草地における温室効果微量ガスの排出係数
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[要約]
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草地や圃場に還元された家畜ふん尿からのメタン、亜酸化窒素のガスフラックスを測定した。これらのガスフラックスの実測から、ガス排出量を試算する基礎となる排出係数を算定した。
草地試験場 環境部 土壌肥料第1研究室
[部会名] 環境評価・管理
[専門] 土壌、肥料
[対象]
[分類] 行政
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[背景・ねらい]
- 1992年6月に我が国は、「気候変動に関する国際連合枠組み条約」(通称:地球温暖化防止条約)に調印した。この条約加盟国は、温室効果ガスの排出量を
目録別に計算し、国ごとの削減計画を定めることになっている。しかし我が国の草地においては亜酸化窒素(N2O)やメタン(CH4)の排出量は把握されて おらず、このため、大気中へのN2OおよびCH4の放出量の試算に使用できる排出係数(各排出源から年間を通じて排出されるガス量)の算定が急がれてい
る。
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[成果の内容・特徴]
- 草地試験場内の施肥草地、無施肥草地及び家畜ふん尿の土壌還元に伴い発生するN2O及びCH4ガスフラックスをクローズドチャンバー法により測定
した。年間を通じて草地ではN2O放出とCH4吸収が観察され、草地における面積当たりのN2O放出量、CH4吸収量と窒素肥料由来のN2O放出割合を算
出した。また、家畜ふん尿の圃場還元により、N2O及びCH4放出が観察された。これによりふん尿は草地においてN2O及びCH4両方の発生源であること
が示され、ふん尿に含まれる炭素及び窒素当たりのCH4放出率及びN2O放出率を算出した(表1)。
- 放牧牛から排泄されるふん尿に由来するN2O及びCH4排出係数は、関東地域における放牧期間中の牧草及び放牧牛の生育を加味したモデル出力値である排泄されるふん尿の量及び窒素成分量を基に算出した(表2)。
- N2O及びCH4排出量は排出係数に面積や家畜飼養頭数等の活動量を乗じて算出する(表3)。
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[成果の活用面・留意点]
- 大気中へ放出されるCH4とN2Oの量についての積算基礎資料となる排出係数を算定したので、温室効果微量ガスの草地における排出試算が可能になる
- 今後、他地域での測定データを加味し、より精密な排出係数にしていく必要がある。

[その他]
研究課題名:草地における温室効果微量ガス放出量の解明に関する研究
予算区分 :環境庁(地球環境)
研究期間 :平成6年度(平成2年〜6年)
発表論文等:なし
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