天然石灰質資材を利用した豚舎汚水からのリン除去技術


[要約]
海生生物由来の若い石灰質資材を充填したカラムに,高濃度のリンを含む豚舎2次処理水を通水させることにより,リン濃度8mgP/L程度,pH8.5以下 の直接放流可能な処理水が得られる。この方法のリン除去機作は吸着ではなく,炭酸塩からリン酸塩への塩の組換えであることから,目詰まりし難いこと,生成 塩が肥料価値の高い形態のリン酸塩であること,簡易な処理方式であること等の利点がある。
農業環境技術研究所 環境資源部 水質管理科 水質保全研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]  環境保全
[対象]
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 豚舎2次処理水を対象とし,処理生成物が少量でリン酸質資材として農地還元可能であり,かつ低コスト,維持管理の容易な天然石灰質資材を利用した リン除去技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 同一条件でのリン除去試験結果から,ホッキ貝殻,ホタテ貝殻,カキ殻,サンゴ砂,貝化石,ドロマイトの順にリン除去特性は良好であった。すなわち,素材としては 海生生物由来の若い石灰質資源が優れている(図1)。
  2. 処理系の物質収支の解析から,使用した天然石灰質資材のリン除去機作は、吸着でなく,炭酸塩からリン酸塩への直接的な塩の組換えであり,生成する塩は CaHPO4,Ca4H(PO4)3である(図3)。これらのリン酸塩は,石灰凝集法の, Ca2(OH)PO4,Ca3(PO4)2,晶析脱リン法のCa5(OH)(PO4)3よりも肥料価値が 高い(図2)。
  3. 本法では,炭酸塩の溶解反応とリン酸塩の生成反応が同時進行するため,体積変化が少なく目詰まりし難い。
  4. 本処理法では,原理的に流入水中のリン濃度にかかわらず,流出水中リン濃度は8mgP/L程度となる。また,流出液のpHは8.5以下であり,両者とも水質汚濁防止法に 基づく排出基準値を下回る。
  5. 素材破砕物の粒径の違いを除リン特性から比較し,素材間隙を通過する汚水量とカラム管壁を流下する汚水量との比率を大とすることが,除リン効率を改善するために 重要とみられた。特に日通水量大の場合にその効果が生じ易い()。
  6. 流入水中の重炭酸イオン濃度が一定値(2mmol/L)を越えると除リン能力が低下する。汚泥存在下での再曝気により,アンモニアの硝化が進み,pHが低下するので 炭酸濃度の減少に有効である(表省略)。
[成果の活用面・留意点]
 カラムのリン除去能力を最大限に発揮させるためには,前処理として有機物及びアンモニア態窒素を酸化させておくことが望ましい。

具体的データ


研究課題名:無機新素材を活用した排水中リンの回収技術の開発
予算区分 :総合的開発〔家畜排泄物〕
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:JARQ「Phosphorus Removal from Hoggery Sewage 
      with Natural Calcium Carbonate」(1996年9月投稿中)
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