家畜スラリー投与畑土壌におけるプロテアーゼ生産菌
- [要 約]
- 家畜スラリーを投与した飼料作畑土壌では土壌プロテアーゼ活性が高い。この土壌プロテアーゼは金属プロテアーゼであり,Serratia marcescens 等
のグラム陰性細菌が本酵素の主要な供給源である。
九州農業試験場 生産環境部 土壌微生物研究室
[部会名] 農業生態
[専 門] 土壌
[対 象]
[分 類] 研究
- [背景・ねらい]
- 家畜スラリーを過剰に投与した畑では,窒素溶脱等の環境問題を引き起こしており,有機態窒素代謝の制御が望まれる。家畜スラリーを多量投与し硝酸態窒素
の溶脱が著しい飼料作畑におけるプロテアーゼ生産菌を特定するとともに,特定した細菌のプロテアーゼをコードする遺伝子の選択的なDNAプライマーを用い
て,土壌から直接この遺伝子の検出と,菌数の推定を行う。
- [成果の内容・特徴]
- スラリー投与畑土壌の土壌プロテアーゼ活性は,水田や他の畑土壌と比べて著しく高いが,プロテアーゼ生産菌数に大きな差はない
(図1)。
- スラリー投与畑以外の土壌ではプロテアーゼ生産菌の殆どがグラム陽性のBacillus 属細菌であるが,スラリー投与畑土壌(12t/10a投与区,
60t/10a投与区)では,グラム陰性細菌の割合が高い(図2)。
- スラリー投与畑土壌のプロテアアーゼは,阻害剤に対する反応から,金属プロテアーゼであった(表1)。また分離したSerratia marcescens
(s131,s132)やグラム陰性細菌(m110)も菌体外に金属プロテアーゼを生産した(表1)。
- S. marcescens (s131,s132)及びグラム陰性細菌(m110)の金属プロテアーゼ遺伝子を選択的に増幅するDNAプライマー(SR5,SR10)を用いると,
スラリー投与畑土壌から直接抽出した全DNA画分の中から本遺伝子を検出することができ(図3),反応による検量線から推定した
細菌数はスラリー非投与畑土壌では4.2x104乾土以上,12tスラリー投与畑土壌では15.0x104,60tスラリー投与畑土壌では60.0x104/g乾土以上と推定された。
- [成果の活用面・留意点]
- 家畜スラリーを過剰に投与した土壌での窒素溶脱の制御技術の開発に寄与する。
- PCR法により検量線から算出した菌数は,DNAの抽出効率を省いており相対値である。

[その他]
研究課題名:バイオマス窒素の代謝関連微生物活性の動態
予算区分 :一般物枠(物質循環)
研究期間 :平成9年度(平成4〜10年)
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