根茎切片培養によるスギナの塊茎形成法
- [要 約]
- スギナの根茎切片を用いて塊茎形成を誘導する培養方法を確立した。この培養方法により約2ヶ月で塊茎が形成されるため,維管束周辺の形態変化を解析することができる。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 植生管理科 他感物質研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
総合農業・生産環境
[専 門] 雑草
[対 象] 雑草類
[分 類] 研究
- [背景・ねらい]
- スギナは除草剤等による防除が難しい多年生強害雑草であり,塊茎と根茎で主に繁殖する。このため本種を効果的に防除するためには,塊茎形成の生理的機構や形成を抑制する要因を解明する必要があるが,土壌培地では塊茎形成を連続的に観察することができず,また,繁殖器官における生理活性物質の作用特性を内部形態に及ぼす影響も含め精密に解析することができなかった。したがって,組織培養を用いて塊茎形成させる手法の開発が必要であるがこれまで困難であった。
- [成果の内容・特徴]
- 組織培養によりスギナ根茎に塊茎形成させる手順は次の通りである(図1)。
1) スギナ根茎を1/2濃度のMurashige&Skoog培地で3〜4か月間培養・増殖する。
2) 培養根茎を1節ごとに切断し,White培地から窒素を除き,ショ糖濃度を3%にした改良培地に植える。
3) 20℃,暗条件で50〜60日間培養する。
4) 約6割の根茎の節に塊茎様器官が形成される(図2)。
- 本方法で形成された塊茎様器官の内部形態を観察すると,その維管束は分裂中心柱で,維管束間の柔細胞が発達・肥大し,デンプンの蓄積が旺盛であることから,形態的に明らかに塊茎である(図3a, b)。しかし,形成層の細胞分裂活性は低く,また,維管束が明瞭に認められるなどの点で根茎の形態的特徴も残っている(図3b, c)。この特性を活用すると,塊茎形成の開始にともなって誘導される維管束周辺の形態変化を解析することができる。
- [成果の活用面・留意点]
- 培養環境条件を制御したり,塊茎形成関与物質を培地に添加することによって塊茎形成制御機構が解明できる。
- 培地の窒素濃度を高めると塊茎形成が抑制されるが,その生理的機構はさらに解明する必要がある。また、塊茎形成期間の短縮についてもさらに検討が必要である。

[その他]
研究課題名:スギナの塊茎形成機構の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成11年度(平成6〜11年度)
発表論文等:1)組織培養系におけるスギナの塊茎形成,雑草研究 41(別号) (1996)
2)組織培養系におけるスギナの器官形成に及ぼす植物ホルモンの影響,雑草研究
42(別号) (1997)
3)In vitro tuber formation in Equisetum arvense L., 16th APWSS abstracts(1997)
4)Ecological and physiological characteristics of reproduction in Equisetum
arvense L., 11th iCwes Proc.(1999)
目次へ戻る