クロルピクリンくん蒸剤のジャガイモ植付け同時処理によるジャガイモそうか病の防除


[要 約]
 ジャガイモそうか病は,低濃度のクロルピクリンくん蒸剤テ−プ状製剤を使い,ジャガイモの植付け時に同時処理後,ポリフィルムで被覆することで,慣行の1/10量(3L/10a)で効果的に防除できる。
[担当研究単位]長崎県総合農林試験場 愛野馬鈴薯支場 環境科
[部会名] 農業環境・農業生態,総合農業・生産環境,九州農業・生産環境
[専 門] 作物病害
[対 象] いも類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 省農薬環境保全型に立脚したジャガイモ生産方式を確立するため,種として休眠中のいもを使い,少量のクロルピクリン剤を植付け時に処理後,直ちにポリフィルムにより被覆することで,クロルピクリン剤処理の安全性の向上を図ると共に,現行春作マルチ体系へ即座に利用できるそうか病防除法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. クロルピクリン剤を効率的に少量処理するため,テ−プ状製剤(三井東圧農薬試作)を利用した。テ−プ状製剤は畦幅(60cm間隔)に合わせた利用を前提に,封入する薬量を調整し,低濃度のテ−プ状製剤を作製した。
  2. 処理方法は,低濃度のテ−プ状製剤をジャガイモの植え付け時に,種いもの植え条に従い上方または下方に埋設し,畦立て後ただちに被覆するものである(図1)。
  3. 同時処理により,ジャガイモの出芽・生育等への影響が少なく,かつ,そうか病防除効果の高いテ−プ状製剤の薬量を確定するため,1997年春作および秋作において予備試験を行った結果,最適量は常用処理量(30L/10a)の1/10量(3L/10a)であった。
  4. 休眠状態の種いもを使い,植付け時同時処理をした場合,1/10量区のそうか病防除効果,ジャガイモの出芽率および収量は,慣行クロルピクリン剤(液剤)区と同等に高い(図2)。
  5. マルチ区でのテ−プ状製剤の置床方法としては,種いもの上下いずれに処理しても防除効果に差はない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 1/10量のテ−プ状製剤処理では臭気をほとんど感じないため,都市周辺部のジャガイモ産地での利用が期待される。
  2. クロルピクリン剤のテ−プ状製剤では,離島部への輸送は通常貨物としての扱いが可能であるため,離島部でのそうか病対策として利用できる。
  3. 秋作栽培では,種いもは休眠を終えていること,ならびに植付け時(夏季から初秋)の高温により薬害が生じる恐れがあるため,春作栽培など気温の低い時の処理とする。
  4. 土壌環境条件により防除効果に差が生じることが考えられるため,土質等の異なる条件下での試験が必要である。
  5. 実用化に当たっては,1/10常用量クロルピクリンテ−プ状製剤の農薬登録が必要である。

具体的データ


[その他]
    研究課題名:暖地ばれいしょ主要病害・線虫の生態解明と抵抗性検定法の開発
    予算区分 :指定試験
    研究期間 :平成10年度(平成9〜10年)
    発表論文等:
       1)クロルピクリンくん蒸剤のジャガイモ植付時処理によるジャガイモそうか病の防除,日植病報,64 (1998)
目次へ戻る