ジャガイモそうか病菌に対するカンゾウ(甘草)の含有する抗菌物質
- [要約]
- カンゾウは,ジャガイモそうか病菌に対する抗菌成分を葉と根に含有しており,その主要な成分はグラブリジン
(glabridin, 3−(2', 4'−dihydroxyphenyl)−8−dimethylpyrano−[8, 7−e ] chroman)であった。
農業環境技術研究所 環境資源部 土壌管理科 土壌有機物研究室
[部会名] 農業生態
[専門] 土壌肥料
[対象] ジャガイモ
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- ジャガイモそうか病は,放線菌ストレプトマイセス・スキャビーズ(Streptomyces scabies)
により引き起こされる。防除法としては,土壌pHを低くした栽培や土壌消毒,種いも消毒が行われているが有効な防除法は確立されていない。また,連作や農
薬・化学肥料の多用が土壌病害などによる生産力低下や環境汚染を引き起こしており,生態系と調和した低投入持続型の農業が求められている。この観点から,
農薬を減らしつつ土壌病害を防ぐ技術開発を目的として,ジャガイモそうか病菌の増殖を抑制する抗菌物質を含むもしくは分泌する植物を検索しその抗菌成分を
明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- ジャガイモそうか病菌の生育を阻害する植物として薬用植物カンゾウ(甘草,Glycyrrhizaglabra L. , 写真1)を見出した。カンゾウの抗菌成分は,葉および根に 存在した。
- カンゾウの抗菌成分を根より抽出し,主要な成分はグラブリジン(glabridin,3−(2', 4'−dihydroxyphenyl)−8−dimethylpyrano[8,7−e ] chroman, 乾物当たり0.12%含有)であることを明らかにした (図1)。
- グラブリジンの最小発育阻止濃度(MIC)は,25μg/mlであった (表1)。
[成果の活用面・留意点]
- ジャガイモ栽培においてジャガイモそうか病の発病の防除および被害の軽減を目的とした天然物の利用技術の開発に役立つ。
- カンゾウのすき込み,間作,混作,カンゾウを加えた作付体系の開発等環境保全型農法に利用できる可能性を見出した。
- カンゾウ成分のグラブリジンの土壌中での安定性は不明である。

[その他]
研究課題名:植物由来有機化合物の土壌生態系における機能の解明と制御
予算区分 :経常
研究期間 :平成7年度(平成3〜8年)
発表論文等:カンゾウに含まれるジャガイモそうか病菌に対する抗菌物質,農芸化学会講要
(1995)
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