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農業と環境 No.165 (2014年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

気候変動対策プロジェクト国際シンポジウム
「農業および森林生態系における炭素循環のモデル化」
開催報告

独立行政法人農業環境技術研究所と独立行政法人森林総合研究所は、平成25年11月12日・13日に、国際シンポジウム 「農業および森林生態系における炭素循環のモデル化」 を、農林水産省農林水産技術会議事務局のプロジェクト研究 「気候変動対策プロ」 の支援を受けて開催しました。

農林水産省農林水産技術会議が委託する 「気候変動対策プロジェクトA系」 では、農・林・水の各分野において、温暖化緩和技術の開発を目的とした大課題が設定され、それぞれの生態系における炭素・窒素循環のメカニズムの解明、それに基づくモデルの開発、さらにモデルを用いた全国スケールの推定を行っています。そのうち、森林と農地では、土壌部分のメカニズムに共通点が多いため、課題間連携テーマ 「炭素・窒素モデル」 が設定され、連携の強化を進めています。

この国際シンポジウムでは、プロジェクト内連携の一環として、土壌炭素循環のモデル化に焦点を当て、海外の先進的な研究者を招へいして最新の研究の情勢を紹介していただくとともに、プロジェクトの成果を報告しました。このことから、われわれの研究の現状を世界の情勢のなかで認識し、さらに方向性をともに議論することで、プロジェクトの目標達成に向けて研究を加速し、その先の研究の方向性について展望を得ることを目的としました。

Keith Paustian教授の基調講演のようす:スクリーンには大きな赤いタンクを背負った牛の写真が映しだされている

Keith Paustian 教授の基調講演

伊藤昭彦氏の講演後の議論のようす

伊藤昭彦氏の講演後の議論

開催日: 2013年11月12日(火曜日)〜13日(水曜日)

開催場所: 独立行政法人農業環境技術研究所

主催: 独立行政法人農業環境技術研究所独立行政法人森林総合研究所

参加者: 51名
内訳: 外国人招へい者4名、 大学・民間6名、 国・独法研究機関41名(うち森林総研14名、農環研20名)

議論等の概要

1日目は、基調講演として、米国コロラド州立大の Keith Paustian 教授が、アメリカの農業分野の温室効果ガス発生の現状および、それを推定するためのモニタリングとモデリングの概要を、続いてフィンランドの Aleksi Lehtonen 氏が森林における土壌炭素モデル Yasso の適用について、ドイツの Martin Wattenbach 氏が欧州の農地の炭素収支について、ドイツの Michael Herbst 氏が、土壌炭素モデル RothC の概念的な画分と実測可能画分の対応について、それぞれ講演し、質疑応答を行いました。

2日目は、国立環境研究所の伊藤昭彦氏が全球スケールの陸域生態系モデルについて、森林総合研究所の石塚成宏氏が日本の森林における土壌、リター、枯死木の化学組成の変化について、農業環境技術研究所の和穎朗太が土壌の物理分画から明らかになった土壌の炭素安定化メカニズムについて、矢ヶ崎泰海が日本の農地土壌の炭素量変化の RothC モデルによるシミュレーションについて、それぞれ講演しました。

総合討論では、講演の内容を踏まえて、メカニズム研究の成果をモデルにどう取り込むか、モデル予測の不確実性を減らすにはどうすれば良いか、スケールに応じた研究の重要性、全球スケールの生態系モデルに対して土壌研究者はどう貢献できるかなど、今後の研究の課題について議論されました。

白戸康人(農業環境インベントリーセンター)

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