アルゼンチン
1.アルゼンチン、010501、トウモロコシの輸出動向
米国農務省(USDA)のアナリストによれば、アルゼンチン産トウモロコシの輸出量が増加する見込みである。アナリストは、米国産遺伝子組換えトウモロコシの需要減退がアルゼンチンの利益につながるとみている。それに加えて、米国産遺伝子組換えトウモロコシは価格が他に比べて高いため、日本や韓国などからの需要が減少すると思われる。アルゼンチン産トウモロコシの今年の日本向け輸出量はかなり伸びているとアナリストは指摘している。対日輸出量は、現時点で推定15万トンであり、このままいくと今年の輸出総量は、昨年同期の30万トンに対し65万トンになるとみられる。
またアナリストは、アルゼンチン産トウモロコシの輸出量増加の背景には、同国産トウモロコシの高い価格競争力、米国産トウモロコシの需要減退に加えて、米国産トウモロコシの安全性に対する懸念があるとみている。アナリストによると、アジアの二大トウモロコシ輸入国である韓国と日本は最近、他の市場にトウモロコシを求め始めている。その理由は、米国が開発した遺伝子組換えトウモロコシ「スターリンク」は消費者の健康に害を及ぼす恐れがあるとされるためである。アルゼンチン国内ではスターリンクの使用が許可されていないことが追い風となり、今年はアルゼンチン産トウモロコシのアジア向け輸出量が増え続けると専門家はみている。
2.アルゼンチン、010301、GMOに関するEUの新法制度
欧州連合(EU)が最近、GM作物に関する新法制度案を可決し、この認可を再開することを決めた。アナリストの報告書から、アルゼンチン政府は、このようなEUの認可手続きが再開されてから、GM種子の生産を再び認める方針であったことがわかった。このため、2年間停止されてきたGM種子の生産を、アルゼンチン政府が認めるとの見方が強い。また、この報告書は、EUでの市場占有率を維持するため、アルゼンチン政府がGM種子の供給を認めなかったとしている。アルゼンチンは、EUからGM製品の輸出許可を得ていない。
市場アナリストらは、EUの新法制度導入は、消費者にとっても、生産者にとっても朗報であるとの見方を示している。これにともない、アルゼンチンはGM作物をEUに輸出できるようになるものと予想される。
アナリストの報告書から、EUはまだGM製品の認可手続きの再開を正式に決めていないものの、GM作物の輸入に関するEU規則は厳しくなることがわかった。
3.アルゼンチン、000301、遺伝子組換え大豆問題
アルゼンチンは、世界第3位の大豆生産国であり、1999/2000年度も栽培面積が830万ヘクタールに達するものと予想される。しかし、同国は現在、GM大豆の栽培を増加させたことにより、輸出先から非難を受けている。
アルゼンチンの農家がGM大豆を採用する理由としては、生産コストの低減(30%〜35%減)および害虫に強く、殺虫剤を使わなくてすむこと、単収の増加(15%〜20%増)などが挙げられる。また、単収の増加に加え、売値も1トン当たり140米ドルから190米ドルに上昇したため、農家の収入が増えている。しかし、アルゼンチンでは、大豆が闇市場で取引きされるケースが多いため、同国産大豆にGM製品が占める割合を把握することは難しい。
以上の理由で、アルゼンチンの農家の間でGM大豆の人気が高まっているが、購入業者はこれを歓迎していない。これは、米国や欧州などの食品メーカーが、たとえ値段が高くても非GM大豆を購入することを望んでいるためである。大豆製品の主な輸出先であるインドと中国、中南米では、消費者のGM食品問題に対する関心が薄いため、これは大きな問題ではない、とするアルゼンチン政府当局者もいる。
4.アルゼンチン、991101、違法種子のマーケット
大豆と小麦生産に違法種子が利用された割合は、全体の25〜30%にのぼるとみられている。違法な種子の使用は種子会社の知的財産権を侵害しており、さらに表示義務に違反し税法に抵触している。
農家が購入した違法種子は、当然ながら品質は保証されていないが、遺伝子組み換え大豆の1袋当たりの価格は、ブラックマーケットが22米ドルであるのに対し、通常の小売り価格は50米ドルであるため、違法種子のほうが魅力的な価格となっている。商品市況の低迷により収益が悪化した農家は、たとえ違法な種子を購入してでも、あらゆる方法でコストを削減する必要に迫られている。
ブラジル
5.ブラジル、010316、GMO作物を巡る最近の動向
世界有数の食糧大国でありながら、ブラジルでは遺伝子組換え農作物の商品化がまだ正式には承認されていない。同国の主要農産物である大豆は非遺伝子組換えのものであるがゆえに、特に欧州などでそのニーズが高まるなど他の大豆生産国に対する比較優位を保持している。しかし、一方で、遺伝子組換えに関する研究自体はブラジルに拠点を持つ多国籍企業や公的研究機関で着実に進められている。政府も、担当機関の責任範囲を拡大させるなど、将来、遺伝子組換え農作物が世界的に認められ、全世界の市場に解放されたケースを想定し、そうした状況に直ちに対応できるよう準備が進められている。
