは、GSPに対して科学技術的な諮問・助言を行う専門家委員会で、世界の土壌研究者27名 (アジアからは5名) から構成されます (任期2年)。事務局から委員候補の推薦があり、総会で承認されました。わが国からは、農環研の八木研究コーディネータが選出されました (7月18日 農環研プレスリリース)。なお、第1回ITPS会合 (ITPS Working Session) は、2013年7月22−26日にローマのFAO本部で開催されました。その報告も 「農業と環境」本号 で紹介していますのでご参照ください。
(2)GSPピラー(活動の柱)の活動計画の議論
GSPの活動について、その計画書 (Terms of Reference of the GSP) には、土壌管理、投資、研究、土壌情報、標準化の5つのピラー(柱)が示されています。 これらのピラーのそれぞれについて、ワーキンググループ(WG)を立ち上げ、それぞれの活動計画を策定することが確認されました。また、ITPSには各ピラーの活動計画について技術的な助言を求め、特に、先行しているピラー4 (土壌情報) の活動計画案については審議を求めることとしました。以下に、各ピラーの活動状況をまとめて示します。
GSPピラーの状況:
1. [土壌管理]土壌資源の持続的管理の推進
2012年12月にワークショップ開催(154号)。現在、WGで活動計画案を策定中。
2. [投資]土壌に関する投資、技術協力、施策、教育、普及の奨励
12月5日の世界土壌デーと2015年の世界土壌年の活動を推進。活動計画議論のためのワークショップ開催を準備中。
3. [研究] 土壌研究と開発の推進
GSP事務局で、国際農業研究協議グループ(CGIAR)などの国際研究機関への聞き取りを行い、研究計画策定のための予算確保をめざしている。WGはこれから構成。
4. [土壌情報]土壌データと情報システムの整備
すでにWGにより活動計画案が作成されている。第1回ITPS会合で審議され、一部修正の後、承認された。来年のGSP総会にて最終的に承認される予定。
5. [標準化] 持続的な土壌管理のための調査方法や指標の標準化
活動計画議論のためのワークショップ開催を準備中。
(3)世界土壌デー(12月5日)と国際土壌年(2015年)の採択
「国際土壌年」への支持呼びかけ
国際的に土壌の重要性を啓発するため、国際土壌科学連合(IUSS)やFAOと協力し、12月5日を「世界土壌デー」、2015年を「国際土壌年」とすることが承認されました。「世界土壌デー」については、昨年もFAOで祝賀式典が開催されましたが(154号)、本年も12月5日にサイドイベントが企画されています。また、「国際土壌年」については、GSP議長国のタイが提案国となり、本年9月の国連総会にて承認を得る予定です。
(4)GSPロードマップの構築
GSP活動の工程を示した 「GSPロードマップ」 が議論され、事務局に細部を詰めることを要請することで、基本的には承認されました。「GSPロードマップ」 には、2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20) での成果のフォローアップである 「土壌と持続的開発目標」 の策定、気候変動(UNFCCC)、砂漠化(UNCCD)、生物多様性(CBD)に関する国連条約の枠組みとの連携、1981年に制定された世界土壌憲章の改訂、土壌に関するさまざまな国際計画の策定などが含まれています。
その他、地域土壌パートナーシップの状況やGSPの財政に関する報告などを行い、最後に、来年の総会(2014年6月)までの議長国としてタイを選出し、閉会しました。
*1 GSP (Global Soil Partnership) の日本語訳について
「農業と環境」147号 では、「Global Soil Partnership」 の暫定的な日本語訳として、全てカタカナの「グローバル・ソイル・パートナーシップ」を提案しました。その後、所内研究者で検討し、新たな訳語「地球土壌パートナーシップ」を採用することとしました。
八木一行 (研究コーディネータ)
大倉利明 (農業環境インベントリーセンター)