日本に飛来するトビイロウンカにおける抵抗性品種加害性の増大


[要 約]
 日本に飛来するトビイロウンカ個体群は,抵抗性遺伝子Bph-1 を持つイネ品種に対しては1990年以来継続的に加害性を増し,bph-2 を持つ品種に対しては1997年以降急激に加害性を増している。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 昆虫管理科 個体群動態研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
[専 門] 生態
[対 象] 昆虫類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
  昆虫に対する作物の抵抗性を有効に利用するためには,昆虫個体群の抵抗性品種加害性を常に監視しておく必要がある。また,これは作物の品種構成や環境の変動が昆虫個体群の遺伝的構成に及ぼす影響を解明するうえで有用な情報となる。ベトナム北部から中国,朝鮮半島,日本にかけて広域を移動するトビイロウンカ個体群は,1988〜1990年頃に抵抗性遺伝子Bph-1 を持つイネ品種に対して加害性を示すように変化し始めた。そこで,この変化がその後も続いているのか,また他の抵抗性遺伝子に対する加害性に変化が生じているのかを明らかにするため,1991〜1999年に熊本県および長崎県に飛来した本種個体群の加害性を調査する。
[成果の内容・特徴]
  1. Bph-1 を持つ品種(MudgoおよびIR26)を加害できるトビイロウンカ雌成虫の割合は,1995年以降は1992年以前に比べてさらに高くなっており,加害性の変化が1990年以来続いていることが判明した()。
  2. bph-2 を持つ品種(ASD7)を加害できるトビイロウンカの割合は,1997年以降急激に増加した()。
  3. したがって,Bph-1 およびbph-2 の抵抗性は,日本に飛来するトビイロウンカに対して効果を失ってきていると判断される。
  4. Bph-3 を持つ品種(中間母本農10号)およびbph-4 を持つ品種(Babawee)に対するウンカの加害性には,顕著な変化はみられなかった。
[成果の活用面・留意点]
  1. 昆虫の抵抗性品種加害性の変化を予測する時の検証データとして利用できる。
  2. 本種に対する抵抗性品種の育種においては,Bph-1 およびbph-2 以外の遺伝子の導入を図る必要がある。

具体的データ


[その他]
研究課題名:作物の抵抗性に対する昆虫個体群の遺伝的応答の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成11年度(平成11〜13年度)
発表論文等:日本に飛来するトビイロウンカの抵抗性品種加害性の近年における状態,関東東山
      病虫研報 46,85-88(1999)
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