肥効調節型窒素肥料の利用による採草地からの亜酸化窒素放出の低減
- [要 約]
- 採草地からの亜酸化窒素(N2O)放出は,肥効調節型窒素肥料の利用で低減できる。硝化抑制剤入り化成肥料の利用,または早春施肥に化成肥料,刈取後施肥に緩効性窒素肥料を使用することにより,慣行施肥での収量を確保しながらN2O放出を半減できる。
[担当研究単位]草地試験場 環境部 土壌物質動態研究室
[部会名] 農業環境・地球環境
[専 門] 土壌,肥料
[対 象]
[分 類] 研究
- [背景・ねらい]
- 亜酸化窒素(N2O)は,施肥窒素が硝化作用を受ける過程でかなり生成されると考えられている。そこで,肥効調節型窒素肥料を利用することにより,採草地での施肥窒素の硝化を抑制して,N2O放出量を低減させるとともに,慣行施肥なみの牧草収量の確保を図る。
- [成果の内容・特徴]
- 採草地に年4回の追肥を行い,施用後の草地表面からのN2O放出量及び牧草収量等を測定した。
- 採草地からのN2Oの放出(N2O-N放出量/施肥N量)は,早春施肥では肥料の種類が異なっても差はないが,それ以外の時期の施肥では大きく異なる(表1,表2)。硝酸カルシウムや肥効調節型窒素肥料を用いると,年間N2O放出は,慣行の化成肥料の約50%以下に低下する。
- 1番草の収量は,硝化抑制剤入り肥料を除いた肥効調節型窒素肥料の利用により,慣行の化成肥料に比べて低下するが,2,3,4番草の収量では,慣行施肥との間に大差は見られない(表3)。
- 肥効調節型窒素肥料の利用によるN2O放出の低減効果,1番草及び年間の牧草収量,肥料の取扱いの難易等を考慮に加えて,N2O放出量の低減に有効なCDU窒素,硝化抑制剤入り化成肥料を用いた施肥計画を示す。その場合,牧草栽培期間中のN2O放出量は,慣行施肥の約 50%程度に低減すると試算される(表4)。
- [成果の活用面・留意点]
- 窒素施肥に伴う亜酸化窒素発生量の削減に寄与する。
- 地温や降水量の著しく異なる地域での適用については,別途検討が必要である。
- この場合の肥効調節型窒素肥料の利用により,肥料代(平成10年12月現在)は約17〜57%増となるものと試算される。

- [その他]
研究課題名:1)草地における温室効果微量ガスの動態と制御技術
2)草地からのCH4,N2O発生と家畜ふん尿管理
予算区分 :1)環・地球環境
2)環・地球環境
研究期間 :1)平成7〜9年
2)平成10年
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