ダイオキシン類の水田からの流出・流下特性
- [要 約]
- 懸濁物質の流出に伴って水田からダイオキシン類が流出する。このため,ダイオキシン類の流出は節水代かき等により顕著に抑制される。水田地帯の小河川では,ダイオキシン類が代かき・水稲移植期だけでなくその後の強降雨時にも流下する。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 化学環境部 栄養塩類研究グループ 水動態ユニット
農業環境技術研究所 化学環境部 栄養塩類研究グループ 水質保全ユニット
[分 類] 行政
- [背景・ねらい]
- 水田から流出・流下するダイオキシン類が,食物連鎖を介して水生生物等に影響を与えている可能性がある。そこで,水田からのダイオキシン類の流出・流下を抑制する技術シーズを開発するために,水田地帯の小河川における流出・流下特性を把握する。
- [成果の内容・特徴]
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- 水田土壌に保持されているダイオキシン類は,代かき・水稲移植期等に懸濁物質の流出に伴って流出する(図1)。
- 代かき時の水田からのダイオキシン類の流出は,節水代かきまたは無代かきにより顕著に抑制される(図2)。
- 水田地帯の小河川では,代かき・水稲移植期だけでなく,その後の強降雨時の懸濁物質の流出に伴って,ダイオキシン類が流下する(図3)。これは排水路などに蓄積した水田土壌由来のダイオキシン類が流下するためとみられる。
- 水田灌漑期の懸濁物質あたりのダイオキシン類毒性等量は代かきの開始とともに高まり,水田灌漑期は約40pg-TEQ/gで推移し,落水後もその値を維持した(図4−□−)。
- ダイオキシン類に占める1,3,6,8-TeCDDの重量割合は,水田灌漑期は約12%と高く,落水後は約8%に低下した(図4−○−)。1,3,6,8-TeCDDは,ダイオキシン類の異性体の一つで,過去に散布された水田除草剤に副成分として含有されていた。このことも水田土壌由来割合が多いことを示している。
- [成果の活用面・留意点]
- 代かき・水稲移植期だけでなく,強降雨時にも懸濁物質の流下に伴ってダイオキシンが流下することから,水田から小河川にいたる排水路に蓄積したダイオキシン類の流下対策も必要となる。
[その他]
研究課題名 : 水田におけるダイオキシン類収支の把握
ダイオキシン類の流出・移行モデルの設定と動態予測
予算区分 : 環境研究[環境ホルモン]
研究期間 : 平成13年(平成12〜14)
研究担当者 : 芝野和夫,竹内誠,駒田充生
発表論文等 : なし
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