あずき根粒組織中に含まれる新規ポリアミンの生成機構


[要 約]
 あずきの根粒組織中には,動植物や微生物に見出されることのない新規ポリアミン,アミノブチルカダベリンが含まれている。本ポリアミンは,宿主植物側か ら供給されるカダベリンとプトレシンを基質として,バクテロイド内部のホモスペルミジン合成酵素の働きによって生成する。
四国農業試験場 地域基盤研究部 資源利用研究室
[部会名] 農業生態
[専 門] 生理
[対 象] 豆類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 根粒菌は宿主のマメ科植物の根に感染すると根粒組織を形成し,自らバクテロイドに分化して植物との共生生活を営む。根粒組織内にはニ トロゲナーゼやレグヘモグロビン,ウリカーゼ等,マメ科植物の栄養生理に重要な役割を果たす物質群が含まれているが,細胞増殖因子として知られるポリアミ ンもその一つである。本研究の目的は,あずきの根粒組織に特異的に検出される新規ポリアミンの生成機構を明らかにすることにある。
[成果の内容・特徴]
  1. あずきの根粒組織には,根粒菌の増殖因子であり主要ポリアミンであるホモスペルミジン以外に,動植物や微生物の細胞に検出されない新規ポリアミン, アミノブチルカダベリンが含まれる(図1)。本ポリアミンは,人工的に培養した根粒菌やあずきの根,茎,葉等他の組織には 検出されず,根粒組織に特異的に存在する。
  2. 根粒組織を宿主細胞とバクテロイドに分画すると,ジアミンのプトレシン,カダベリンの多くが植物細胞側に存在するのに対し,ホモスペルミジン及び アミノブチルカダベリンは大半がバクテロイド内に分布する(表1)。
  3. あずき根粒から分離したバクテロイドの無細胞抽出液に,プトレシン及びカダベリンを添加すると,アミノブチルカダベリンが生成する (表2)。
  4. 培養根粒菌から精製したホモスペルミジン合成酵素に,NADの存在下,プトレシン及びカダベリンを添加すると,ホモスペルミジンとともに アミノブチルカダベリンが生産される。
    一連の実験結果から,あずき根粒内に含まれる新規ポリアミンが,図1に示すように,宿主植物側から供給されるカダベリンと プトレシンを基質として,バクテロイド内のホモスペルミジン合成酵素の働きによって生成することを明らかにした。
[成果の活用面・留意点]
 本ポリアミンは根粒内にμmol/gDry wt.レベルで存在するが,その機能・生理的役割については未知であり今後の検討を要する。また,カダベリンを 大量に含む場合,いんげん等あずき以外の根粒中に本ポリアミンが見出されることもある。

具体的データ


[その他]
研究課題名:土壌微生物におけるポリアミン代謝系発現機構
予算区分 :大型別枠(生物情報)
研究期間 :平成9年度(平成7〜9年)
発表論文等:A new polyamine 4-aminobutylcadaverine, J. Biol. Chem., 270, 9932〜9938 (1995)
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