Q&A
講演タイトル |
身近なセイヨウタンポポは実は日本のタンポポとの雑種だった! |
講演者 |
芝池博幸(農業環境技術研究所) |
Q1.
在来タンポポの雌しべにセイヨウタンポポの花粉がかかって雑種ができたということですが、その雑種はどのようにして増えていったのでしょうか。
A1.
ほとんどが無融合生殖といって、雑種そのものと全く同じコピー(クローン)の種子を次々に作って増えています。
  
Q2.
セイヨウタンポポと日本の在来タンポポでは、種子の発芽時期は違うのでしょうか。また、セイヨウタンポポは種子ができた直後から発芽できるのに対して、在来タンポポの種子は冬を越さないと発芽できないといわれていますが、雑種タンポポの種子はどのような発芽特性を持っているでしょうか。
A2.
現在解析中ですが、在来タンポポとセイヨウタンポポの発芽特性は異なっていますが、3倍体雑種の発芽特性はどちらかというと両者の中間的な性質となっているようです。4倍体雑種の種子の発芽特性は両者と全然異なっており、高温では発芽しにくく、かつ高温でも死なないという特徴があることが分かってきました。高温でも死なないという特徴が、例えばアスファルトが多い都市的な環境でも生存率が高く維持される要因になっているのではないかと考えています。
  
Q3.
青森県の弘前市や北海道の七飯や余市などの果樹園では、タンポポが群生しているところをよく見ます。どのような種類のタンポポになっているのでしょうか。外見上は、セイヨウタンポポのように大型で、外総苞片は大きくめくれています。
A3.
同じ果樹園といっても地方ごとに状況は異なっているようです。北東北や北海道は雑種タンポポが少ない地域で、そこで見られる外総苞片がめくれているタイプは、恐らくセイヨウタンポポだと考えられます。東北以南では、雑種タンポポが高頻度で現れることが多いようです。セイヨウタンポポは、実は東北以南では少ないようです。
  
Q4.
セイヨウタンポポと在来タンポポは、どちらが父親でどちらが母親になったかで倍数体のでき方に差は生じるのでしょうか。
A4.
私たちが解析している中では、雑種性タンポポは常に在来タンポポ(2倍体)が母親で、そこにセイヨウタンポポの花粉がかかってできるのが大半だと考えています。なぜかと言うと、セイヨウタンポポの花は早熟胚発生を行います。すなわち、開花する前に卵細胞が分裂を始めてしまうのです。その卵細胞が単為発生して種(クローン)を作ります。ですから、花が咲いたときには卵細胞の分裂が始まっているので、日本のタンポポから花粉が来ることはあっても、そのときには時すでに遅しで受精には至りません。そういう要因によって、一方向的に花粉が流れているように見えるのでしょう。
  
Q5.
赤実のタンポポというものを聞いたことがあります。3倍体雑種や4倍体雑種タンポポの種子の色はどんな色なのでしょうか。また、赤実のタンポポについて教えてください。
A5.
赤実のタンポポとセイヨウタンポポは、痩果というのですが種の色を見れば全然違います。赤実タンポポは確かに赤いです。今後は、赤実タンポポと在来タンポポが交雑する可能性もあるでしょうが、その結果できたF1の痩果の色が赤くないと、赤実タンポポの子供なのかどうか判定が難しくなるかもしれません。
  
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