ナガイモを加害する新種の小蛾ナガイモコガ
- [要 約]
- ナガイモの葉,新梢やむかごを食害する小蛾害虫は,これまでヤマノイモコガAcrolepiopsis suzukiella とされていたが,近縁の新種であることを明らかにし,ナガイモコガA.nagaimo と命名した。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境生物部 昆虫管理科 昆虫分類研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
総合農業・生産環境
[専 門] 作物虫害
[対 象] 昆虫類
[分 類] 指導
- [背景・ねらい]
- ヤマノイモ属の栽培種であるナガイモDioscorea opposita の葉,新梢やむかごをある種の小蛾が食害することは古くから知られており,それはヤマノイモD.japonica等にも寄生するヤマノイモコガであると長年にわたり信じられてきた。小蛾類は分類研究が比較的遅れており,害虫といえども未解明な部分が多く残されているため,改めてナガイモおよびヤマノイモに寄生している個体を調査することにより,それぞれに寄生する種を明らかにしようとした。
- [成果の内容・特徴]
- 北海道,青森,茨城,鳥取で採取されたナガイモに寄生していた小蛾害虫は,ヤマノイモコガより小型で,雌雄交尾器の形態も明らかに異なる別種であった(図1,2)。新種であることが判明し,ナガイモコガAcrolepiopsis nagaimo と命名した。
- ナガイモに寄生していた多数の調査個体はすべてナガイモコガであり,ヤマノイモコガA.suzukiella は見つからなかった。また従来の記録においてもヤマノイモコガがナガイモに寄生することを示す明らかな証拠はないことが判明した。このことから,従来ヤマノイモコガとされていたナガイモの小蛾害虫の正体はナガイモコガであると考えられる。
- 山野に自生するヤマノイモやトコロの葉にはヤマノイモコガが寄生することが確認された。
- ナガイモコガと形態が酷似するA.japonica がヤマノイモのむかごや葉に寄生することが判明し,ヤマノイモムカゴコガと命名した。両者は雄交尾器により識別できる(図3)。
- [成果の活用面・留意点]
- ナガイモの害虫防除対策の参考資料となる。
- 幼虫及び蛹の形態の相違についてさらに調査する必要がある。

[その他]
研究課題名 : 鱗翅目の分類および生態に関する研究
予算区分 : 経常
研究期間 : 平成12年度(平成8〜9年度)
発表論文等 : 1)A new species of the genus Acrolepiopsis Gaedike (Lepidoptera: Acrolepiidae)
injurious to Chinese yam and its allied species from Japan. Applied Entomology
and Zoology 35(4) (2000)
2)ナガイモコガの発生生態と防除,植物防疫 54(12)(2000)
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