TDR水分計を用いた黒ボク土水分の長期計測と水分定数の現場測定
- [要約]
- TDR水分計は非破壊で通常の鉱質土壌の体積含水率を直接測定出るが,黒ボク土では実測値をもとに校正を行うことにより正確な測定が可能であった。また,
土層水分変動の長期計測から圃場容水量及び年平均土層水分量など,水管理,溶質移動評価に必要な水分定数が現場測定により得られた。
農業環境技術研究所・環境資源部・土壌物理研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門] 土壌
[対象]
[分類] 研究
- [背景・ねらい]
- 植物の水管理や溶質移動の予測には,土壌水分変動・収支ならびに圃場容水量など水分定数の定量化が不可欠である。TDR水分
計は,土壌の誘電率が体積含水率により変動することを利用して,高周波電磁波の反射により土壌の誘電率を測定する。TDR水分計は,多くの土壌で風乾から
飽和までの広い領域に渡り,センサーの長さに相当する土層内の平均体積含水率の計測が可能であることが確認されている。ここでは,TDR水分計の黒ボク土
への適用性を検討するとともに,現場土層の圃場容水量や年平均土層水分量の現場測定を試みた。
- [成果の内容・特徴]
- TDR水分計は本体から出た高周波電磁波がセンサーの先端で反射して戻ってくる時間が土壌の体積含水率の増加とともに遅くなることを利用している。
センサーには土壌中に挿入するタイプと,土壌中にあらかじめ埋め込むタイプとがある(図1)。
- TDR水分計の読みと直接採土による実測値は比例関係にあるが,黒ボク土では校正式を使う必要がある(図2)。
- 挿入型TDR水分計を用いることにより畑地深層(2m前後)までの水分計測が可能であり,(図3)の例では,年間の土壌水分変化が
180cm以深まで及ぶこと,また,火山灰層と下層段丘堆積物層における水分保持特性の差違等が明らかにされた。
- 深さ1mまでの土層における圃場容水量の実測例は少ないが,長さ1mの埋設型プローブを用いた多量降雨後翌日の土層中水分量の計測値(10回平均値)は,
黒ボク土畑では約640mmであった。
- また,土層0〜1mの年間平均水分含量は約600mmであり,溶質前線の年降下深の計算に根拠を与える数値が得られた。
- 総降水量が10mm以上,降雨強度が10mm/h以下の雨は土層全体に均一に浸潤し,雨量計雨量と土層水分増加量から求めたTDR推定雨量とが良く一致したことから,
TDR水分計が高精度水分計であることが確認された(図4)。
- [成果の活用面・留意点]
- 灌漑水量の決定や溶質成分の年間到達距離の推定に利用できる。
- 大きな礫を多く含む土壌では,センサーの埋設が難しい。
- 降雨が土壌全体に浸潤せず,亀裂等の一部の粗大孔隙を通して排水される土壌では,TDR水分計による水収支に誤差を生じる可能性がある。

[その他]
研究課題名:深層浸透に及ぼす自然的・人為的選択流れの実態解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成7〜11年)
発表論文等:TDR水分計による土壌水分の長期計測,
平成8年度農業土木学会大会講演要旨,208〜209(1996)
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