ブラジルにおける遺伝子組換え農作物の開発は、1.農薬耐性を持つ品種の開発、2.病害虫耐性を持つ品種の開発の2種類に分けられる。
モンサント社は、98年に同社が開発したRoundup Ready大豆で国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)から商品化に関する唯一の技術的許可を得ている。同製品は、現在、消費者協会が起こした訴訟により、商品化のための最終的な政府による認可はまだ出されていない状況にある。
一方、病害虫耐性を持つ品種の開発は、EMBRAPA(ブラジル農牧公社)や大学の研究機関などによって進められている。この品種は、農薬耐性品種が遺伝子の一部を解毒のために改良するのとは反対に、植物自身で害虫の消化器を破壊するBt遺伝子が組み込まれている。ブラジルでは耐病性パパイアなどについて開発が進められている。
6.ブラジル、001114、遺伝子組換え農作物をめぐる戦略
ブラジルでは遺伝子組換え農作物の流通および商業向け生産は禁止されている。しかしながら、食料生産国としての潜在能力を最大限活用するため、遺伝子組換え農作物の研究は積極的に進められている。一方、非遺伝子組換え農作物への市場ニーズを重視した動きもあり、生産者は分化する傾向にある。
ブラジル農牧公社(EMBRAPA)ではパパイア輪点ウイルスに対して抵抗力をもつ遺伝子組換えパパイアの研究が特に進んでおり、政府による許可が出た場合には、2003年にもこれらの商品化が可能になるところまできている。
大豆加工メーカーのIMCOPA社は、パラナ州で収穫された大豆を使用して大豆油を生産している。同州は連邦政府の遺伝子組換え農作物に対する法令を遵守し、流通、商業目的の生産を厳しく取り締まってはいるが、アルゼンチンから入ったと見られる遺伝子組換え大豆の種子などが州内で見つかるなど、遺伝子組換え大豆種子の密輸による流入を完全には抑えられないでいる。
7.ブラジル、001011、遺伝子組換え農作物をめぐる課題
食料輸出国であるブラジルでは、国内の消費者保護に加えて非遺伝子組換え農産物のブランドイメージを守る意味でも、遺伝子組換え農作物に関する規制、監視を厳しく行っている。
しかしながら、増え続ける食料輸出需要に食料生産をさらに増加させるためにも遺伝子組換え関連の研究は着実に進んでいる。
ブラジルでは95年にバイオ技術安定法が施行され、遺伝子組換え作物を原料とする一切の製品の販売を禁止するとともに、国内のバイオテクノロジー安全技術に対して責任を負う国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)が創設された。遺伝子組換えに関する研究は、同委員会の発行するバイオ技術安全品質認定証(CQB)なしに行うことができないようになっている。
ブラジルの大豆は、基本的に非遺伝子組換え製品というふれこみで欧州などに輸出されている。欧州では米国産の大豆に替わってクリーンなイメージのブラジル産大豆の輸入が増加している。
しかし、特に南部の州でアルゼンチンなどから遺伝子組換え大豆やとうもろこし、小麦などが密かに流入しているといわれており、非遺伝子組換え製品というイメージを守る必要性のあることが州政府による厳しい取り締まりの背景にある。
8.ブラジル、000805、GM大豆生産が増加
ブラジルでは遺伝子組換え(GM)大豆の生産が禁じられているため、欧州市場向けの大豆輸出が増加しているが、ブラジル南部の大豆産地では密かにGM大豆の生産が広まっている。
米国とアルゼンチンで生産される大豆のそれぞれ54%、75%はGM大豆であるが、ブラジルでは商業規模によるGM大豆生産が禁止されているため、ブラジルの欧州向け大豆輸出は1995年の300万トンから99年には690万トンに増加した。一方、同期間に米国の欧州向け大豆輸出は860万トンから560万トン、アルゼンチンも190万トンから110万トンに減少している。そのため、欧州の消費者がGM大豆の受け入れに抵抗している間、ブラジルはGM大豆を作らない方が大豆輸出に有利であるとみている農業関係者もいる。
しかし、ブラジルの大豆王と呼ばれているブライロ・マグジ氏は「ブラジルはGM大豆を作らない国であるため、欧州向けの大豆輸出が増加したのは事実であるが、非GM大豆に対するプレミアムは欧州の輸入業者が手中にし、ブラジルの生産者には払われていない。非GM大豆とGM大豆の生産者価格が同じであれば、生産コストが安いGM大豆の方が非GM大豆より有利である。」と述べた。
9.ブラジル、000705、GMトウモロコシの輸入を承認
国家バイオ安全委員会(CTNBio)は6月30日、海外で生産・販売されている13種の遺伝子組換え(GM)トウモロコシの飼料向けの輸入に対し、農務省が許可を与えることを認める旨の意見書を同省に提出した。
