昆虫病原性線虫 Steinernema feltiae の分布・識別・殺虫活性


[要 約]
昆虫病原性線虫 Steinernema feltiae が日本に分布することを明らかにした。本種の識別には,成虫の外部生殖器および感染態幼虫の形態が有効である。日本産と外国産との種内識別は,DNAのRFLP解析でできる。殺虫活性は7℃から25℃にかけて安定して高い。 
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 微生物管理科 線虫・小動物研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
[専 門] 作物虫害
[対 象] 天敵
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
昆虫病原性線虫Steinernema feltiaeは鱗翅目や双翅目などの様々な昆虫に対して高い殺虫活性を示し,欧米では天敵製剤としてすでに実用化されている。本種は世界的に広く分布しているが,日本における明確な分布記録はない。土着の昆虫病原性線虫の探索および分類学的研究を行う過程で,本種を北海道から検出した。そこで,日本産アイソレートを土着天敵として生物的防除に利用するための前段階として,分類学的ならびに生物学的特性を解明する。
[成果の内容・特徴]
  1. 他種からの識別
     本種は,メス成虫の陰門開口部およびオス成虫交接刺(外部生殖器)の形状と感染態幼虫のa値(体長/体幅,平均値≧30)・側帯(体側部線条構造帯)の形状等の比較により,日本産の他の種から識別できる。
  2. 種内変異の識別
      リボソームDNA(rDNA)のスペーサー領域(ITS)の制限酵素断片長多型(RFLP)パターンの違いにより,本種のヨーロッパ産アイソレートには2つの型(A1:メジャータイプ,A2:マイナータイプ)が知られている。日本産アイソレートは,既知の型と異なるパターンを示した(図1)。
  3. 分布
      本種はヨーロッパ,北・南米,オセアニア等世界各地に分布している。日本では本州以南からは検出されず,北海道からのみ検出された。検出地は海岸部の草地・潅木林が多かった(図2)。
  4. 殺虫活性
      土壌存在下でニセタマナヤガ2〜3令幼虫に対する殺虫活性試験を7℃から25℃の間に5段階の温度設定で行った。殺虫活性は全試験区で80%以上の高い致死率を示し,7℃から15℃の試験区でも活性が高かった(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 日本産S. feltiaeを生物的防除に利用するための基礎的データとなる。北海道で検出され,低温域で高い殺虫活性を示したことから,寒冷地での利用が期待できる。
  2. rDNAのITSのRFLP解析は,天敵製剤として実用化されているヨーロッパ産アイソレートが導入された場合,これと土着アイソレートとの識別に利用できる。

具体的データ


[その他]
 研究課題名 : Steinernema属線虫の分類
 予算区分  : 経常
 研究期間  : 平成12年度(平8〜14年度)
 発表論文等 : 1)Steinernema kraussei and S. feltiae from Hokkaido, Japan, Russian J.
          Nematol. 6 (1998)(Abstr.) 
        2)日本産昆虫病原性線虫(Heterorhabditis属およびSteinernema属)のニセタマ
          ナヤガ(Peridroma saucia)幼虫に対する殺虫活性について, 日本線虫学会
          第8回大会講要(2000)
        3)Biosystematics of entomopathogenic nematodes: current status, protocols
          and definitions, J. Helminthol. 71 (1997)
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