高速液クロ/ICP質量分析法を用いた植物中カドミウムの状態分析
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[要約]
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サイズ排除高速液体クロマトグラフィー/ICP質量分析法を用いて、カドミウム(Cd)ストレスを受けた植物中のCd-γECペプチド複合体の構造は、
(1)不均一であること、(2)コマツナとイネとでは異なること、(3)水耕液中のCd濃度により異なることを明らかにした。
農環研 資材動態部 肥料動態科 微量要素動態研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門] 肥料
[対象]
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
- 有害元素であるCdのストレスを受けた植物体内では、Cdと複合体をつくるγグルタミルシステイニル(γEC)ペプチドが生成されるこ
とが知られている。しかし、CdとγECペプチドの複合体の構造については不明の点が多い。そこで、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(高速液クロ)
/誘導結合プラズマ(ICP)質量分析法により、Cd-γECペプチド複合体の分子量分布を測定した。
[成果の内容・特徴]
- コマツナとイネをCd50μMを加えた水耕液で数日間栽培後、トリス-塩酸抽出液を調製した。抽出液を、サイズ排除カラムを装着した高速液クロ装置で分離し、紫外検出器の出口を直結したICP質量分析装置でCdを検出し、有機物と結合したCdのクロマトグラムを測定した(図1)。
- クロマトグラムには、保持時間11分前後(分子量約1万〜数千)にCd-γECペプチド複合体と考えられるピークが観測された。Cd-γECペプチド複合体のピークは、複数の幅広なピークからなり、またコマツナとイネとで保持時間が異なっていた(図2)。このことから、Cd-γECペプチド複合体の構造は不均一であること、およびコマツナとイネとでは複合体の構造が異なることが明らかとなった。
- コマツナでは水耕液中のCd濃度が大きくなると、Cd-γECペプチド複合体の生成量は増大した。また、水耕液中Cd濃度0.1〜50μMの範囲で、クロマトグラムの形状は相似ではなく、複合体の構造は水耕液中のCd濃度により異なることが明らかとなった(図3)。
[成果の活用面・留意点]
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植物のCdストレスへの対応機構解明の基礎的知見となる。
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高速液クロ/ICP質量分析法は、高感度な元素の状態分析法であることが確認されたので、Cd以外の元素の状態分析への適用も期待される。

[その他]
研究課題名:植物中の微量元素の存在状態と機能
予算区分 :経常
研究期間 :平成6年度(平成5年〜9年)
発表論文等:なし
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