土壌くん蒸用臭化メチルの大気への放出量の把握と削減対策


[要 約]
  土壌くん蒸に使用した臭化メチルの大気への放出割合は,従来の世界の評価は30〜85%であったが,精密に測定した結果より28〜53%と推定した。 この放出割合は,遮光することによりさらに約10%抑制できることが明らかになった。
農業環境技術研究所 資材動態部 農薬動態科 農薬管理研究室
[部会名] 環境評価・管理
[専 門] 薬剤
[対 象] 果菜類
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 オゾン層破壊物質に指定された臭化メチルの発生源には,天然起源と人為起源がある。人為起源のうち,土壌くん蒸からの臭化メチルの放出量評価には, 従来大きな不確実性を含んでいた。この放出量評価に大きなばらつきが発生する原因を明らかにし,より確実な放出量の評価を行う。さらに,日本で一般的に行われ ている臭化メチルの土壌表面施用法に有効な放出削減技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 世界で使用される土壌くん蒸用の臭化メチル(57千トン/年)のうち,30〜85%(17〜47千トン/年)が大気中に放出されると評価されてい た。多地点において, 時間分解能を増し,精密に放出速度の変動と環境要因を測定した結果に基づいて,これまでに報告された放出量に関するデータを再解析した結果,放出量は 28〜53%(16〜30千トン/年)であると推定した(表1)。
  2. 臭化メチルの大気への放出速度は,昼夜で大きく異なり最大で約13倍程度変動していた。放出速度は,気温が高く,日射量が大きくなるに従い大きく なった(図1)。
  3. 臭化メチルの大気への放出削減法には,機械化土壌注入法の場合,注入深度を現在(約25 cm)より深く(約60cm)する方法,またはバリアー性フィルムで 被覆するなどがある。しかし,深度注入には特殊な装置が必要であり,バリアー性フィル ムは,被覆資材の供給が限られている。実行可能な大気への放出量 抑制技術として,夕方または曇りの日に処理を行うこと,あるいは高密度ポリエチレン製遮光 シート(DuPont,Tyvek)で太陽光を遮ることが有効であった (図1,表2)。
[成果の活用面・留意点]
 土壌くん蒸からの臭化メチルの放出抑制は,早急に対応が求められており,この技術は即適応が可能である。大気中に存在する臭化メチルへの 土壌くん蒸の寄与については,さらに検証が必要である。

具体的データ


[その他]
研究課題名:農耕地で土壌くん蒸剤に使用される臭化メチルの大気中への放出量の推定と放出抑
      制技術の開発研究
予算区分 :環境庁・地球環境研究総合推進費,経常
研究期間 :平成9年度(平成8〜10年度)
発表論文等:Are the Emission Estimates of Methyl Bromide Fumigation Realistic? Environmental
      Science & Technology(投稿中)
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