1.英国、010209、GM作物の試験栽培地が増加
英国では、一定の試験栽培結果が出るまで、GM品種の販売を停止することで、国内の関連企業が合意した。科学運営委員会(SSC、Scientific Steering Committee)は、除草剤耐性GM作物を対象とした農家レベル評価(Farm-Scale Evaluations - FSE)の作業を監督する独立した組織である。SSCは今年の春の試験栽培用の飼料用トウモロコシ、春ナタネ、テンサイの植え付けにいずれも32カ所で行うように提言した。これを受けて今春、植え付けるGM作物の栽培面積を今までの2倍に増やすことが政府から発表された。
試験栽培の結果は2002/03年度に検討され、問題がないとの判断が下されれば、対象となった作物の一部あるいはすべての商品化が検討されるものと思われる。生物多様性に深刻な影響を与えることが明らかにならなければ、英国では2004年にも商業的なGM栽培が開始される可能性がある。
NIAB社がまとめた調査結果を受けて、ナタネの変種群集(varietal association)および一部回復された(partially restored)ハイブリッドの栽培に関しては非組み換えナタネ類との栽培間隔を50メートルから100メートルに、飼料用トウモロコシの変種および一部回復されたハイブリッドの栽培における栽培間隔を50メートルから80メートルに伸ばすことが決定される。
農漁業食料省によると、「FSEの対象地周辺にある農家への早期連絡(early communication)体制を地方レベルで強化する取り組みを開始した。」と伝えられている。試験栽培農家は今後、自らの作付け計画について、隣接農家および関係のある有機農作物栽培者から意見を聞く。また、英国政府は、保証種子の現行および今後のEU基準を引き続き満たすことができるよう、保証種子の生産者と連繋して対応することをSCIMAC(Supply Chain Initiative on Modified Agricultural Crops)に要請している。
有機農業を促進しているソイル・アソシエーションは、GM試験栽培場との間に緩衝地帯(buffer zone)を有機農家が設けることを認めるよう政府に強く求めている。この緩衝地帯の幅は、ナタネが6キロ、トウモロコシとテンサイが3キロである。
2.英国、010201、遺伝子組換え飼料排除の動き
2001年1月26日付、ファイナンシャルタイム紙では、英国食品スーパー最大手のテスコ(TESCO)が、自店ブランドの肉製品について遺伝子組換え飼料の使用を禁止することを決定したと報じた。テスコの決定を受けて他の英国食品業界もこれに追随する可能性が高く、ひいてはEU全体への波及など大きな影響が予想されている。
英国は、遺伝子組換え食品に対する消費者の嫌悪感が最も強い国として知られており、遺伝子組換えの大豆やとうもろこしを含んだ食品の表示義務が導入された1999年前後から、各大手スーパーは、遺伝子組換え原料を使用した自店ブランドの食品の販売を一斉に取りやめてきた。このため、大手スーパーが高いシェアを持ち(上位5社で食料・飲料市場の50%以上)、各店の商品の約40%が自店ブランドとなっている英国において、現在、遺伝子組換え食品を市場でみることはほとんどない。
3.英国、000922、反GMのデモ参加者は無罪
イースト・アングリアの遺伝子組換え(GM)トウモロコシ畑を襲撃し、損壊の罪に問われていたグリーンピースのメンバー28人に無罪判決が言い渡された。これで、英国政府が農家レベルで行っているGM作物の試験栽培の存続が危なくなってきた。全国農業者連合(NFU)と土地所有者組合(Country Landowners' Association - CLA)は、この試験栽培を請け負っている農家をいかにして守ることができるか、その方策を探るため、早急に話し合いを持つことを英国政府に求めている。
環境省(Department of Environment)は、GM作物が環境および人間に与える影響が容認できるレベルのものであるかどうかを判断する上で欠かせないとして、農家レベルの試験栽培を続ける方針である。
今回、グリーンピースが裁判で勝利を収めたことをきっかけに、このような試験栽培が科学的に無効であることを証明する運動に弾みがつくと同時に、自らの畑での試験栽培を自主的に引き受けることに農家が難色を示すようになるものと予想される。
4.英国、000522、輸入ナタネ種子にGM種子が混入
