地球環境変化に伴う主要穀類等の生産地域変動予測


[要約]
現在の世界の主要穀類生産地(栽培適地)・栽培可能地を,衛星データ,土壌型,気象条件(積算気温,積算降水量)から推定し,2×CO2 時の 栽培適地・栽培可能地を予測した。
農業環境技術研究所 企画調整部 地球環境研究チーム
[部会名] 環境評価・管理
[専門]
[対象]
[分類]   研究

[背景・ねらい]
 近年,人間活動による大気の二酸化炭素濃度の上昇と,それに伴う地球の温暖化が農業生態系に対して悪影響を与えることが懸念されている。そのため,地球 温暖化が主要穀類の生育環境に及ぼす影響を明らかにし,主要穀類の栽培地域の変動を予測する必要がある。そこで,世界の主要穀類生産地を衛星データ,土壌 型,気象条件から推定する手法を開発した。この手法を用いて,気候変動シナリオに基づき,栽培適地・可能地域の変動を予測した。

[成果の内容・特徴]

  1. NOAA/GVI (Global Vegetation Index)データによる世界植生地図から抽出された農業地帯の候補のうち,栽培作物固有の温度要求量(北半球は6〜8月の, 南半球は12〜2月の積算気温・降水量)が代表的生産地と一致する地域を,現在の主要穀類栽培可能地域とした (図1 b)。このうち, 生産地を決定する上で制約条件となる土壌型が 代表的生産地と一致する地域を,現在の主産地(栽培適地)とした(図1 a)。
  2. 同様の手法により,Geophysical Fluids Dynamics Laboratoryの気候変動シナリオ(GFHI)を用いて,2×CO2時の栽培適地・可能地域を 予測した (図1 c, d)。その結果,北米,ロシア,中国,オーストラリア,南米の栽培地域が 変動することが予想された。
  3. 2×CO2時は現在より,栽培適地が50%減,栽培可能地は17%増になると予測された (図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本研究成果は,穀類の収量予測モデルと組み合わせることで,主要穀類の生産量およびその変動を予測することに利用できる。
  2. 本研究成果は,大規模な穀類栽培地域を対象としたものである。

具体的データ


[その他]

研究課題名:地球環境変化に伴う主要穀類等の生産量・生産地域変動予測技術の開発
予算区分 :一般別枠(地球環境)
研究期間 :平成7年度(平2〜8年度)
発表論文等:主要穀類等の生産地域変動予測,日本写真測量学会年次学術講演会発表論文集,
      155-158 (1995.5)

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