用排水路底泥における脱窒速度の測定と窒素浄化量の評価


[要約]
用排水路底泥の脱窒速度をアセチレン阻害法で測定した。流速が遅く、底泥表層が還元的な条件で脱窒速度が高かった。 硝酸態窒素濃度4〜6mgL-1の集落排水路の脱窒速度は、1日当たり0.57gNm-2と非常に高く、 流水中硝酸態窒素除去の約半分が脱窒であった。この地点での脱窒による窒素浄化量は、流長100m分の底泥で硝酸態窒素負荷量の約2.3%に相当した。
農業環境技術研究所 環境資源部 水質管理科 水質保全研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]   環境保全
[対象]
[分類]   研究

[背景・ねらい]
用排水路などの農業水域は、高い硝酸態窒素除去能力を有するとされているが、用排水路で硝酸態窒素除去の主要因である脱窒速度を測定した例は少ない。 アセチレン阻害法により、現場に近い条件で用排水路底泥の脱窒速度を測定する方法を確立し、窒素浄化量を評価する。

[成果の内容・特徴]

  1. 現場に近い条件で脱窒速度を測定するために、用排水路底泥(つくば市内5ヶ所)の構造を乱さないように直径5cmのアクリル管に採取し、現場温度 で、表面水をアセチレンを溶解させた河川水と交換して2時間培養した。脱窒速度は、発生した亜酸化窒素量から求め、硝酸態窒素除去速度は、培養前後の硝酸 態窒素と亜硝酸態窒素の合計濃度の変化から求めた。
  2. 用排水路の脱窒速度は、灌漑期間(6〜8月)は流速が速く、底泥表面が洗われるため脱窒速度は低かった。しかし、非灌漑期間(9〜11月)には流速は遅くなり、 硝酸態窒素濃度も高まり脱窒速度は高くなった(図1、 2)。
  3. 底泥表層0〜1.5cmの間隙水中硝酸態窒素濃度が低いほど、硝酸態窒素濃度に対する脱窒速度が高かった(図3)。 間隙水中硝酸態窒素濃度が低いときは、底泥表層の還元が発達していると考えられた。
  4. 生活排水が流入し、硝酸態窒素濃度が4〜6mgL-1のA地点の脱窒速度は、6回の平均値で0.57gNm-2d-1と高かった。これは 硝酸態窒素除去速度1.01gNm-2d-1の56%であった。硝酸態窒素除去速度(Y;gNm-2d-1)は硝酸態窒素濃度(X;mgL-1)と、 Y=0.01Xの関係とされていたが、A地点での脱窒速度は、これの10倍、硝酸態窒素除去速度はこれの20倍であった。
  5. 流長100m分の底泥での窒素浄化量は、硝酸態窒素負荷量に対し、脱窒速度の大きいA地点で約2.3%に相当し、集落排水路は活発な窒素浄化の場であることが明らかとなった (表1)。
[成果の活用面・留意点]
 脱窒速度の高い地点での測定は、表面水中の硝酸態窒素が不足しないように表面水を多くする 必要がある。この研究成果は、用排水路の有する窒素浄化機能の定量的評価として活用できる。また、用排水路の窒素浄化機能を評価する場合には、硝酸態窒素 濃度だけでなく、底泥表層の還元状態の発達にも留意する必要がある。

具体的データ


[その他]

研究課題名:農林生態系利用による浅層地下水の水質浄化技術の開発に関する研究
                −農耕地生態系における水質浄化機能の評価−
予算区分  :環境庁  公害防止〔浅層地下水〕
研究期間  :平成7年度(平成3年〜7年)
発表論文等:

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