北海道東部の採草地における亜酸化窒素の発生時期および発生量


[要 約]
 北海道東部の採草地における亜酸化窒素の発生は,窒素施肥後および牧草収穫後に盛んになる。亜酸化窒素発生量は,窒素施肥量の増加に応じて,またマメ科牧草混播により高まる。5〜10月における施肥由来の亜酸化窒素発生量は,年間窒素施肥量の0.1〜0.2%に相当する。
[担当研究単位] 北海道立根釧農業試験場 研究部 草地環境科
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 現在,地球温暖化に対する人間活動の寄与を把握することが国際的な急務になっている。その一 環として,農業に由来する亜酸化窒素ガスの発生実態が全国で調査されてきている,しかし,全国総農地面積の13%を占める草地における調査事例は限られている。特に,日本最大の酪農地帯であり,国内草地面積の3割を占める北海道東部における発生実態の解明は未だ不十分である。そこで,北海道東部の採草地における亜酸化窒素の発生時期および発生量について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 採草地における亜酸化窒素のフラックスは,窒素施肥後および牧草収穫後に高まる。また,1番草収穫後の窒素施肥量は早春施肥量の半分であるが,追肥後の亜酸化窒素フラックスは早春施肥後より大きい(図1)。イネ科牧草(チモシー)の単播草地,チモシーとマメ科牧草(シロクローバ)の混播草地ともに,亜酸化窒素フラックスの最大値は,窒素施肥量に応じて増加する。
  2. 単播草地の5〜10月における積算の亜酸化窒素発生量は,2カ年を平均すると,無窒素区,標準施肥区および窒素倍量区でそれぞれヘクタール当たり,0.03,0.28および0.57kgであり,窒素施肥量の増加とともに高まる(図2)
  3. 乳牛への飼料品質の向上,雑草侵入および裸地化の防止,収量向上などの点から推奨されている混播草地の亜酸化窒素発生量は,無窒素区,標準施肥区の順にそれぞれヘクタール当たり0.43,0.52kgであり,単播草地同様窒素施肥量の増加とともに高まるが,その値は単播草地よりも高い(図3)。この傾向は無窒素区で著しい。この原因は,混播草地ではマメ科牧草と共生する根粒菌による窒素固定が行われるため,無窒素区であっても窒素が供給されるためであると推察される。
  4. 施肥した窒素肥料(硫酸アンモニウム)に含まれる窒素のうち,亜酸化窒素として大気に放出される割合は,草種構成,施肥量に関わらず0.1〜0.2%である(表1)。これらの値は他の作目に比べて低い水準にある。
[成果の活用面・留意点]
  1. 草地における温室効果ガス発生量を査定する際の基礎資料になる。
  2. 本成果は火山灰土壌に硫酸アンモニウムを施肥した条件である。

[その他]
 研究課題名 : 1)草地酪農地帯における環境負荷物質の動態解明,
               2)草地におけるメタンと亜酸化窒素の発生量
 予算区分  : 1)指定試験,2)国費受託
 研究期間  : 1)1999〜2003年度,2)2000〜2002年度
 研究担当者 : 甲田裕幸(北海道立根釧農試),宝示戸雅之(北海道立根釧農試),
               三木直倫(北海道立根釧農試),三枝俊哉(北海道立根釧農試)
 発表論文等 : 1)甲田,他, 2000年度土肥学会北海道支部講演要旨集,19,(2000)
               2)甲田,他, 2001年度土肥学会北海道支部講演要旨集,11,(2001)

目次へ戻る