穀物市場関係者によれば、ブラジルは3,570万トンと予測される国内需要を賄うため、約300万トンのトウモロコシを輸入する必要があるということである。すでに本年1〜4月には68万トンを輸入しているが、その内55万4千トンはアルゼンチン産トウモロコシであり、今後とも、同国からのトウモロコシ輸入が増加するものと予想されていた。
しかし、環境団体であるグリンピースと消費者擁護団体(Idec)がアルゼンチン産輸入トウモロコシには遺伝子組換え(GM)トウモロコシが混入している疑いがあるとして、同国産トウモロコシを積んで入港した船からの荷揚げ差止めを連邦地方裁判所へ訴える事件が相次いだため、ブラジルの主要輸出産業の1つであるブロイラーの飼料不足が深刻な問題となった。
10.ブラジル、000605、輸入トウモロコシを差し押さえ
ブラジル農務省は、アルゼンチンから輸入したトウモロコシに遺伝子組換えトウモロコシが混入している疑いがあるとし、同トウモロコシから採集したサンプルを分析中である。遺伝子組換えトウモロコシの混入が判明した場合は、全ての積荷がアルゼンチンへ返送されることになる。
11.ブラジル、000505、遺伝子組換え農作物問題
昨年5月、モンサント社の遺伝子組換え大豆は人体及び生態系に悪影響を与えないとする評価を国家バイオ安全委員会(CTNbio)が下したことを受けて、農務省は同大豆の品種登録を受け付けたが、農務省による品種登録は同大豆の実質的な生産・販売に繋がり得るものであった。しかし、グリーンピースと消費者擁護協会(Idec)がブラジリアの第6連邦裁判所に対し、同大豆の生産・販売の差し止めを求める緊急提訴を行った結果、同裁判所は、同大豆の人体及び環境に対する安全性が確認されるまで商業的生産と販売を禁止すると共に、農務省、科学技術省及び保健省による同大豆に関するいかなる許可も禁じる仮判決を下した。そのため、モンサント社は同裁判所による仮判決を無効とする訴訟を起しており、現在、判決待ちの状況にある。
12.ブラジル、990520、GMO大豆の生産と販売を許可
農務省は、モンサント社が申請していた遺伝子組換え大豆の生産と販売の実質的な許可である品種登録を受け付けた。
13.ブラジル、990320、地域的にGMO作物の栽培禁止
ブラジルの国家バイオ安全委員会(CTNBio)は昨年9月、米系企業モンサントが申請していた遺伝子組換え大豆「ラウンドアップ・レディ」に対し、環境への影響及び食品としての安全性に問題は無いとする評価を下したものの、連邦政府は未だ同大豆の商業的栽培を許可していない。しかし、許可が下りるのは時間の問題とみられていたところ、突然、リオ・グランデ・ド・スール州のエルビノ・ガス州議員(労働党)が同州政府の全面的な支持を得て、2月26日、州内における遺伝子組換え植物の栽培を禁止する法案を州議会に提出した。エルビノ州議員は、「遺伝子組換え作物は生態系に大きな影響を与える危険性がある上、農業者は多国籍企業である種子会社の奴隷となってしまう。」と指摘した。
なお、同州議員が法案を州議会に提出した3日後の3月1日、同州農務局は州立農畜産研究所の研究員が無許可で試験栽培していた大豆「ラウンドアップ・レデイ」100本を焼却処分に付すとともに、中央部ジョイア市の農地改革による入植地で栽培されていた遺伝子組換え大豆の畑を1ヘクタールにわたり焼き払った。
14.ブラジル、981005、遺伝子組換え大豆の評価
国家バイオ安全委員会(CTNBio)は9月24日、米系企業モンサントが申請していた遺伝子組換え大豆(除草剤耐性大豆)に対し、環境への影響及び食品としての安全性に問題はないとする評価を下した。これによりブラジルにおける遺伝子組換え農産物の栽培に途が開けた。
15.ブラジル、980818、遺伝子組換え大豆の生産
ブラジルは5大大豆生産国の中で遺伝子組換え大豆を生産していない唯一の国であるが、遺伝子組換え農産物の安全性を評価・判定する「国家バイオ安全技術委員会(CTNBio)」は、本年中に同大豆の生産を許可する見通しである。
16.ブラジル、971020、遺伝子組換え大豆の輸入を許可
国家バイオ安全技術委員会は、ブラジル植物油工業協会(Abiove)が要請していた米国産遺伝子組換え大豆の輸入を許可したものの、その使用目的は搾油用のみに限定しており、作付用種子として使用することは依然として禁止している。
17.ブラジル、970920、遺伝子組換え大豆問題
ブラジル南部の大豆搾油工場は米国産大豆約200万トンを輸入手続中であるが、米国ではブラジルが輸入を禁止している遺伝子組換え大豆も生産されており、ブラジルが輸入する大豆に遺伝子組換え大豆が混入する可能性がある。
メキシコ
18.メキシコ、010505、GMO作物の動向
メキシコでは、北部のコアウイラ州、バッハカリフォルニア州において遺伝子組換え綿が栽培されている。また、政府の許可のもとに農業試験所における大豆やバナナの実験も行われている。トウモロコシについては、遺伝子組換え種が野生種に影響を及ぼす可能性があるため、実験、商業使用を目的とする遺伝子組換え種の栽培を禁止している。
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