農業生産過程におけるエネルギー消費およびCO2排出量の把握
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[要約]
- わが国の農業生産過程における石油製品および電力の消費に由来するCO2排出量の実態を解明した。
農環研 企画調整部 地球環境研究チーム
[部会名] 環境評価・管理
[専門] 環境保全
[対象]
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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近年、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの増加に伴う地球の温暖化が懸念され、この防止対策が求められている。そこで、農業生産過程におけるエネル
ギー消費に由来するCO2排出量の実態を解明し、農林業のもつ環境保全機能並びにクリーンエネルギーの利用技術を積極的に利用する環境保全型の農業技術の
確立に資する。
[成果の内容・特徴]
- わが国のエネルギー総消費量は、原油に換算して3.131億tで、このうち全石油製品は1.899億tであり、これらの農林業の消費量は0.068億tであった。
- 農林業における石油製品の消費は、灯油3,267千kl、軽油2,321千kl、A重油2,222千kl、B重油3千kl、C重油81
千klで、電力の消費は3,080百万kWhであり、これらのCO2排出量は、石油製品0.211億t、電力0.022億t、合計0.233億tと推定さ れた(表1)。
- 温度調節などにエネルギーを多用する温室及びハウスでは、年間10a当たり、重油2,014l灯油234l、ガソリン65l及び電力1,075kwhが消
費され、そのCO2排出量は、重油6.042t、灯油0.591t、ガソリン0.04t、電力0.755t、合計7.228tであった。
- 農機具の運転に伴うCO2排出量(kg/10a)は、米0.07t、小麦0.03t、裸麦0.042t、六条麦0.036t、
大豆0.075〜0.101t、ナタネ0.039〜0.049tと推定された。
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農機具(2.5t級)1台を生産するために、5,000lの石油が消費され、12.6tのCO2が排出されると推定された。
- 肥料、農薬、農業用フィルムなどの主な農業生産資材の製造時にもCO2が排出され、その量は約0.04億tと推定された。
- これらの推定値を用いて、わが国の農林業におけるエネルギー消費とCO2排出量の関係を明らかにした(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 農業におけるエネルギー消費及びCO2排出量の実態が判明した。
- 農業分野における温暖化防止方策の策定に活用される。
- 環境保全型農業の基礎となる。
- 農業分野におけるCO2排出量評価の第一段階として、今後の発展の基礎となる。

[その他]
研究課題名:農業関連分野の温室効果ガスアナリシス、対策技術探索、個別技術評価に関する研究
予算区分 :環境庁・地球環境[温暖化対策評価]
研究期間 :平成6年度(平成2年〜6年)
発表論文等:
- 農業生産におけるCO2発生制御の探索、システム農学会・農業情報利用研究会1992年度春季シンポジウム・一般講演要旨集、84-85(1992)
- 農業生産におけるCO2発生抑制技術の探索(2)、-「地球にやさしい農業」に関するアンケートから-、システム農学会・農業情報利用研究会1993年度春季シンポジウム・研究発表会要旨集、36-37(1993)
- 地球環境総合推進費平成5年度終了研究成果報告集、167-180(1994)
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