1.フランス、981218、GMトウモロコシをめぐる議論
フランスの最高裁判所は、遺伝子組換えトウモロコシの国内使用禁止措置の是非について欧州裁判所に委託することを決めた。この決定により、同製品に対する最終的な許可作業がさらに遅れる可能性もある。GMO問題の関連では、ポルトガルとベルギー、ギリシャの3カ国が現在、欧州委員会により提訴されている。
今回の同最高裁判所の決定に、大地の友は「予防措置的原理の勝利」であるとして歓迎の意を表明した。EUの規則により、ECJの評決が明らかになるまで、苦情調査官は具体的な決定を下すことができない。
欧州委員会は今週、期限日までに遺伝子組換え生物(GMO)に関するEU指令に基づき国内法を整備することを怠ったとして、ポルトガルをECJに提訴した。今回ポルトガルが遵守を怠ったとされているEUの規定は、「GMOの制限的使用(例えば研究所において)」と「GMOを自然環境に放出する際には慎重に行う」である。
これに加え、ベルギーとギリシャも、技術的進歩に合わせてEUの主要な指令のひとつを改変するという国内法を採用し、これを欧州委員会に報告しなかったとしてECJに提訴されている。
2.フランス、981002、フランスがGM作物の認可を延期
フランス政府はGMトウモロコシの裁培に対する承認を見合わせることを決めた。これは、同産品の許可に反対する環境保護団体が提訴をしており、その判決を待つための措置である。同じGMトウモロコシにはオーストリアとルクセンブルグがすでに国内禁止措置を取っており、今後の欧州委員会の出方が注目される。
欧州委員会は今回のフランスの暫定的禁止措置による直接的な影響が少ないことを強調しようと懸命である。同委員会のスポークスマンは、「フランスの禁止措置の対象が裁培だけであれば、貿易に影響はない。」との見方を示している。しかしながら、今回のフランス政府の決定が、GM作物の新規承認手続きの矛盾を浮き彫りにしたことは間違いない。承認手続きは現在、まず国ごとに裁培許可対象品種のリストに登録してから、次に対象となるGM製品を実際に自然環境で栽培する時点においてEU法(指令90/220)に照らし認可を得るという2段階方式になっている。
フランスの農業省は、「特に、“アンピシリンに強い遺伝子の伝播といった面でも、GM種子には危険性がない”という科学的見解には疑問が投げかけられることが少なくない。」との見解を示している。同政府はすでにGMナタネ製品に関しては、同委員会の勧告に従い裁培するまでに、2年間の猶予期間を置くことを決めている。
3.フランス、980703、議会がGMOを条件付で承認
フランス議会はGM作物に関する報告書を発表した。内容は、公開討論会のパネラーらがまとめた報告書と大筋で一致しており、条件付きながらGMOに承認を与えたことになる。フランス政府はこの2つの報告書を踏まえ、GMO問題に関する姿勢を決める方針であることから、米国産GM作物の輸入が認められる公算が強まっている。
議会がまとめた報告書は、その他のGMOトウモロコシ3品種(アグレボ社、ノバルティス社、モンサント社製)については、詳細な観察および管理強化を義務づけたうえであれば、販売が認められるとしている。報告書が特に強く提言しているのは、ノバルティス社のトウモロコシを特定の農地において栽培し、近隣の作物にどのような影響を与えるのかを徹底的に観察する必要があるという点である。
試験期間中にノバルティス社のBtトウモロコシに新たな危険性が少しでも認められた場合、「特に、GM(遺伝子組換え)作物から動物やヒトの体に抗生物質抵抗性を持つ遺伝子が転移する恐れがある時には、承認を取り消すべきである」と報告書は警鐘を鳴らしている。
プラント・ジェネティック・システムズ社の除草剤に強い油糧種子について、報告書では、2年間(2000年まで)播種を禁止することが求められている。しかしながら、輸入は認めるべきであるとされている。暫定的な禁止措置が提言された背景には、このGM油糧種子が抗生物質に強い遺伝子を持つことがある。その一方で、除草剤抵抗性を持つ遺伝子がどのように広まっていくのかを調べるため、試験的に5,000ヘクタールを限度として植え付けを行なう必要も述べられている。
