糸状菌を餌とした菌食性線虫Aphelenchus avenae の増殖効率評価法


[要 約]
 菌食性線虫の餌としての糸状菌の好適度を評価するため,ニセネグサレセンチュウA. avenae の増殖効率評価法(菌叢ディスク法)を開発した。簡易計数法や菌叢消失度指数法を用いれば,本法はさらに簡易化できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 環境生物部 微生物管理科 線虫・小動物研究室,土壌微生物生態研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
[専 門] 作物虫害
[対 象] 昆虫類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 A. avenae などの菌食性線虫の増殖効率は,餌として用いる糸状菌の種類や菌株によって異なる。菌食性線虫を土壌病害防除に利用する際の大量培養方法を構築するためには,その評価法の開発が重要である。そのため各種糸状菌やその菌株を菌食性線虫に摂食させ,線虫の増殖を評価するための簡易・迅速な方法を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. A. avenaeR. solani 上における増殖効率評価法(菌叢ディスク法,第1図
     (1)評価対象菌株を,栄養分を1/5稀釈したPDA培地で4日間前培養する,(2)菌叢を培地とともに径2cmのコルクボーラーで切り出す(菌叢ディスク),(3)菌叢ディスクを径9cmプラスチックシャーレの4%素寒天プレート上に置床する,(4)線虫は別に2〜3週間増殖しておく,(5)線虫の懸濁液0.3-0.5ml(成虫と第4期幼虫で約15頭)ピペットで菌叢ディスクの周りに注いで接種する,(6)16日間25℃で培養する,(7)ベルマン法で線虫を分離する,(8)その全数を計数する。
  2. 菌叢ディスク法を採用すると,菌叢の面積がシャーレ全面の約1/20になるため,分離線虫数は最大約20,000頭に抑えられ(第1表,第2図),計数はより容易になる。
  3. 分離線虫数の菌株・線虫系統間の差は明白に示され,増殖効率の評価法として適している(第1表,第2図)。
  4. 線虫分離を要しない簡易な評価法
    1. 簡易計数法:菌叢ディスクの線虫を実体顕微鏡下で直接計数し,計数を40頭で打切る簡易計数の結果(第1表)は,分離線虫数(対数)と有意な相関(r=0.82)を示したことから,菌叢ディスク法に代わる簡易計数法として利用できる。
    2. 菌叢消失度指数法:菌叢消失面積を表す本指数は,分離線虫数(対数)と有意な相関(r=0.74,第1表)を示し,これも菌叢ディスク法の簡易化に利用できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本法は,菌食性線虫の大量培養に適した菌の選抜や菌食能力の評価に利用できる。
  2. 分離総線虫数を計数する評価法が精度は最も高いが,目的に応じて簡易計数法や菌叢消失度指数法などの簡易な評価法を採用してもよい。
  3. 菌叢消失度指数評価を採用する場合には,線虫の増殖を必ず確認する必要がある。

具体的データ


[その他]
    研究課題名:菌食性線虫の摂食範囲とその食性機構の解明
    予算区分 :経常(所内プロジェクト)
    研究期間 :平成9年度
    発表論文等:
       1)Cultured nematodes as indicator agents - trial with Aphelenchus avenae for 
            evaluating fungal survivability in soil. 
              24th International Nematology  Symposium Proceedings 3 (1998)
       2)土壌病原菌Rhizoctonia solani の菌食性線虫Aphelenchus avenae に対する
           耐性の菌株間差異(講要).日本植物病理学会報 64(6) (1998)
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