衛星データの組み合わせによる農地の土地利用変化の抽出法


[要 約]
 観測時期の異なる光学センサ搭載の衛星データを用いることにより,農地の土地利用変化を抽出した。精度の低い衛星データでも高精度衛星データを重ねて土地利用変化を抽出する手法が開発できた。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 環境管理部 計測情報科 隔測研究室
[部会名] 農業環境・環境評価・管理
[専 門] 情報管理
[対 象]  
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 近年,米の生産調整による転換畑や耕作放棄地などが多く見られ,これらを面的に調査・把握するには土地勘や多くの労力が伴うことから,簡単に把握できない状況である。
 このような農地の土地利用変化の面的分布を明らかにするために,過去に観測された精度の低い衛星データと最近の衛星データを用いる解析手法を開発した。この手法により,地上調査を最小限にして,しかも過去にさかのぼって土地利用の変化が調査可能となる。
[成果の内容・特徴]
  1. 複数の衛星データを比較する場合,単独の衛星データで分類した画像を単純に重ね合わせると誤差が増加する。そこで,分類した画像をマトリックス演算により再度分類・統合した(図1)。その結果分類精度が向上し,Landsat/TMとADEOS/AVNIRのように衛星データが異なっていても,両データから土地利用変化が抽出可能であった(図2)。水田が放棄された部分の抽出には田植えが終了した5月下旬のデータが有効であった。
  2. 長期的土地利用変化としてLandsat/MSS(1979年5月2日,1980年9月17日)Landsat/TM(1992年9月7日)データを用い,畑作中心である中国北京市周辺の広域を対象に解析した。空間解像度,光学的分解能の低いLandsat/MSSデータ(80m,7ビット)は分類精度が低いため,Landsat/TMデータ(30m,8ビット)と比較するために2時期のデータを用いてマトリックス演算を行い,更にTMデータを補助データとして土地利用分類画像を作成した(図3)。このように処理した画像とTMデータの分類結果を再度マトリックス演算することにより,土地利用変化部分を抽出できた。図4に示すように,北京市の市街外縁部を中心に市街地が拡大している様子がわかる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 地域や抽出対象によって分類精度や解析手法に多少の違いがあるため,解析手法を使い分ける必要がある。
  2. 精度の低い衛星データであっても,処理を施すことにより高精度衛星データとの比較が十分可能である。分解能が3倍以上異なる画像の場合はさらに検討が必要である。
  3. 天候に左右されずに土地利用変化を知るには合成開口レーダの利用も必要となる。

具体的データ


[その他]
 研究課題名 : マイクロ波衛星データ等による農地利用の計量化
 予算区分  : 経常,リモセン
 研究期間  : 平成12年度(平成10〜12年度)
 
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