耕起の有無による畑土壌のササラダニ類群集構造の差異
- [要 約]
- 畑土壌表層に生息するササラダニ類は不耕起栽培では有翼類が優占し,耕起栽培では無翼類が優占する。一方,土壌と有機物の種類がササラダニ類の群集構造に与える影響は比較的小さい。
[担当研究単位]東北農業試験場 畑地利用部 畑土壌管理研究室
[部会名] 農業環境・農業生態,東北農業・生産環境
[専 門] 土壌
[対 象]
[分 類] 研究
- [背景・ねらい]
- 土壌管理条件や土壌の種類は,そこに生息する土壌動物群集に影響し,有機物の分解や養分の有効化に影響を及ぼすと考えられる。また土壌動物の中では,ササラダニ類の種数と個体数が比較的多く,群集構造を調査しやすい。そこで,耕起の有無,土壌の種類(腐植質黒ボク土,灰色低地土,褐色森林土),有機物の種類(麦,ダイズの茎葉残渣,稲わら堆肥)及び施用方法(表面施用,鋤込み)が,土壌生息性ササラダニ類の群集構造に及ぼす影響を,処理6年目の圃場において1年間,隔月に6回調査した。
- [成果の内容・特徴]
- ササラダニ類の年間の平均個体数は,耕起栽培に比べ不耕起栽培で多い(図1)。
- ササラダニ類の種数は,耕起栽培に比べ不耕起栽培で多い。また各調査毎に出現した種を系統的な3群(下等からより高等へ,接門類・無翼類・有翼類)に分けたとき,不耕起栽培では有翼類の種数が多く,耕起栽培では無翼類の種数が多い(図2)。
- ササラダニ類の調査結果を用いた主成分分析の結果,耕起栽培(U),灰色低地土にダイズ茎葉残渣を表面施用した不耕起栽培(Ib)及びその他の不耕起栽培(Ia)に分けられた。これらの圃場を特徴づける優占種は,Iaでは有翼類に属するTrichogalumna nipponica とOribatula sakamorii,Ibでは有翼類に属するXylobates sp. であり,またUでは無翼類に属するTectocepheus velatus とRamusella sengbuschi であった(図3)。
- ダイズ茎葉残渣を表面施用した灰色低地土の不耕起栽培以外,土壌の種類,有機物の種類,施用方法の差異は認められず,これらがササラダニ類の群集構造に及ぼす影響は小さいと考えられた。
- [成果の活用面・留意点]
- 無農薬で管理した枠圃場での結果である。

[その他]
研究課題名:作物生産好適化のための土壌動物相の指標摘出
予算区分 :一般別枠(物質循環)
研究期間 :平成10年度(平成4〜10年)
発表論文等:
1)畑土壌(試験枠)のササラダニ群集,日本土壌動物学会第21回大会講要 (1998)
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