陽性率とプロフィールインデックスに基づく植物病原細菌およびその近縁細菌の簡易同定法


[要約]
植物病原細菌とその近縁細菌を対象とする鑑別表を作成し,それを用いて行う簡易同定法を開発した。既知細菌を市販の細菌検査キット「アピ20NE」に移植 して2日または3日目に得られる結果を用いて,陽性率およびプロフィールインデックスを算出し,データベースを作成した。そのデータベースを基に,未知の 細菌を同キットで検査して得た結果をコンピュータ上で比較し,即座に同定結果を得る。
農業環境技術研究所  環境生物部  微生物管理科  微生物特性・分類研究室
[部会名] 農業生態
[専門]   作物病害
[対象]   微生物
[分類]   指導

[背景・ねらい]
 農作物の育つ環境には多種多様な細菌が生息しており,その中には作物の病気の原因になるものも含ま れている。植物病原細菌は病原性・伝染性・繁殖力において一般の細菌とは著しく異なる。病害の的確な予防・防除のためには病原体の迅速な同定が不可欠であ るが,植物病原細菌の場合には,大多数の菌種に適用できしかも種内の変異株にも対処できる,迅速な同定法はなかった。もとより,一部の細菌には,抗血清の 利用,DNAプローブ等による迅速な同定法が開発されているが,それらは特定の菌群にのみ有効で,他の菌群に属する場合には全く無力である。そこで,微生 物ジーンバンクに収集されている同定済みの細菌を用いて,一定の方法で調査した細菌学的性質をコンピュータ内に集積し,そのデータベースと同定しようとす る細菌から得られるデータとを比較すれば,種々の植物病原細菌が迅速に同定できると考えた。

[成果の内容・特徴]

  1. 細菌学的性質の調査には,結果の安定性,迅速性,製品の品質管理等を考慮して市販の細菌検査キット「アピ20NE」を採用し,26℃で3日間培養し, 2日目と3日目のデータを集積した。
  2. 細菌学的性質の調査結果は,菌種ごとに整理して陽性率を求めるとともに,プロフィールインデックス(21項目の細菌学的性質を7つの数字で表す 方法)を同じくする群にとりまとめ,その該当株率を算出した (表1, 表2)。
  3. 陽性率に基づく検索法は,菌種ごとにあらかじめ算出しておいた理論値に最も近い値を示す菌種が候補として検出されるように設定した。本法を 用いると,同定しようとする菌株がいずれの菌種に最も近いかが判定できる (表3)。
  4. プロフィールインデックスに基づく検索法は,同定しようとする菌株が示すプロフィールインデックスに一致する菌種が候補として検出されるように 設定した。本法を用いると,各菌種内でそのインデックスを示す菌株の多少が判定できる (表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 細菌は外観の似ているものが多いので,1標本から5株以上検査し,必要に応じて病原性の検査を並行することが望ましい。
  2. 検索用ソフトとデータベースは提供できるように検討中である。

具体的データ


[その他]

研究課題名:細菌の分類・同定とその手法の開発
予算区分 :経常
研究期間 :平成7年度
発表論文等:鑑別表に基づく植物病原細菌の簡易同定法(日植病報61:254, 1995講演要旨)。
      論文投稿中。

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