免疫化学測定法による河川水中の除草剤メフェナセットおよびシメトリン等の測定
- [要 約]
- 河川水中の除草剤メフェナセットおよびシメトリン等の測定手法として免疫化学測定法(ELISA)は簡便な操作で高感度測定が可能である。この測定法はガスクロマトグラフ法と良好な一致を示し,河川水中の環境モニタリング分析法として利用できる。
農業環境技術研究所 資材動態部 農薬動態科 農薬管理研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
[専 門] 薬剤
[対 象]
[分 類] 普及
- [背景・ねらい]
- わが国の水田では雑草防除のため田植えの前後に複数の有効成分を含む製剤が散布されている。これらの除草剤の一部は排水路を経由して河川へ流入し,それらの成分が河川水中からしばしば検出される。残留農薬の野生生物への影響を評価するには,それらの環境中濃度を把握する必要がある。しかるに,通常行われている残留農薬の測定法は,高度の分析技術,高価な測定機器および高額の経費を必要とし,そのことが農薬の環境モニタリングの実施を困難にしている。
そこで,メフェナット用免疫化学測定法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay, ELISA)試薬キットおよび市販のトリアジン除草剤用キットを用いて河川水中の残留農薬の濃度変化を測定し,ELISAの有用性を確認した。
- [成果の内容・特徴]
- 河川水中の水田用除草剤メフェナセットおよびシメトリン等の残留濃度測定法としてELISA法の評価を行うためガスクロマトグラフ(GC)法との比較を行い,両者の測定値間には良好な一致を見た(図1および2)。
- フェ
ナセットELISA試薬キットは共存する可能性の高いベンスルフロンメチル,ピラゾスルフロンエチルおよびアジムスルフロンのスルホニル尿素系除草剤,シ
マジンおよびシメトリンのトリアジン系除草剤,チオベンカーブおよびプレチラクロールの酸アミド系除草剤とは1000ng/mlで交叉反応性を示さず,極
めて特異性が高かった。0.025〜8ng/mlの範囲で用量反応曲線が得られた(図3)。最小検出濃度は0.03ng/mlであった。メフェナセット測定値についてELISA法とGC法との相関性は極めて良好であった(図4)。
- シ
メトリン測定用ELISAキットは,米国STD社製EnviroGardTMTriazineキットが有用であった。このキットは,トリアジン系除草剤に
対し感度の差はあるもののほとんどのものに反応性を示したが,共存する可能性のあるスルホニル尿素系あるいは酸アミド系除草剤に対して1000ng/ml
で交叉反応性はなかった。定量範囲はシメトリンとして0.1〜10ng/ml,最小検出濃度はシメトリンとして0.05ng/mlであった。当該キットの
シメトリン,シマジンおよびジメタメトリンに対する反応性はわずかに異なり,シマジン>シメトリン>ジメタメトリンの順に感度が異なった(図5)。
- [成果の活用面・留意点]
- ELISA法は残留農薬のモニタリング法として極めて有用であるが,再現性のある測
定結果を得るために分析操作の習熟が必要である。また,本法は未知の交叉反応性の存在を否定しきれないこと,試料のpH(pH6~9の範囲の試料は測定
可)および有機溶媒の影響(メタノールとジメチルスルホキサイドは使用可)を受けることなどに留意する必要がある。

[その他]
研究課題名 :「トリアジン系除草剤の環境中濃度の把握のための免疫化学測定法の開発とその応用
研究」,「免疫化学測定法による環境水中の除草剤メフェナセットの測定」
予算区分 : 科・社会基盤「内分泌」,経常
研究期間 : 平成12年度(平成10〜12年度)
発表論文等 : 免疫化学測定法を用いた河川水中の残留農薬の測定,日本農薬学会第26回大会(2001)
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