酸性土壌中における交換性アルミニウムの存在形態
- [要約]
-
高分解能27Al-NMRおよびICPを用いて,溶液中のアルミニウムを形態
別に定量する手法を開発した。酸性土壌から抽出される交換性アルミニウムをこの手法を用いて分析した結果,単量体アルミニウムあるいは2量体アルミニウム
が主であり,13量体アルミニウムやヒドロキシケイ酸アルミニウムイオンはほとんど存在していないことが明らかになった。
農業環境技術研究所 環境生物部 植生管理科 他感物質研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門] 土壌
[対象]
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 日本には酸性土壌が広く分布しているが,この土壌酸性の原因物質は交換性アルミニウム(交換性
Al)であり,植物の生育を著しく阻害することが知られている。一方,交換性Alに対する植物の感受性は多様であるため,土壌酸性と植生とは密接な関係が
ある。また,この交換性Alは他感物質の土壌中における動態にも影響を及ぼしていると考えられる。交換性Alの存在形態としては,一般的に考えられる単量
体あるいは2量体Al以外に,近年では植物に対して強い毒性を示す13量体アルミニウム(Al13)
が注目されている。また,ヒドロキシケイ酸アルミニウム(HAS)イオンは土壌粘土の層間から見いだされている。しかし,交換性Alがどの存在形態をとっ
ているのかは明らかになっていない。本研究では,Alを形態別に定量する手法を開発し,酸性土壌から抽出される交換性Alの存在形態について明らかにし
た。
[成果の内容・特徴]
- 土壌中における交換性Alの存在形態を,(1)Al13,(2)HASイオン,(3)単量体Alおよび2量体Alを含む比較的単純な構造を持った
Al(Almono)に分けて考えた。高分解能27Al−NMRにより,代表的なAlmonoであるヘキサアコアルミニウムイオン (図1)およびAl13 (図2) を高感度で定量可能であることが分かった。
- HASイオンはNMRでは検出できなかったもののICPでは検出できたので,NMRでの測定結果と合わせれば,3種類のAlを形態別に定量できることが明らかになった。
- 代表的な日本の酸性土壌の7断面(土壌pH:3.6-5.5)の各層位から交換性Alを抽出(土壌:1M-KCl=2:5)し,これを形態別に定量した結果,Al13は
全く検出されなかった。また,ICPにより測定される全Alの大部分は,NMRで観測されるAlmonoで説明可能であった (図3)。以上のように今回供試した酸性土壌においては, 土壌抽出液中の交換性AlはほとんどがAlmonoの形態で存在していることがわかった。
- [成果の活用面・留意点]
- その他の土壌や環境中などにおけるAlの存在形態や,Almonoの内容をさらに明らかにしていく必要がある。

[その他]
研究課題名:土壌中における活性アルミニウムの存在形態の解明
予算区分 :重点基礎 [NMR]
研究期間 :平成7年度
発表論文等:(1)合成ヒドロキシケイ酸アルミニウム水溶液および土壌抽出液の27Al-NMR
スペクトル,日本土壌肥料学会講演要旨集,第41集,1995。
(2)合成ヒドロキシケイ酸アルミニウム−モンモリロナイト複合体の特性−層間
に固定されるAlの27Al-NMRによるイオン種の同定−,日本土壌肥料学会講演
要旨集,第41集,1995。
(3)合成ヒドロキシケイ酸アルミニウム−モンモリロナイト複合体の特性−27Al
-NMRとICPによる層間に固定されるAlのイオン種の同定−,日本土壌肥料
学会講演要旨集,第42集,1996。
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