ノバルティス社のトウモロコシに対する認可の遅れが引き金となり、米国との間で新たな貿易紛争が巻き起こっている。米国では今年のGMトウモロコシの作付け面積が全体の4分の1を占める状況にある。米国政府は、早急にGMトウモロコシの認可が受けられない場合には、報復的措置を講じると警告を発している。
4.フランス、980626、GMOに関する公開討論会の開催
GMOの安全性を問う国内公開討論会が開かれた。同会議ではGM製品が人体に危険を及ぼすことはないとの結論が出された一方、パネラーは今後も危険性について調査研究を進めるべきであると提言している。ラベル表示に関しては、その必要性が強調されると同時に、現行のEU法の不備が指摘された。
フランス政府が公開討論会の実施を計画した背景には、世論を正確に把握するという狙いがある。このため、GMO問題に関する姿勢を事前に明確に打ち出すことを同政府は避けてきた。議会でもこの問題について審議が行われており、報告書が6月30日に提出されることになっている。このような状況のなか、自分たちを代表するパネラーがどのような結論を出すのかが、消費者団体や科学者、業界の専門家らの注目を集めていた。
パネラーがまとめた報告書には、GM技術において「危険性がゼロ」ということはあり得ず、いわば「GMOの黎明期」にあたる現在の時点で、抗生物質抵抗性を持つ標識遺伝子を使用することは禁止すべきであるとの提言が盛り込まれている。
公開討論会においては、従来の品種と比べた場合のGMO作物の利点が数多く挙げられた。投入コストの節減を図ることができるという点もそのうちのひとつである。その一方で、これら技術がどの段階において、第三世界が抱える農業問題に対処できるようになるのかについては、疑問が投げかけられた。
GMトウモロコシの問題に関して、花粉や種子から組み換えられた遺伝子が広まる危険性があり、環境に悪影響を及ぼす恐れはないものの、抗生物質抵抗性を持つ標識遺伝子が人体に影響を与える可能性があるとパネラーらは警告している。
このような側面を考慮して、同報告書は、具体的にどのような危険性があるのかを把握するための研究調査を実施するよう促したうえで、科学的調査研究は公的な研究所で行うべきであるとしている。その理由としては、「民間機関に委託した場合、多国籍企業からの影響が懸念されることなどから、独立性を保つためには公的
な期間で緩急を行うことがベストであると思われる。」という見解が挙げられている。
5.フランス、980605、農家はGM作物に対し消極的
フランスのトウモロコシ生産者の団体AGPMは、今年の国内における遺伝子組換え(GM)トウモロコシの作付け面積の予測を1,000ヘクタール未満に下方修正した。昨年11月にフランス政府が、ノバルティス社が開発したGMトウモロコシの裁培を許可する発表をした時点では、AGPMは1万5,000ヘクタール(トウモロコシの総作付け面積は300万ヘクタール)に達する可能性があるとの見方を示していた。
その後、AGPMはこの数字を1,000〜3,000ヘクタールに下方修正した。その根拠としては、播種許可が実際に下りたのが2月で時期的に少し遅すぎたことと、EUとフランスとの間で問題になっているラベル表示規定の行方が依然として不透明なため農家がGMトウモロコシの裁培に消極的になっていることが挙げられる。
一方、環境団体と消費者団体は連繋して、フランス政府に許可の撤回を強く迫っている。これに対して農務省は、6月20日〜21日に開催されるGM問題についての公開討論会の結論を踏まえて、GMトウモロコシに関する決定を下すとの意向を示している。
6.フランス、971128、遺伝子組換え(GMO)トウモロコシの裁培を許可
フランス政府は97年11月27日、ノバルティス社のBtトウモロコシの裁培を許可した。これは、EU域内で最初のGMO作物の栽培許可である。保守党の前政権は、Btトウモロコシとその製品の販売のみ認可していたが、今回、社会党現政権が栽培を許可した背景には、EU域外から輸入が認められている作物の裁培がEU域内で認めらないことは、市場での競争に不利であるとする農家側の抗議があったためと考えられる。
その一方フランス政府は、GMOテンサイとGMOナタネの販売については、まず両製品を科学的に調査した上で、環境に悪影響を及ぼす可能性がないことを確認する必要があるとして、許可しなかった。
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