■Q&A
講演タイトル |
わが国の植物が多様な場所は外国の植物の侵入をガードするか? |
講演者 |
池田浩明(農業環境技術研究所) |
Q1.
種数が多い(多様性が高い)ほど外来植物の侵入を阻止する場合もある一方で,耕作放棄地など攪乱が頻繁に起こる場所では必ずしも種数が多いほど外来植物の侵入を阻止するとは限らないとのことでしたが,後者の場合には放置しておくと在来植生はなくなってしまうのでしょうか。
A1.
外来植物が蔓延して在来植生が完全になくなるようなことは無いでしょう。ただ、絶滅危惧植物に分類されている在来植物の中には,撹乱に依存して生存しているものがかなり含まれています.一方で、多くの外来植物も撹乱された場所を好むので、絶滅危惧植物は排除されてしまう可能性があります。こういった点に注意が必要と言えるでしょう。
Q2.
外来植物が入ってくる場面で、既に在来植物がある場合と、全く植物が生えていない場面から始まる場合とでは、違いはあるのでしょうか。
A2.
ご指摘のとおり、外来植物が入ってくる場面でも,既に在来植物がある場合と、全く植物が生えていない場面から始まる場合とでは、違いがあります.ただ、例えば野生動物の採食によって維持されているような草地で在来植物と外来植物の関係を調査すると、在来植物が多いところほど外来植物も多いようです。侵入抵抗性仮説では在来植物の多いところでは外来植物は少ないという関係が見られるはずですが、実際にはそうとは限りません。こういった実験と理論の不一致には撹乱が効いているのかも知れません。
Q3.
在来植物であるクズと他の外来植物は,いずれも侵略的な植物と言えると思いますが,両者で多様性に及ぼす影響に違いはありますか。
A3.
種数を減らすという意味では、クズも他の外来植物も同じであると考えられます。ただ、どの植物種を減らすかという質的な側面で、かなり違いがあります。在来植物であるクズは日本に分布してきた歴史も長いので、クズと相性の良い在来植物もいるでしょう。しかし、外来植物の場合にはそれが期待できません。このように、質的な面は異なっているでしょう。
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