木質炭化素材を用いた土壌中の農薬分解細菌の迅速集積法


[要約]
土壌環境中から農薬等難分解性有機化合物の分解細菌を集積・単離することを目的に,ある一定条件で炭化・加工した木質炭化素材を土壌中に混入し,分解対象農薬を唯一のC,N源とした水溶液を還流させることで農薬分解細菌を迅速・簡便に集積させる方法を開発した。
農業環境技術研究所 資材動態部 農薬動態科 除草剤動態研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]  環境保全
[対象]
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 近年,農薬の環境基準(水質、土壌残留)が強化されつつある。この様な社会情勢において,農業生産の系外に出る前に農薬を分解除去する技術の開発が強く望まれている。本研究は,農薬吸着能が高く微生物のマイクロハビタットになりうる木質炭化素材を用い,農薬分解細菌を土壌環境中から迅速かつ簡便に集積させる手法を開発すると共に,分解細菌が迅速に集積する木質炭化素材の物性を明らかにすることを目的とする。
[成果の内容・特徴]
  1. 木質素材の炭化条件と物性解析法(BET法,水銀圧入法)を検討し,その方法に基づいて木質炭化素材の物性を解析した(表1)。 木質炭化素材は畑土壌に比べ除草剤シマジン吸着力(Kf)が数十〜数千倍高かった(表2)。また,比表面積とKfの間には高い正の相関(R2=0.989)があった。
  2. 木質炭化素材を混入した畑地土壌において、還流2週後から還流液中のシマジン消失速度が増加し,それに伴い分解物であるCl-, NO3-濃度の増加が認められた(図1)。
  3. 供試した5種の炭化素材の中でAとA-1は還流1週間後からシマジン消失速度が増加し,それに伴いCl-濃度の増加が認められ,他の素材に比べ分解細菌を集積させる素材として優れていた(図2)。一方,市販の活性炭は還流4週目でもCl-濃度の増加は認められず,シマジン分解細菌が集積しにくい炭化素材であった(図2)。
  4. 分解細菌の集積が進んだ素材A,A-1の細菌数及び微生物バイオマスは,他の素材に比べ高かった。また,走査型電子顕微鏡により木質炭化素材の細孔内(5〜20μm)に細菌コロニーの存在が確認された(図3)。以上の結果から,土壌に比べ数十倍の農薬吸着力をもち、5〜20μm程度の細孔が全細孔容積に対して 10%以上である木質炭化素材を用いることにより,土壌中の農薬分解細菌を迅速・簡便に素材細孔内に集積させることが出来た。
[成果の活用面・留意点]
 農薬分解菌集積素材は,農薬による水質汚染防止を目的としたバイオレメディエ−ションのための素材として利用することができる。

具体的データ


[その他]
研究課題名:木質系素材を利用した農薬の吸着・生分解機構の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:特許申請中
目次へ戻る