在来オオバコと近縁な帰化種の温度‐発芽パターンの特徴
- [要 約]
- 在来種のオオバコと近縁な帰化種であるセイヨウオオバコは,裸地化した陽地に多く生育する。その発芽最適温度はオオバコより高く,また変温条件が発芽率を増加させる効果はオオバコよりセイヨウオオバコの方が顕著である。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 植生管理科 植生生態研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
草地・永年草地・放牧
総合農業・作物生産
[専 門] 雑草
[対 象]
[分 類] 研究
- [背景・ねらい]
- 帰化植物の中には,攪乱によって裸地化した場所に侵入し定着する植物が多く見られ,これら裸地特有の環境条件に適した生活史特性を有している。在来種のオオバコ(Plantago asiatica L.)と近縁な帰化種であるセイヨウオオバコ(P. major L.)は,共に踏みつけや草刈りなどの攪乱の多い所に生育するが,セイヨウオオバコの方がより裸地化した明るい所に生育する。本研究では,両種の生育地の違いを発芽特性から明らかにする。
- [成果の活用面・留意点]
- セイヨウオオバコの優占する生育地はオオバコの優占する生育地と比較し,群落の植被率が低く,裸地化した明るい所である(表1)。
- セイヨウオオバコが優占しやすい裸地とオオバコの優占しやすい路傍の雑草群落の地温を比較すると,裸地では日較差が大きく平均温度及び最高温度が高い。しかし,最低温度には顕著な差異がない(表2)。
- 恒温条件下における発芽最適温度は両種間に明らかな差異があり,セイヨウオオバコの発芽率が最大となる温度は,オオバコより高い。恒温条件と変温条件での発芽率を平均温度で比較すると,セイヨウオオバコは,20℃〜25℃では変温によって発芽率が明らかに高まるがオオバコではその効果が認められない(図1)。
- セイヨウオオバコでは,裸地の平均地温に近い22℃前後でも変温30/15℃によって発芽は急速に高まり,オオバコに比べ変温による効果が顕著である(図2)。
以上のことから,セイヨウオオバコはオオバコよりも裸地的環境における発芽定着に有利な発芽特性を有する。
- [成果の活用面・留意点]
- 他の帰化種の分布拡大要因を解析する際の資料となる。
- セイヨウオオバコとオオバコの定着特性の違いを明らかにするためには,発芽後の個体の成長や死亡要因の解析,および個体数変動などについて環境要因と関連づけた長期に亘る調査データが必要である。

[その他]
研究課題名 : 外来及び組換え体等の新たな侵入植物の定着・分散機構の解明
予算区分 : 経常
研究期間 : 平成12年度(平成8〜12年度)
発表論文等 : 1)帰化植物の種子発芽におけるギャップ検出機構,オオバコとセイヨウオオバコ
の比較,第44回日本生態学会大会講演要旨集(1997)
2)Comparison of ecological distributions and life history characteristics
between invasive and closely related native Plantago species in Japan.
Biological Invasions of Ecosystem Pests and Beneficial Organisms, 15-26
(1999)
目次へ戻る