5月17日、英国政府は、昨年および今春に作付けされた在来種のナタネの一部に遺伝子組換えナタネの種子が混入していたと発表した。これは、ナタネ生産者のみならず一般消費者にも大きな衝撃を与えている。政府としては、今後、輸入種子の検査等を進めていくとしているが、一部の生産者の中には種子会社の法的責任を追及する動きも出てきており、今後の遺伝子組換え作物の生産の行方に大きな影響を与える可能性がある。この報告を受けて調査を行った英国農漁業食料省によれば、混入が確認された種子は、98年にカナダで採種されたものであり、おそらく従来種のナタネ採種場の近くで栽培されていた遺伝子組換えナタネが混入したものということである(報道によれば、遺伝子組換えナタネが風によって800m離れた採種場に飛ばされて混入したとしている)。この結果、輸入種子の約1%程度が遺伝子組換え種子になったとのことである。
5.英国、000322、新たなGMO食品の表示規則
3月17日、英国農漁業食料省は、遺伝子組換え食品の表示に関する新たな規則を公表した。これは、本年1月10日に欧州委員会によって策定された「遺伝子組換え食品の表示に関する規則の改正(EU規則第49/2000号)」等を国内で適用するためのものである。同時に、これらのEU規則の制定を契機に、従来「食品表示規則1996」の中で取り扱われていた遺伝子組換え食品の表示に関する規定を、独立したひとつの規則にまとめたものでもある。
6.英国、000307、エジンバラでのGMO安全性会議
2月28日から英国エジンバラで行われていた「遺伝子組換え食品の科学的・健康的側面に関するOECDエジンバラ会合」(OECD(経済協力開発機構)主催)が3月1日閉会した。この会合では、遺伝子組換え食品の安全性について議論する国際的な場の設置が提案されるなど、各界の異なる立場の代表者が一堂に集まって議論を行ったという点では、画期的であったと考えられる。しかしながら、これによって遺伝子組換え食品についての今後の確たる方向性が示されたわけではなく、更なる議論の出発点と位置づけられるべきものであろう。
主な論点は以下の通り。
1)遺伝子組換え食品の最新の科学研究成果は何か。科学的に究明されていない部分はどこか。最近のトレンドと将来の見通しはどうか。潜在的な利益と危険性とは何か。
2)自然・社会科学者は、遺伝子組換え食品の安全性の把握・確保についてどのような貢献ができるか。消費者はどのようにして食品の危険性を知ることができるのか。
3)遺伝子組換え食品の安全性は既存の規律の枠内でどのように扱われるのか。
4)遺伝子組換え食品の安全性の問題に関して、更なる国際的協調が求められているのか。
7.英国、000228、GMO食品の潜在的危険性
英国では、OECD(経済協力開発機構)主催の「遺伝子組換え食品と健康に関する国際会議」(2月28日〜3月1日:エジンバラ)に先立って、ホスト国である英国のブレア首相が、「遺伝子組換え作物・食品は、人間の健康や環境の多様性に対して潜在的な危険性を持っている。」と語るなど、遺伝子組換え食品の安全性に対する議論が再燃している。本会議の誘致を積極的に進めてきたブレア首相としては、国民の関心を高め、会議を成功裏に終わらせることで、食品安全性についての英国政府の取り組みを一般市民に強く印象づけたいものと考えられる。
8.英国、000225、GM問題を論議する新組織の設立
GM農作物に関して、偏った議論がなされている現状を是正するため、英国ではこの問題に関連した様々な分野の専門家が委員を務める小委員会からなる組織が設立された。この組織の設立趣旨は均衡の取れた議論を促すことである。資金を出資するのはバイオテクノロジー企業であるが、同組織の独立性を保つことを約束している。
遺伝子組換え(GM)農作物問題に関連して、環境保護団体などのグループの中には純粋に問題提起をする団体があるものの、独断的見解を持った反GMグループが、バイオテクノロジー業界を標的に激しい宣伝運動を繰り広げている面があることも否定できない。このような状況のなか、より均衡の取れた論議が展開されるよう、英国で同業界がクロップジェン(CropGen)を発足させた。
クロップジェンは、農業および植物学、細菌学、エコロジー、消費者問題といった各分野の学者など専門家が委員を務める小委員会からなり、人体や環境への影響、利点とリスクの評価方法など、GM作物を巡る議論の焦点となる問題に関して、偏りのない見解を示すことがその役割である。
9.英国、991029、GM作物を3年間栽培禁止
英国政府は、遺伝子組換え(GM)作物の商業的栽培を一定期間停止した後、栽培を認めるとの計画を撤回した模様である。代わりに、自主的に3年の間一時停止するとの取り決めをバイオテクノロジー業界と結んだことが、間もなくマイケル・ミーチャー環境相から発表されるものと思われる。これは、現在実施中の農場規模の試験が終る2002年までGM作物の商業的植え付けが行われないことを意味する。
有機栽培を進めている土壌協会(Soil Association)も「政策の転換」であるとして、これを歓迎した。しかし、今回の決定に対しては、歓迎する声ばかりではない。環境保護団体グリーンピースのスポークスマンは「政府が世論を味方につけるための、単なる政治的な現状維持策である。」との見方を述べた。
