土壌環境基礎調査・定点調査結果にもとづく農耕地土壌資源特性の変動解析


[要 約]
土壌環境基礎調査・定点調査(1979-1998年)のデータをもとに,全国的な土壌資源特性の変動を地目別・土壌タイプ別に解析し,全地目での可給態リン酸含有率の増加,樹園地土壌でのpHの低下ならびに炭素含有率の増加等の傾向を明らかにした。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境資源部 土壌管理科 土壌生成分類研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
[専 門] 土壌
[対 象]  
[分 類] 研究・行政

[背景・ねらい]
土壌環境基礎調査・定点調査は,農水省の土壌保全事業の一環として,1979-1998年に 全国の都道府県農試により,各定点について5年1巡で4巡にわたり行われ,土壌資源に関する多様な特性を調査した。土壌資源特性の変動に関するこうした全国的な情報の利活用が,農耕地における生産力の変動や土壌を介した環境影響等の把握に必要となっている。そこで,定点調査のデータをもとに利用しやすいパソコン上のデータベースを構築すると共に,地目・土壌タイプ別等の関係を解析し,全国的な土壌資源特性の変動を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 定点調査では総数2万地点弱の土壌について地点情報,層別断面記載,層別分析データ等膨大なデータが集積されている(表1)。 これをアクセス(マイクロソフト社)形式の全国データベースファイルに整理し,各項目について検索・集計等ができるようにした。また,主要な土壌特性の地目別,土壌タイプ別等の状況が一覧できるように,基本統計量(平均値,標準偏差,中央値等)をエクセル(マイクロソフト社)形式のファイルに整理した。
  2. 作土層について,主に地目別に土壌特性の変動を解析した結果,(1)樹園地におけるpHの低下,(2)樹園地,施設における炭素・窒素含有率の増加,(3)普通畑での炭素含有率の黒ボク土における減少,黄色土における増加(図1),(4)全地目における可給態リン酸(トルオーグ法)含有率の明瞭な増加(図2),(5)樹園地,草地の1〜3巡における可給態窒素の増加,(6)樹園地における容積重の低下等の傾向が認められる。
  3. 施肥リン酸量レベル(地点数がほぼ同じになるように5段階に区分)ごとの可給態リン酸含有率の変動では,リン酸投入レベルが高い地点では2巡目で既に可給態リン酸の含有率が高く,かつ3巡目における大きな増加が見られ,リン酸施肥の効果が大きいことが認められた(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 整備された統計表,データベース等は土壌環境基礎調査事業の取りまとめや各種の土壌資源特性の解析等に活用できる。
  2. 構築したデータベースは現時点では非公開であるが,今後公開を予定している。

具体的データ


[その他]
 研究課題名 : 日本における農耕地土壌資源の特性と変動に関する研究
 予算区分  : 経常
 研究期間  : 平成12年度(平成10年〜12年)
 発表論文等 : 調査データの概要と農耕地土壌の全国的な傾向,ペドロジスト,44(2)(2000)
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