土壌表面における二酸化硫黄の吸着・酸化反応装置


[要約]
本装置は土壌と二酸化硫黄の吸着・酸化負荷のモデル反応装置であり、反応気体の濃度、流量、温度、相対湿度の調整が可能である。本装置を用いて二酸化硫黄 の暴露後、土壌の硫酸イオン生成量を測定し、大気濃度からの硫酸イオン負荷量を推算すると0.9〜2.8(g/m2・年)である。
農環研 環境資源部 土壌管理科 土壌コロイド研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]  環境保全
[対象]  
[分類]  研究

[背景・ねらい]
酸性降下物による土壌酸性化の将来予測には土壌へ負荷される酸性物質の負荷量を正確に見積もることが必要である。これまでの負荷量の予 測は湿性降下物の測定がほとんどで、気体状の二酸化硫黄が直接土壌へ負荷する量はほとんど実測されていない。そこで、二酸化硫黄が土壌表面で吸着・酸化さ れる量の予測をするために必要な反応装置を試作する。更に、試作装置を用いた測定値から二酸化硫黄が大気濃度で土壌へ暴露されたときの土壌表面での硫酸イ オン負荷量の推算を目指す。

[成果の内容・特徴]

  1. 本装置は二酸化硫黄の標準ガスボンベ、エアコンプレッサー、ガス流量計、空気調湿装置、ガス混合器、温度調節器、反応容器から成り、反応気体の種類、濃度、流量、温度、相対湿度が調整できる(図1)。
  2. 反応容器は試料の反応特性を解析するための反応効率の高い流通型と、実際の土壌表面での反応などの解析に使用する暴露型の反応容器を切り変えて使用する。
  3. 暴露型の反応容器内の4カ所に置いた純水に吸収される二酸化硫黄濃度偏差は±3%以内であり、暴露時間に比例した吸収量が一定である(図2)。
  4. 本装置を用い、合成ゼオライトと土壌を試料として、二酸化硫黄の暴露により生成する硫酸イオン量を測定した結果から
    (1)硫酸イオンの生成量は試料の比表面積と相関が低い。
    (2)相対湿度が高い方が硫酸イオン生成量は増加する。
    (3)吸着・酸化反応は試料の表層(1.4mm以内)で起こる。
    (4)土壌の全Fe含量と硫酸イオン生成量は正の相関、全Ca含量とは負の相関がある。
  5. 土壌種別の硫酸イオン生成量は30℃、相対湿度55%のとき黒ボク土>赤黄色土>灰色低地土>褐色低地土>褐色森林土の順である(図3)。大気濃度(10ppb)での各土壌への硫酸イオン負荷量を推算すると0.9〜2.8(g/m2・年)である。

[成果の活用面・留意点]
本装置は土壌の雰囲気(例えば窒素ガス、農薬ガス等)の制御に応用できる。また、容器に入る試料形態であれば、土壌以外にも植物体等の表面における気体と試料の反応にも汎用できる。

具体的データ


[その他]
研究課題名:土壌のPH緩衝機能の解明
予算区分 :経常、重点基礎(平成5年度)
研究期間 :平成6年度(平成3年〜6年)
発表論文等:ゼオライト・粘土鉱物上での二酸化硫黄の酸化反応、日土肥講要集、
      38、31(1992)
      土壌・粘土鉱物における二酸化硫黄の酸化、日土肥講要集、39、30
      (1993)
      土壌による二酸化硫黄の吸着・酸化反応に及ぼす温度、湿度の影響、
      日土肥講要集、40、27(1994)
      二酸化硫黄の吸着・酸化反応に及ぼす土壌種の影響、日土肥講要集、41
      (1995)
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