10.英国、991013、GMO食品の表示規則の改正案
本年10月、EU委員会は、遺伝子組換え食品の表示ルールを定めた「EU理事会規則1139/98」の改正案と、これまでこうした表示の適用除外としてきた食品添加物等についての表示ルール案を各国に提案した。主なねらいは、これまで検討課題とされてきた検出下限値の水準を1%に設定することであるが、もう一つの検討課題であるネガティブリストの作成は先送りとされており、流通現場での円滑な表示ルールの浸透に向け、こうした課題を早急に検討することが求められている。
11.英国、990514、避けられぬ作物の花粉飛散
遺伝子組換え(GM)作物の花粉が非常に広範囲に飛散する可能性があるとする専門家の報告書の内容が事前に漏れたため、英国政府は苦しい対応を迫られている。同報告書は、GM作物の花粉飛散の影響を低レベルに抑えることは難しいと思われると結論付けた上で、許容範囲を決めることを提案する内容となっている。
これは、英国政府がジョン・インズ研究センターに委託してまとめた報告書「有機農業と遺伝子組換え作物の遺伝子の移転(Organic Farming and Gene Transfer from Genetically Modified Crops)」で、内閣で対応を決めた後、5月末か6月初めに公表される予定であった。
12.英国、990219、広がるGMをめぐる論争
1) GM作物の裁培場所の広さを小規模な試験区から農場と同じ規模にまで拡大した時に、環境にどのような影響を及ぼすのかをモニターする試験を3年間行なう。10〜20エーカーの広さの試験区に3種類のGM作物(春まきナタネ、飼料用トウモロコシ、冬まきナタネ)を同じ種類の非GM作物と一緒に栽培する。植付けは今春に開始される予定である(冬まきナタネは今秋)。耕種作物の裁培では、コンバインから落ちたり、畑から畜舎に運ぶ間に種子をこぼしたりなどのロスは避けられない。このため、試験の対象となる作物だけでなく、後作物が雑草の個体数と野生生物に与える影響についてもモニターする。また、統計学的に有効なサンプル数を確保できるだけの作物を裁培する予定である。
同試験の運営にあたるのは、環境・運輸・地域問題省(DETR)、全国環境問題研究審議会(National Environmental Research Council - NERC)、遺伝子組換え農作物供給チェーン・イニシアティブ(Supply Chain Initiative on Modified Agricultural Crops - SCIMAC)である。作物裁培関連の費用は業界を代表してSCIMSCが、環境モニタリング計画の費用はDETRがそれぞれ負担する。
輪作をした場合に、除草剤に耐性のある品種(従来の手法で品種改良されたものとGM品種両方)が及ぼす影響を評価する試験を行なう。初めに冬まきナタネを栽培し(これはすでに植え付けられている)、次に従来の品種の小麦を2回栽培して、どのような持続的な影響が出るのかを評価する。「最悪の」シナリオを想定するために、除草剤に耐性のある品種を4年目に再び植え付ける可能性もある。
この試験は農漁業食料省(MAFF)が費用を負担し、同省が全国農業用植物研究所(National Institute of Agricultural Botany - NIAB)およびスコットランド農業大学(SAC)と共同で実施している。
2)今年行われる試験で何の問題も起こらなければ、極めて厳しい管理下での低レベルの商業用栽培が来年春に許可される見込みである。この際、種子の入手には規制が設けられ、栽培にも厳しい指針の遵守とモニタリングが義務づけられる。
同試験で環境関連をはじめとする問題が浮上した場合には、こうした許可に向けた動きは一時停止することが考えられる。しかし、その後の試験で問題がなかった場合、より一層限定された形ではあるが商業用栽培が2001年に認められる。また、一連の試験でよい結果が得られれば、すでに承認されているGM作物が2003年に一般的に入手できるようになる可能性がある。これが、マイケル・ミーチャー(Michael Meacher)環境相が明らかにした商業用栽培に向けてのスケジュールであるが、全体的に1年遅れになる可能性もある。
13.英国、981223、GM作物のさらなる研究の必要性
除草剤耐性の遺伝子組換え(GMHT)作物は、除草作業を簡単にするといった利点がある反面、作物の多様性あるいは野生生物にどのような影響を与えるのかについてまだ十分に解明できていない。英国の農漁業食料省が今週発表した科学調査報告書* により、このような事実が明らかになった。
GMHT作物を植え付けると、出芽してから除草剤を散布すればよいため、生産者にとっては作業が楽になる。同報告書は、この作物の採用にともなう除草効果は従来の作物に比べて、一年生雑草に対しては若干高く、一部の多年生雑草の場合にはかなり高いとしている。
