気球からの低空スペクトル画像計測による作物生育情報の面的評価


[要約]
係留気球から撮影した作物圃場の赤・青・緑・赤外の反射輝度デジタル画像に基づいて、バイオマスおよびクロロフィル濃度を推定する回帰モデルを得るとともに、これら植物生育パラメータの面的分布を高精細度で評価できることを示した。
農環研 環境管理部 計測情報科 生物情報計測研究室
[部会名] 環境評価・管理
[専門]  情報管理、栽培
[対象]  植物
[分類]  研究

[背景・ねらい]
作物や自然植生の生育状態の評価や管理を的確に行う上で、バイオマス、クロロフィル濃度、水ストレスなどの診断情報が重要となる。特に近年、圃場規模の拡 大や農業生態系の維持管理の観点から、圃場・小地域スケールでこれらの植物パラメータを面的に計測評価することが必要となっている。そのため、気球からの スペクトル画像計測に基づいて、圃場における作物生育情報の面的分布を高精細度で評価する手法を開発した。

[成果の内容・特徴]

  1. 係留気球に2台の一眼レフカメラとビデオカメラを搭載したシステムを用いて、上空約150mの高度から、無線操作により圃場の可視・赤外写真を同 期的に撮影し、これにより、赤(R)・青(B)・緑(G)・赤外(IR)の4つの広波長帯の反射輝度デジタル画像(500×1000画素、地上分解能約 2.5cm×2.5cm)を得た。航空機に比べ簡易かつ頻繁に低コストで高解像度の4バンド分光画像を取得できる。
  2. 4つのバンドの反射輝度値とダイズ個体群のバイオマス(生体重)およびクロロフィル濃度(葉緑素計値)との関係を解析した結果、R、 G、B、IR各バンドのバイオマスおよびクロロフィル濃度との単相関は、-0.949、-0.858、0.674、0.982および-0.752、 0.707、-0.733、0.754であった(図1)。バイオマスはIRとG、クロロフィル濃度はGとBのそれぞれ2バンド広波長帯の回帰式により推定できることがわかった(図2)。
  3. これらの、評価モデルと画素ごとの反射輝度値から、バイオマスおよびクロロフィル濃度の面的分布を高精細度で推定することができた。空中の任意の角度および高さからの表示も可能である(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 作物圃場のバイオマスおよびクロロフィル濃度の面的分布を一括評価することができる。航空機等による農耕地観測の基礎として有効。係留気球は機動性に限界 があるが、将来、圃場・小地域の生体・環境情報を低空から高精細度で評価する新リモートセンサシステム開発の基礎となる。
  2. データの規準化のためには、グレースケールの写し込みが必要。

具体的データ


[その他]
研究課題名:ラジオメトリによる作物生体情報のリアルタイム遠隔計測手法の開発
予算区分 :総合的開発[軽労化]
研究期間 :平成6年度(平成6年〜8年)
発表論文等:Estimating Spatial distribution of plant growth in a soybean 
      field based on remotely-sensed spectral imagery measured 
      with a balloon system. 日作紀64巻1号(1995)ほか
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