裸地斜面枠流出データへの掃流砂式の適用による土壌侵食予測
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[要約]
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裸地斜面枠流出データに基づく侵食予測式作成のために斜面流出曲線から土砂流出時間を推定し、そこにおける平均斜面流量と平均流出土砂強度に掃流砂式を適用し、さらに斜面勾配及び斜面流量から流出土砂強度を求める予測式を導いた。
農環研 環境資源部 土壌管理科 土壌保全研究室
農業工学研究所 地域資源工学部 水文水資源研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門] 環境保全
[対象]
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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侵食研究では斜面枠による流出観測がよく行われるが、流出土砂強度の連続測定が困難なために水理学的解析事例は少なく、USLEなど現行の侵食予測式が回
帰式に留まる基本要因となってきた。そこで実測困難な土砂流出強度に代わり、近似として流出曲線より土砂流出時間を推定し、そこにおける平均流出土砂強度
と平均斜面流量に掃流砂式を適用し、実測流出データに基づく侵食予測法の開発を目指した。
[成果の内容・特徴]
- 土砂流出の発生条件:土砂流出を伴う限界降雨強度は土壌の浸透能より小さい7.2mm/hr以上であり、限界斜面流量は0.2mm/hr以上であった。後者を用いて斜面流量曲線より土砂流出継続時間を推定し(図1)、それに相当する平均斜面流量(q)および平均流出土砂強度(qb)を求めた。
- 掃流砂式の適用:8基の斜面枠(土壌2種、傾斜角4段階)における合計64個の観測データから、斜面下端における斜面流の掃流力(τ)と流出土砂強度をそれぞれ無次元化し、べき乗関数式(kalinske表示) qb*=A・τb*B………(1)
の回帰係数(A, B)を求めた。相関係数は砂土で0.925、黒ボク土で0.762であった(図2)。
- 平均流出土砂強度式:(1)式の回帰係数並びに土壌と斜面の物理条件による各係数から、各土壌について平均流出土砂強度(qb)を斜面勾配(θ)および平均斜面流量(q)より予測する次式を導いた。
砂土:qb=1.755・sinθ1.477・q1.266………(2)
黒ボク土:qb=1.431・sinθ1.553・q1.331………(3)
これらは5度の斜面では実測値を若干上回る値を示したが全体的に実測値に良く一致し、特に7度以上のやや急な斜面で適合性が良かった(図3、図4)。
[成果の活用面・留意点]
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表面流出量から流出土砂量を予測することができる。とくに、明確な斜面流の発生するやや急傾斜の受食性土壌に適用性が高い。
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適用範囲は裸地斜面における水みち流を含む表面流による侵食過程である。
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砂土以外の土壌への掃流砂式の適用に際しては、土壌団粒の水飽和重を土粒子密度の代わりに用いる必要がある。

[その他]
研究課題名:地球環境変化が土壌侵食に及ぼす影響の解明
予算区分 :一般別枠(地球環境)
研究期間 :平成6年度(平成2年〜8年)
発表論文等:ライシメータ裸地斜面を用いた降雨流出と侵食に関する研究 農土論集、173、11-20
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