しかしながら、問題点も指摘されている。同報告書によると、耕種作物の多様性に与える影響がほとんど解っておらず、また、GMHT作物の採用により野生生物に与える影響(マイナスあるいはプラスの双方)を正確に予測できるような専門的研究もほとんど実施されていないとのことである。
GMHT作物が生物多様性に与えるプラス効果(例えば除草効果の向上による)についての研究が開始された。英国ではGMHT作物を段階的に、モニターをしながら導入していくことが提案されている。
* GM作物に除草剤を使用した場合の効果に関する科学的研究(Scientific review of the impact of herbicide use on GM crops)
14.英国、980717、GM作物の試験栽培を容認
自分の農場に近接した畑において遺伝子組換え(GM)トウモロコシの試験栽培を実施することを認めた政府の決定を不服として、有機生産者が司法審査を申し立てていたが、裁判所はこれを却下した。
訴えを起こしていたのはイングランドの南西部に位置するデボンにおいて大規模な有機農場を経営するガイ・ワトソン氏である。ワトソン氏がこのような行動に踏み切った背景には、GMトウモロコシとの他家受粉により自分の農場のスウィートコーンに遺伝子組換え生物(GMO)が混入することへの危惧がある。実際に他家受粉が起これば、有機栽培者としての資格が取り消される可能性は極めて高い。同氏は、このようなGM品種の試験栽培は、混入汚染の危険性を防ぐことを怠っており、法律に違反すると主張していた。
しかしながら、7月初旬、マイケル・ミーチャー(Meacher)環境局長は試験栽培の継続を認めるという内容の結論を明らかにした。これは、「GMトウモロコシと有機栽培のトウモロコシは距離的にかなり離れており、他家受粉の危険性はない。」という自然環境投入に関する諮問委員会(Advisory Committee on Releases to the Environment - ACRE/構成メンバーは科学者)の答申を踏まえての判断である。
ACREは、GM作物と有機作物の耕作地点が200メートル離れているという前提のもと、他家受粉する確率は4万分の1未満(穀粒ベースで)であり、これは「種子の純度として国際的に認知されている基準値すべてをはるかに下回っている。」との結論を下した。
その上、この200メートルは国際標準値であり、実際には、スウィートコーンの栽培場所は一番近いところでもGMトウモロコシから2キロメートルも離れており、これだけの距離があれば、他家受粉の危険性は「ゼロに等しい」とACREでは見ている。
ミーチャー環境局長の示した判断を批判する声もある。環境保護団体「大地の友」のロビン・メイナード氏は、「今回の政府の結論は、遺伝子組換え技術を厳しく取り締まるとしてきた政府の従来の姿勢と矛盾している。」と指摘し、政府は「この巨大な産業」を統制する力を持っていないとの見方を示した。一方、ワトソン氏側は、中立的立場を守るという義務を怠ったとしてACREを非難している。
このような情勢のなか、現在、GM作物が生物多様性に及ぼす影響を再検討したり、有機農家の意見を聞いて彼らが抱くもとっともな危惧を吸い上げるなどして、GM問題に取組んでいることを環境局は明らかにした。
さらに、GM作物の植え付けにより有機農業の発展に支障が生じることのないよう、同局と農漁業食糧省が農業関係者らやオーガニック・スタンダーズ(有機栽培標準)の代表者らと共同で対応にあたる方針も表明している。
15.英国、980508、GM作物の風媒がもたらす問題
近隣の畑で遺伝子組換え(GM)トウモロコシが試験的に裁培され、他家受粉の危険性があることから、イギリス最大の有機野菜栽培農家が存亡の危機に立たされている。
南西部のトトネス(Totnes)近郊に800エーカー(324ヘクタール)の有機農場を所有するガイ・ワトソン氏が、GMトウモロコシの植え付けをアドヴェンタ・ホールディングスUK(Adventa Holdings UK)に取り止めさせるよう高等裁判所に訴えを起こしたとガーディアン紙は報じている。問題となっている場所は国内でGM作物の裁培が許可されている320ヶ所のうちのひとつである。
有機栽培者の認証を行っている土壌協会(Soil Association)のフランシス・ブレイク氏は、「トウモロコシは風媒で受粉するため、遺伝子組換え生物に汚染される可能性がある。トウモロコシの場合、食べるのはその実であることから、有機野菜と認めることはできない。ワトソン氏の有機作物用ラベルの使用許可を取り消さざるを得ないであろう。」との見解を明らかにしている。
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